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2008年7月20日 (日)

小説木幡記:2008/07/20(日)ゆっくり生活とMODEMOの車両

Hakonekohata

 朝早くに起きるのは、早く眠るから目覚めが早いのだろう。早く起きるとすることもないので、責務らしくことをやってしまう。それが終わって葛野に出掛けたり、本を読んでいたりすると、時間がゆっくり流れる。大学でみんなの顔を見る頃には、眠たくなってしまう。

 一般に起床後2時間ほど経つと脳が一番活性化するようだ。しかしどのような統計もグラフの左右に外れはあるもので、余は大体外れていた。外れていなければ、いまごろ「お前はもう死んでいる」状態だろう。あるいは、葛野の地をふむこともなく、どこかの企業で真面目に勤めていたことだろう。外れたから司書になった。外れたから研究・教育者になった。外れたから鉄道図書館列車に余生仕事を知った。余の人生の実態じゃなぁ。で、はずれているから、起床後約30分程度で脳の活性化を味わう。

 そこで思った。
 ヒントは鉄道図書館列車だった。余は、ずっといろんなことで速度を重視してきた。分かりやすく言うなら、自動車も新幹線もローカル特急も、速いことを正に考えてきた。もちろん研究や教育、一般的な仕事、どんなことでも速いことが良いと内心思っていたようだ。だから急坂を猛スピードで走り抜ける弾丸列車を想像してきた。鉄道図書館列車も、早いサービス、高めの巡航速度と考えていたようだ。

 それが最近違ってきた。
 ヒントは「箱根登山鉄道」というNゲージ(線路幅が9mmの鉄道模型)モデルだった。古式に惹かれて手にしたものだ。これがものすごく遅い。スピードを最大にしても他の列車の半分程度しかでない。内心「失敗したな」とずっと思ってきた。これをあがなうのが手頃なのかどうなのかは人によるだろう。一晩の手軽なフレンチ程度だから、気持による。しかし、貧しい学生なら一週間程度の生活費に相当する。だからずっと「高い買い物をした。無駄だったかも」と、うじうじしてきた。

 ところが。
 図書館本館を高台に置く設計の小型ジオラマ世界では、えも言えぬ味わいを出すことに気がついたのだ。高台といっても10センチ、つまり現実には150倍して15m程度の高低差なのだが、この急坂を実にゆっくりした速度でじわじわと、音もなく、登っていく。他の列車だと車輪が空回りしたり、最高速度で円周上を助走させてやっと登り切る高台の図書館へ、じわじわと滞りなくたどり着く。

 みていて気持が落ち着いてきた。まったく苛立たない。確実に登坂していく列車、これだけの静かさなら「高台の図書館」ジオラマを造っても風情がでることだろう。
 これまで正と考えてきたスピード重視が、小さな鉄道模型によって変わってきた。確実な遅さも正になることに心底気付いたわけだ。

追伸1
 以前、列車に重り(ウエイト)をバランスよく乗せることで快適な走行を得ることに気付いた。今朝は、静かにゆっくり走る列車に「未来の図書館列車」の姿を見た。日々、新しい発見に心が和むのう。

追伸2
 専門雑誌を読んでいると、この列車を製作しているハセガワ「モデモ:MODEMO」は、ギヤ比や積載ウェイトのバランスによって、急カーブ・急坂をスローにこなすことで、有名な会社のようだ。
 NT56 箱根登山鉄道 モハ2形「翠塗装」(写真)
 NT84 東急たまでん デハ80形「旧塗装」も別途入手した。
 なお、写真背景にぼんやり写っている列車は改造車で、やがて単行図書館電車になることでしょう()。

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コメント

箱根(登山)鉄道なのです

 Muせんせは箱根へ行かれましたろうか?
箱根の山は高くはないですが急なのですね。
今は箱根湯本から強羅までを(箱根登山鉄道)いいます。
何度か乗りましたが結構なものでしてね。
確かスイッチバックちゅうようなものもあったような。
それだけ勾配がきついのですね。

 いつのころでしたか、途中の駅でワッと女子中学生だか女子高生だかが乗ってきたことがありました。
連中の何とも言えない上品な、しかし気取りのない立ち居振る舞いを見て、痛く感じ入った記憶があります。
こういうのが本当の豊かさなのだろうなあと思いました。

投稿: ふうてん | 2008年7月21日 (月) 03時27分

ふうてんさん
 箱根には中学の修学旅行で行ったはずですが、まったく記憶に御座いません。

 スイッチバックは有名ですね。日本の鉄道関係の優秀景観として、選ばれておりました。

 ふうてんさんは何度も行かれたようですが、一体何しにでしょうかねぇ~(笑)

 本田さんが自動二輪造ったときですか、四輪でしたでしょうか、箱根の坂を上手に上り下りできるマシンが最初のころの目標だったような、そんな話が耳朶にのこっております。

 途中でのってきた上品な若い女性達は、地元の人なんでしょうか。それとも夏の別荘の子弟達なのでしょうか。~おぼろ、ですね。

投稿: Mu→ふうてん | 2008年7月21日 (月) 06時29分

何をしに行っていたのでしょうね

 確かに言われてみると何をしに行ったのでしょう。
思い出しますのは強羅の少し下だか上だかに(箱根保養所)と呼んでいた会社の施設がありました。
小涌谷という場所でしたが、若いころ何度もそこに集まった記憶があります。
真冬なんか帰りに同僚の車で、カーブで凍結した道路で滑ったり・・・。

 箱根の名誉の為に申し上げておきますが、ちょうど下校の時間でみなさん制服でした。
つまり全員地元のお嬢ちゃんたちだったという次第。
今でもその爽やかな雰囲気は覚えています。
やっぱり都会とは違うなあと思いましたです。

 新宿からロマンスカー(特急)で箱根湯本。
箱根湯本から強羅まで箱根登山鉄道。
強羅から早雲山までケーブルカー。
早雲山から芦ノ湖までロープーウェイ。
芦ノ湖に着いたら対岸まで船。
このそれぞれにスピードの違う乗り物を乗り継ぐ(遊覧)はお勧めです。
車と違って公共の乗り物の良さはただボンヤリとしていればいいことです。
たまには、せんせもいかが?

投稿: ふうてん | 2008年7月21日 (月) 13時33分

ふうてんさん
 返事遅れてすみませぬ。昨日は終日ざわざわしていて、疲労が重なり、夜半は9時ころに意識不明睡眠状態になった次第です。


 新宿からロマンスカー(特急)で箱根湯本。
箱根湯本から強羅まで箱根登山鉄道。
強羅から早雲山までケーブルカー。
早雲山から芦ノ湖までロープーウェイ。
芦ノ湖に着いたら対岸まで船。

 この段落、すばらしいですね。足腰動く間に体験してみたいです。なお、ロマンスカーと箱根登山鉄道列車は持っているので、あとはケーブルカーとロープウェイと、船を自作せなあきませんなぁ。

投稿: Mu→ふうてん | 2008年7月22日 (火) 09時39分

箱根登山鉄道は、夏でもアジサイが咲いている山を
ゆっくり登ってゆきますよね~。


ところで阪神百貨店でしたっけ、どこかで鉄道模型展が
開かれるようですね。

そして京阪では、この秋に開通する中ノ島線を走る
新型の列車のミニが、25日と26日に、
ひらパーで走るようですね。
http://www.keihan.co.jp/news/data_h20/2008-07-23-02.pdf

投稿: 伽羅 | 2008年7月24日 (木) 20時10分

今晩わ、伽羅さん
 返事が一日も遅れてもうしわけないです。
 
 いただいた情報、確認しました。庭園鉄道という趣ですね。

 今日はまた二階部分にのって四条まで出向きました。陽射しが、入ってくる電車に直に当たったのですが、すこしくたびれていました。もう、十年は走っている特急ですからね。(もっとかもしれません)
 そろそろ新型投入かと思っていたら、さっきの情報では、新塗装にするようですね。
 そして中之島線には、新型機のようで。

 早く、二階建て図書館列車を当方も走らせたいです。

投稿: Mu→伽羅 | 2008年7月25日 (金) 21時56分

このあいだ京阪の各停に乗っていて、
何気に連結部分の表示を見たら、
私の乗っていた前の車両は、昭和46年のものでした。
外側は塗装を塗り替えて、内装も少しは新しくしているので、
そんなに古いとは気付きませんでしたが、
車両自体に取り付けられている製作年の表示が
40年近く前のものだったのにはびっくりです。

京阪電車も相当古い車両を走らせているんですね。

投稿: 伽羅 | 2008年7月26日 (土) 04時36分

実車のことは、世間並み以下の知識しかないのですが。一般論として。

 車両は国鉄も私鉄も、長持ちさせますね。よく言われることで、京都の市電なんか消えて何十年にもなろうというのに、広島でしたか、まだ動いているようです。

 本体が昔のは頑丈で重くて、それに初期投資がべらぼうな額だったのではないでしょうか。なんとなく動力車だと、戦車なみのお金がかかっていると、想像しています。

 それに国鉄じゃなかったJRも、私鉄も、専用の工場、修理工場、技術者や職人さんを抱え込んでいるのじゃないでしょうか。
 だから、どんな故障も、しこしこと旋盤やフライス盤(区別はつきません(笑))や、ヤスリや砥石で、しこしこと研ぎ出して、いつでも部品を再生産できる状態なのだと思います。

 鉄道関係会社は、そう言う意味で底が厚いのかもしれません。おいそれと廃車にするなんて、もってのほか。現代の薄利多売消費世界とは、ひと味違っているのでしょうね。

↑上記はすべて推測イメージです。

投稿: Mu→伽羅 | 2008年7月27日 (日) 07時32分

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