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2008年9月 6日 (土)

小説木幡記:2008/09/06(土)高台の図書館そして職場人生

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 新聞で「大きな試練から逃げないで」(たつみ都志=武庫川女子大学教授)という記事が目に入った。
 (産経新聞:平成20年(2008年)9月5日・金曜日夕刊)
 花形の総菜メーカーに就職して順風満帆と思われていた卒業生を励ました内容だった。
 卒業生は就職後、九州店舗で成果をあげて、大阪の百貨店に栄転、すぐに本社企画部に抜擢され、同級生も、その筆者先生も驚きの目で見ていた青年だった。しかし会った時の落ち込みが激しく、【能力の限界を感じる。接客が好きだったのに企画。まだ3年目の平社員が年上の店長に通達しプレゼンテーションをする苦痛。上司に叱られるたびに自己嫌悪。一人暮らしの部屋で涙している】という内容だった。

 たつみ先生(未知)は、大きな試練から逃げたら駄目。体の成長に応じて大きな殻を捜すヤドカリ的人生を選ぶなら、耐えるべき。上司の駄目出しをありがたく思い、成長の糧にするのがよいでしょう、と励ました。そして「何でも話せる友人をつくりなさい」と、握手して別れた。

 さて。
 たつみ先生は女性のようだ。私は男性だ。卒業生となると、双方ともこれは女性になる。
 私はたつみ先生のエッセイを読んで、その内容が心にとまった。そして女性教員と男性教員では微妙に感じ方や話すことが異なることに気付いた。個々人の相違かな? とも思ったが、なんとなく男女の違いだろうと、「感じた」。

 最近卒業生と話す機会があった。
 数年前に彼女は人もうらやむ就職を得た。というのは、かねがね耳にしていた希望条件にぴったりした職場に、さる年の初夏に決まったのだ。後で内定話を聞いて、私は「うん、そうだろうと思っていた」と言った。つまり、希望する内容と彼女の資質や能力に調和が取れていて、自然に思えたのだ。

 研究室に来てくれて、貢ぎ物じゃなかった土産物を手渡してくれた時も、近所で昼食を取り始めたときも、笑顔はあった。しかし「どうなんだ?」と、聞いたときから様子が変化してきた。もともと我慢強く聡明で、相当にセルフコントロール能力の高い学生だった。つまり、安定していた学生だった。
 結局、顔をみてから一時間後に、彼女はぽつぽつ話し出した。

 話す内容は、上述のたつみ先生のエッセイと実に似通っていた。おそらく彼女本人からすると「そんな栄転とか抜擢とは無縁ですぅ」と言うだろうが、外からはそう見えるし、事の本質は同じだった。

 ところが。
 私は結果として、たつみ先生とは別の励ましというか、感想を述べた。
 「辛さがずっと続き、それを冷静に見つめて、本当に駄目だと思ったら、転職、辞職、故郷に帰る道を選ぶのも人生です」と、言い切った。

 せっかく得た就職先を、数年前の教師が「帰郷もよし」と、言い切ったことは冒険かもしれない。私はそこまで他人の人生に関与できる立場ではない。しかし、私は言った。

 実はその言葉の前には、口にはださなかったが「人生の、本当の事を言おうか」という内言が私の中にあった。よい大学を卒業し、教授になったり、大企業の幹部になったり、今もそうである知人友人は沢山いる。しかし、どんな道を選んでも、花はあり蜜もあり、そして落とし穴も猛獣もいる。人もうらやむ最良の環境を得ても心中は闇の人もおれば、世間的に一ランクも二ランクも環境が悪くても、極楽の人もいる。

 実に人生は様々なのだ。
 人生の本当の話は、決断にあり、その決断内容は世間的な一般常識とはずれがある。
 本人が本当に冷静に長時間かけて考えた結果なら、自分で手にした物を棄てて、別の道を選ぶことも良い、というのが今の私の診断・決断なのだ。

 もちろん、そんな本当の話は彼女がAランクに位置するほど聡明で安定した卒業生だったから、明言した。とりとめもなく「厭になったから」「飽きたから」「しんどい」レベルなら、そんな「本当の話」は言わない。「おお、つらいのでしょうね、でも明日はよくなるかも。またね」(笑)程度で済ませないと、身が持たない。

 さて「余」自身のことを一言。
 余も日々辛い。能力の限界は何十年か前に痛感していた。日々学生や目上の人や、同僚から駄目出しを喰らっている。余と同年代でも、こいつの方が能力が高いな、とか、迫力あるな、と思う人間は沢山いる。学生であっても、もし余が20代なら「こいつには、負けるなぁ~」と思う者達が沢山いたし、今もいる。
 自信喪失して、葛野研や木幡研で涙ぐむことがある。

 しかし「高台の図書館」設計、製作、運用を考えると、気持が静かになり、身内の底からふつふつと意欲がわいてくる。「まだまだ、辞めてなるものかぁ~」と、雄叫びしそうになる。こんな「前方後円墳と周濠」を眺められる景色のよい高台の図書館や、図書館列車をイメージできるのは、世界中に「余」しかおらん!
 その自負が最近の余を支えておる。

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