NHK篤姫(31)出藍の誉れ・幾島去る
出藍
青色は昔、植物の藍(あい:らん)からとったとのこと。
なぜか、とった青がなお藍よりも青いようです。
弟子が師匠を超えた場合、古来から「出藍(しゅつらん)の誉れ」と言います。
青が篤姫、藍が幾島と見立てると、どうしようもないじゃじゃ馬が、幾島を超えるほどに成熟し、幾島は「自分の仕事は終わった」と、篤姫のもとを去ります。
幾島が一橋慶喜擁立派の薩摩から派遣された者であることは、すでに井伊大老の知るところであり、将来も篤姫のそばにいるかぎり、足手まといになるという理由からです。
「出藍」とは、単に出るだけでなく、超える意味があります。幾島の近衛家、島津家という考えから、篤姫は婚家の「徳川家」へと超えたわけです。
内着
女性が衣裳に持つ独特の象徴性、権威性、執着がこれほど強いのかと、驚きました。
今夜は、これだけでも堪能しました。
どういうことかというと、京の近衛家・村岡(星由里子)が、井伊大老の指示により詮議を受けることになります。密勅の受け渡しを周旋したという罪です。篤姫は婚礼時に母代わりをしてくれた村岡を救いたく、将軍家茂に取り扱いを頼もうとしましたが、滝山は衷心から、「それは篤姫さまにとって、実家の近衛家の問題。いわば姫様の私事。公方さまに私事を頼み事するのは、公(おおやけ)事を乱すことになる」と諫められ、あきらめました。
しかし、近衛家や村岡を救いたい気持は棄てきれず、窮余の策を思いつき、幾島を呼びます。しかしすでに幾島もわかっていたようです。幾島は、篤姫が婚礼時につかった白い内着を用意しておりました。
詮議の日、村岡はその篤姫拝領の白布着を身にまとい、毅然とした態度で、「この内着は、いわば徳川家と同じ」と吟味役に言い切ります。
後日村岡は、押し込め(閉門蟄居のようなものでしょうか)30日となったようですから、効果があったのでしょう。
その白い内着は村岡から再び幾島を通して返されます。「姫様がお持ちになる着物」と言葉がありました。
ところが、幾島がそれを機にいとまごいをすることになり、篤姫はその自分自身にとって唯一の婚礼着を、幾島に形見分けします。
幾島のたっての望みで、白い着物をきた婚礼時の篤姫が再現されます。
戦旗
私はこの動きを、単純に着物がいったりきたりしたとは思いませんでした。男性でいうと(注:この男性観も実は、Muの固有世界ですが、男達の挽歌を味わう男なら、分かることでしょう)、連隊旗というか、戦旗というか、北方(きたかた)水滸伝でいうなら、「楊令は、血を吸った吹毛剣(すいもうけん)を古き替天行道の旗でぬぐい、これを弔旗として懐に収めた。」と。これくらいの重みを味わったしだいです。
たしかに血は見ずとも、篤姫、村岡、幾島の間には、白い内着が「旗」の重みを持っていたのだと知ったのです。旗の下に男子は死ぬものです。地上に足つけて生きる女子に比べて、大地を持たない男子は旗にくるまれて死ぬことを夢想するものです(でないと、男子ではないというのが、Muの持論です)。しかるに、その男子達の気持と同質の物が、婚礼の白い装束にあったのだと、Muは気がついたのです。
たしかに家庭ドラマ、大奥物として動き出した「篤姫」でしたが、今夜の村岡と幾島の語らい、幾島と篤姫の対話を見ていて、単純な温かさや、女性固有の権勢争いを超えた所に、おんな達の盟約をみた想いがしました。なかなかに、よいドラマになっていますね。
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