小説木幡記:2008/09/25(水)プルートゥ06とTruth25
火曜日の休みの日に、浦沢直樹・プルートゥ06を読んだ。
ずっと読んできたので、先回記事をMuBlogで捜したら、プルートウ:Pluto(3)が、2006.04.18に書かれた切りで、もう二年半も書いていない。
ああ、そうなんだ04号で途切れたわけだ。つまらないから書かなかったんじゃなくて、壮絶な悲哀感に押しつぶされて、筆とるあたはず状態に陥ったのだ。
おもいだした、アトム。
感想文を書くとしたら、一旦04号までもどり、05、06と書かないと、ロボットMuのことだからまた失調する。そんなこんなで、今夜は一行メモ。
「プルートウの06号は、刑事ゲジヒトの物語です。ぐぅぐぅぐぅ~と来ましたね。言葉になりません」
↑これではいかにもそっけないので、豪華版附録について一言↓
「附録に別冊30ページの長さで『月に向かって投げろ!』がありました。再読になりますが、珠玉の短編小説=漫画の佳さがありました。」
これでもそっけなさすぎるので、もう少し。
(↓Pluto06/浦沢直樹.小学館 p7より引用)
本題の、プルートウ6号。ゲジヒトの造形と、p7の花売り少年ロボとの出合場面は永遠に余の記憶にのこりそうだ。
上右・傷病少年帰還兵ロボットの倒れ姿、花を守っている。
上左・ゲジヒトが抱え上げる、少年ロボがゲジヒトを見上げた表情。
下右・立ち上がった旧式ロボットの、がに股。
セリフ・少年ロボ「戦争で壊れてから、バランスが悪くて……」
セリフ・ゲジヒト「いや……」「そうか……」
漫画というメディア表現の極致がある。「戦争で」が無くても、「壊れてから」で傷病少年帰還兵ロボットの過去がすべて現れる。そして少年ロボであることは、顔つき、その柔和な丸い眼で即座にわかる。どれほど旧式のロボットかは、そばの超高性能最強のゲジヒト・ロボット刑事と比較すると一目でわかる。
次のページ8では、少年ロボの左手が単純な義手じゃなくて、……。つまり観光客とのやりとりに使われていることもわかる。
ゲジヒトやアトムになると、ロボット識別装置が誤動作をおこす場合もある。人間と変わらない。それに比して、この少年ロボットは、痛々しいまでに旧式をさらけ出している。頭も半分無くなっている。
このページに来て、突然現れた少年ロボットに、余は愕然とした。上右で「おや?」と思い、上左で「ちいさい、プチロボなのか?」と想像し、下右で「可愛らしいロボット」と、味わった。しかし、その背後で、余の心に強い印象が焼き付けられてしまった。それがこの6号に対する、余の「感想文」である。
今日水曜日の夕方、葛野図書倶楽部2001屯所で、機関誌「Truth25」が隊員達の手によって完成した。余が会議会議の後にようやく屯所を覗いた時は、あらかたの隊員達が帰宅したあとで、副長(編集長)、局長(編集顧問)、そして経理局長が残っていた。
研究室にもどりざっと眺め、木幡研に帰ってから精読した。火曜に読んだPluto06を思い出していた。
感動的に「よい出来」だった。
| 固定リンク
「読書余香」カテゴリの記事
- 小説木幡記:楠木正成のこと(2013.06.07)
- 西の魔女が死んだ/梨木香歩 (感想:よい作品だ)(2012.06.14)
- 吸血鬼と精神分析/笠井潔:ミステリもよいものだと痛感(2012.02.04)
- 小説木幡記:パンとサーカス「日本の自殺」(2012.02.11)
- 小説木幡記:赤朽葉家の伝説/桜庭一樹、を読む(2011.12.12)
「小説木幡記」カテゴリの記事
- 小説木幡記:楠木正成のこと(2013.06.07)
- 小説木幡記:腰痛と信長(2013.05.28)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント