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2008年8月19日 (火)

小説木幡記:2008/08/19(火)バーンアウトと「戦闘妖精・雪風/神林長平」

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燃え尽き症候群:バーンアウト・シンドローム:Burnout Syndrome
 ……
 離人症、パトグラフィー(病跡学)、創作療法、と鬱々しい言葉が朝から頭の中を走っていた。どの言葉も歴代の研究者が人間を観察し分析した結果、症例を定義したり、定義するなかで記録をまとめ実験し学体系を作り、現実の役に立ててきたのだろう。

 人間が分かることと、自分が分かることは現実には双方向の理解にならないし、分かることが現実対処を容易にするわけでもない。

 ただどんな場合も、自己診断、自己修復、自己メンテナンス、と自己用の方法論を身につけることは大切だと思う。もちろん、他の識者、専門家が眺めれば、「無意味、危ない、医師の診断にまかせよ」と、言うだろうが、またそれを言うのが、その者の職業なのだろうが、つまるところ古来から「自分のことは自分でやるのがよい」という言葉には勝てない。

 自分に対する治療者は自分がよろし。他が介在するとその場の治療は可能でも、それで終わり。また翌日があり、また翌年があり、完治はしない。壊れかけの自分を、走りながら自分で修理しながら、先にすすむしかない。というよりも、時が先に進めていく。
 ただし、自分が自分の医師、分析者、治療者になるには、相当な苦難、永年月を強いられる。一般に他を診断し治療するよりも、数倍難しい。

 こう思った。
 ヒトは、運動体としてはほぼ完結した完成度をもって世界の中を捕食しながら、動き回り、昔なら30年程度、現代なら80年程度、この地表をうろうろする生命体なのだろう。
 事故や攻撃に遭わない限り、自己身体修復機能やメンテナンス機能をちゃんと備えた、素晴らしい高性能有機体である。特に両手があるから、少しくらいの故障なら、自分自身で直せる。このあたりの、人体のすばらしさは類書を読まなくても納得できる。

 ところが、大脳。情報処理系。
 脳機能が発達しすぎて、それに手を焼く歴史だった。現代法律の基本には、自己責任を負えるかどうかが「罰」の判断基準のようだ。ようだ~、というのもこれも法律の専門家がそれで仕事をしているので、素人が確定的な云い方をすると、クレームが入るので、ぼかしただけだ。

 自己責任とは、その生命体ヒトが、自分というものを持っていて、その自分のやることなすことに、責任を持てるかどうかの謂いであろう。その「自分」とは、大脳を中心とした、情報処理系が正しく動いているか、機能しているかのことになる。

 単純にいうと、脳の問題になる。脳機能が定常的に壊れた者の責任は問わないというのが、現代の法律の基本にある。これは随分難しいことなんだ。脳の情報処理系にバグがあれば、社会的責任は解除されるという、難しい問題を含んでいる。いや、バグが対外的に秩序を破壊する方向に出たとき、どうするかの問題だな。

 人類史は、戦争に代表される。その戦争は常に宗教戦争の歴史だった。また、別の視点からは、権力闘争の歴史だった。これらは、人間という脳の大量精密情報処理系なくしては、起こらなかったことかもしれない。猿集団と狼集団が戦争しても、その場で終了となるが、人間の場合は延々と続く。殺傷破壊力も、猿や狼に比較はできない。

 以上が今日の小説木幡記の前振りである。

戦闘妖精・雪風/神林長平
 このお盆に二冊の小説を読んだ。正確には「戦闘妖精・雪風<改>」と「グッドラック:戦闘妖精・雪風」である。
 物語を単純に申せば、いつのまにか知能を持ち自律した戦闘機雪風と、非社会的心性を持った操縦士・深井零が相補しながら、分けの分からない異星物ジャム(ヒトなのか機械なのか、不明)と戦うという、物語である。

 深井零は、生まれたときから燃え尽き症候群のような青年だ。
 異星物ジャムは、定義できない「オブジェクト」で、神でも異星人でも、有機系でも無機系システムでも、なにもかもが当てはまるが、そのどれでもない、分けの分からない情報処理系である。
 戦闘妖精・雪風は、自分で「私はYUKIKAZE」と、記号ではなくて、自律システムとして答える。深井零青年と異星物ジャムとの、間にいる。

 以上が、この小説に関する感想文である。 
 優秀な作品である。

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