NHK篤姫(32)勝海舟と桜田門外の変
勝海舟(勝麟太郞)が咸臨丸でアメリカへ行くころ(1860(万延元年))、井伊大老が桜田門外の変で最期を迎えました(1860(安政7)年3月3日:万延元年は3月18日に改元)。今夜はその、歴史の同時性を味わいました。明治維新まで、あと8年を残す頃だったのですね。勝海舟は30代後半で、幕府の軍艦躁練所教師方頭取、今で言うなら最新の、海軍大学校・筆頭若手教官だったのでしょうか? そして井伊直弼は暗殺されたとき、まだ44歳だったのです。
今夜のドラマは、いつも以上に、いくつものエピソードが胸を突きました。
1.井伊直弼(いいなおすけ)の一期一会(いちごいちえ)
直弼が茶道を究めたのは、若い頃(近江の彦根藩)から庶子扱いで、部屋住みの身。なにかに没頭したかったのでしょうか。つまり養子にでも行かねば結婚も独立も出来ない状態だったわけですが、嫡出子でないから、養子縁組みも難しかったようです。
直弼が差し出した茶に篤姫は「美味しい」ともらします。
篤姫は、直弼が「役割を果たしているだけ」と言ったことに反応します。回想シーンはなかったのですが、若い頃出会った薩摩藩家老の調所との話を思い出していたのかも知れません。調所も、薩摩では「悪人」扱いされていました。
そして眼前の井伊大老は巻紙の端から端までの人材を、投獄、死罪、遠島に処した「悪人」でした。その者がいれた茶を篤姫が「これほどの茶をいただいたのは初めて」と、正直に言います。
そこから、会話が始まりました。
役割とは何なのでしょう。
己の信じるところに立って、自らへの毀誉褒貶を抜け出したところに、役回りを誠実正確に演じる人生があります。井伊大老は、攘夷論者を掣肘、粛清することが徳川家、日本国を正しく導くと考えたのでしょう。その是非はいまだに決着は付いていませんが、今夜のドラマでは、井伊直弼がかのような人であったと、描いています。
篤姫は、その言葉に、話の糸口を見出しました。
また、茶に誘って欲しいと篤姫は伝え、自らミシンで作ったふくさを贈り物に差し出します。
井伊は言いました。「亡き公方さまのお気持ちの一端がわかった」と。井伊もまた、篤姫の廉直、聡明さに感服したのでしょう。
しかし、一期一会。
瞬間の出合は、雪の降る桃の節句に、江戸城桜田門外で、未来永劫断たれたのです。
なお、一期一会の意味はいろいろでしょうが、私は「その一瞬の出合が、総て。あとはない」と、とらえています。
2.薩摩の誠忠組
薩摩では、血気にはやる下級武士達が、西郷さんの「突出するな」という言葉を守りきれずに、遠く江戸の水戸の脱藩者と呼応し、薩摩を脱藩し京に向かおうとしています。大久保さんも止めきれません。小松帯刀さんは必死の形相で、島津久光に掛け合います。「あたら、薩摩の礎となる、若い人材を失ってはなりません。なんとか、してください!」と。
久光は終に、突出前夜の若者達に、花押入りの手紙を送ります。
「諸君の誠忠に感激した。この、薩摩のために君らの力を尽くしてくれ」という意味でした。
大久保さんの演出で、若者達は落ち着き、誠忠組を結成し、血判状を薩摩に捧げることになったのです。
(後日、やはり、薩摩の血気は抑えきれず、半ば同士討ちのような悲劇が、京都伏見の寺田屋で起こります)
3.勝麟太郎(後の勝海舟)
咸臨丸に乗ってアメリカにでかける勝海舟や当時の軍艦奉行が将軍家茂と篤姫に謁見します。
篤姫と勝海舟とは後日も、なにかと助け合う仲ですが、勝の闊達さに篤姫はいたく感心し、親近感をおぼえます。ジョン万次郎さんも、勝のみやげで、篤姫と話す時間を持てました。勝が倉庫から引っ張り出してきた、ペリーの贈り物「ミシン」を、篤姫は日本で最初に使い出したようですね。
篤姫さんは、器用だったんじゃないでしょうか。
4.幾島
幾島は最期のいとまごいに、斉彬から託された桜島の絵を篤姫に手渡します。
だいぶ、感動的な別れでした。
つまり、あらためて「女優」のすごさを味わったのです。見ている私も二人の別れに胸がいっぱいになっていたのですが、篤姫も幾島も、本当にすばらしく自然に涙を流すわけです。恐らくお二人とも、同じ思いで現実・西の丸での別れを、役の上で演じるよりも、味わっていたのでしょうね。だからああいう涙を、流せるわけです。
ぽろり、はらはらと篤姫。
そして、幾島は、顔を上げた途端に、目が涙であふれていました。
| 固定リンク
「NHK篤姫」カテゴリの記事
- NHK篤姫(50)最終回:清らかな晩年(2008.12.14)
- NHK篤姫(49)さらば大奥(2008.12.07)
- NHK篤姫(48)西郷隆盛と勝海舟(2008.11.30)
- NHK篤姫(47)西郷隆盛の江戸攻め(2008.11.23)
- NHK篤姫(46)最後の将軍・徳川慶喜(2008.11.16)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント