NHK篤姫(34)和宮降嫁
△今宵は所用で恒例の篤姫拝見は遅れまする。
よって詳細は深夜ないし月曜極早朝になりますので、とりあえず事前予測記事だけを載せておきます。
○先程記録映像を拝見つかまつりました。これからしばし珈琲などたてて、ゆるりと感想文をしたためるといたしましょう。予定では、23時過ぎには完了。
では再見。
◎なんとなくかき上げましたので、ご笑覧のほど願いたてまつりまする()。22時58分、記。
鑑賞前
実は~、Muは武家と公家の、風習などの違いをよくしりません。それらしき雰囲気は、三島由紀夫さんの『春の雪』で想像しているだけです。その小説では、男性が維新元勲武家の出身で、女性は公家の出です。
風習の違いというよりも、意地の張り合いにも思えますね。ともあれ、 降嫁(こうか)、嫁になって降りるというのですから、天上界から下界に下るような話です。
それと、和宮さんは公家一般話ではなく、天子の妹君ですから、皇家の話になりますね。
さて、言葉と格式・位階のすれ違いと、意地の張り合いとが、和宮降嫁とともに大奥でわきあがったことでしょう。
言葉ですが。
篤姫は充分に薩摩言葉を直していますし、近衛家からも指導があったでしょうが、それ以外の大奥の女性は江戸風武家言葉だったのでしょうね。和宮さんが言葉を変えたとは思えません。
皇家、公家での京言葉がどんなものかは想像するだけですが、相当に違いがあったと考えます。実態は、よく通じなかったのじゃないでしょうか。篤姫と和宮が直接言葉を交わすのは少なかったでしょうし、細部はお互いの世話役が話し合ったとしても、微妙なニュアンスが通じ合うまでには時間がかかったと思います。
想像ですが「よろし」など、現代人でも、関東と関西だと意味が逆転しそうです。Goodなのか、OKなのか、もうよい(厭じゃ)なのか、どうでもよろしいなのか、それはいりませんなのか、~。
格式問題、位階ですが。
公家の方だとなによりも官位を重視しますね。和宮さんは内親王で、特殊な品「位」がありました。征夷大将軍は、ずっと下位になります。三代将軍のころの春日局(かすがのつぼね)は、結果的に従三位という位と「春日局」という称号を持ちますが、これは特殊、特別ですね。
篤姫の位階は家定薨去後従三位だったようですが、幕府崩壊とともに剥奪されています。死後復位したようです。
昨年、ガクト謙信が地元有力者の下馬礼が無かったので相手を引きずり下ろした事件(笑)がありましたなぁ。地元有力者の官位が上だったので、下馬礼をしなかったのでしょうが、ガクト謙信は実力者大名として、怒ったわけです。
姑・篤姫側、嫁・和宮側が意地の張り合いをしたというのは、資料抜きでの想像です。しかし、二つの異種の女性軍団が遭遇したなら、そうなるのは火を見るよりも明らかで、とやかく勉強せずとも、今夜のドラマにしっかり描かれることでしょう。男心にはよく分かりませぬが、こういう確執を描くと視聴率が上がるという、その程度の相関関係はよく分かります。
鑑賞後
なかなか女性の迫力ある一夜でした。
大体、双方の言い分というのは、どちらも理をもっていますから、どちらか正しいと裁断するのは難しいわけです。古来からの嫁姑の関係は、宗教戦争なみに解決の困難さを持っておりまする。間にたった婿殿は、双方の言い分が分かるものですから、立ち往生するのが世のならい。嫁と姑とが同じ船から落ちたなら、さて婿殿はどちらを先に助け上げるのでしょうか。
男子は一般に生涯にわたって、会社、宮仕えでは随分有能な方もおりますが、それ以外ではおっとり育つものです。おっとりとは、あまり深く考えないままに過ごすということでしょう。しかるに、嫁さんをもらったとたんに、人生の深淵を味わうものです。だから、立ち往生するのです。
で、教訓は、男子は母殺しをし、女子は父殺しをしたとき、あらたな家庭がうまれるのだと、側聞しております。これは死と再生という神話的古典原理の、変種ですね。
和宮さんは、江戸の食事も、衣類も、調度も気にくわないと申されます。16歳の御所育ちにとって、江戸の食事は確かにこたえるかもしれません。衣類は女性の命に近いものですから、これも自分が理想とする美しさから外れたものは、身につけるのは辛いことでしょう。調度品は、日常のものですから、手触り雰囲気、すべてに「異質感」を持ってしまうと、使う気にはならないでしょう。
篤姫さんは、位階の違いを知っています。
しかし位階の違いは人為の強いもの、嫁姑の違いは有史以来家族制度が初まって以来の原則、と考えたのではないでしょうか。儒教などを持ち出さなくても、今眼前の連れ合いを産み育てた母体、つまり両親に礼を尽くすのは、普遍的と感じたのでしょう。ならば、家茂の義母たる自分、すなわち篤姫が、母として嫁を指導するのは、天に恥じないことと、覚悟を決めたのでしょう。
上座、下座、敷物の有無など篤姫はまず和宮にわびをいれます。
しかる後に、嫁姑の立場の違いを、凛とした声で和宮に伝えます。ただ、篤姫は威圧的上下関係を強いたのではなく、ともに徳川という「家」をもり立てるには、内紛に何の意味もないと、伝えたかったのでしょう。「和さん、家茂さんっていい男でしょう? 好きになったでしょう? その男が背負っている徳川を、ちゃんと、あんたと私でもりたてないと、いかんやないの」という、ノリでしたな。
政治としても、家庭としても、組織としても、「和」は大切ですね。和を達成するには、双方のわがまま、あるいは我慢だけでは無理でしょう。言い分をきっちり伝えて、その上で、呉越同舟(ごえつどうしゅう)。つまり喧嘩しすぎて船を沈めたらもともこもなくなる、という人生の基本を今夜のドラマは示しているように思えました。
と、いつものMu説教節でした()。
追伸
ただし、篤姫が相当に聡明であるからこそ、今宵は姑に肩入れしたわけです。
ところで、中村メイコさんの憎々しげな役ぶりは、やはり名優のものですなぁ(笑)。それに鶴ちゃんの爬虫類じみた岩倉具視卿、よろし!
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コメント
本日はどうもありがとうございました。
し、信じられません。もうこんなことになっているとは・・・
私は、帰ってきて洗濯物を畳んで2階を掃除してシャワーを浴びて出てきたところです。
その間に、鑑賞を終え、これだけの文章をものしていらっしゃるとは・・・
敬服つかまつりました。
投稿: 某O | 2008年8月25日 (月) 00時04分
某O君
誤解無きように。「鑑賞前」は、日曜の早朝に記したものです。
それとね、京阪特急は速いから、フランソワをでて、また夜景を写して、帰還したのが21:30前くらいかな。一休みして、見終わったのが、22:20すぎ、それから珈琲飲んで、書き出して約30分。丁度、昨夜の23時前に書き終えた。
「鑑賞後」は文字数を数えたら1230文字だから、400字原稿用紙で3枚。この程度なら30分で書けますよ。あはは。つまり、なかなかおもしろいドラマでしたから、一気に息止めて書きました。
追伸
昨夜の謀略謀議話は、後日突然MuBlog記事になるのでしょうか? 実録○○本の怪奇、とかね。某O君は被害すくないが、某I、某N君なんか、これから幾夜も眠れないじゃろう。
しかし刺客なんかを放たれたらたまりませんな。
投稿: Mu→某O | 2008年8月25日 (月) 04時55分
「鑑賞前」の件は承知しておりましたが、それでも。
3枚30分は十分に早いですし・・・
今後ともご活躍をお祈り申し上げます。
投稿: 某O | 2008年8月25日 (月) 23時20分
某O君
「ご活躍を」と言われましてもね。
篤姫感想文の速書きを競っても~。原稿一枚を10分で書けても、十枚を100分で書けないのが、ロボットと違うところです。
昨日は葛野で午前7時過ぎから夜の7時まで、延々と夏期論文の泥沼に足をすくわれていましたが、それだけ時間をかけても、書いたのは200文字程度(400字原稿半分)でしたね。
と。
すなおに、「活躍」しておきます(笑)。
投稿: Mu→某O | 2008年8月26日 (火) 05時17分