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2008年7月19日 (土)

小説木幡記:2008/07/19(土)深夜に物思う

午前二時の木幡研
 零時頃に眼がぱっちり開いた。睡眠は余の天性の一つというか、あまり気にかけない。眠るときに眠り、起きる時に起きる。目が開いたのは、おそらく夏期論文のことだろうと、自問自答した。3万件強の用語(単語ではない)を一つ一つ見ていく作業を続けている。31091番目の用語は「黑田淸輝」となっていた。新字の「黒」でなく旧字の「黑」だからJISの漢字番号順にならべるとこうなる。黒田さんは明治時代の洋画家で、湖畔の絵は中学校くらいの美術授業で眺めた記憶があるのう。

 現在四千番目付近の用語をしらべている。いや、しらべて眠ったのが夕方だった。よくおぼえてはいない。
 疲れたからそのままファイルを保管してマシンは点けたままだった。
 4091番目の用語は「貴賤好箇」とあった。現代での用例が少ないので(余は使ったことがない)、本文にあたってみると、「禪寺の山水風景をイミテーシヨンした庭と、貴賤好箇の對蹠である。」とあった。文意が通っているので、これでよしとした。第五章「奈良から平安へ」(日本の美術史/保田與重郎)の最終段落にあった。

 ところでいかにも、翻訳しないとまるで古文のようなので、試みてみる。
 「貴賤好箇の對蹠」とは、キセン・コウコのタイセキ(タイショ)と読み、<尊いことと下品なことが、実にうまく比べられるなぁ>となる。好箇は好個で、よろしいなぁ、ころあいでんなぁ、の意味。對蹠は対蹠で、足の裏(手のひらでもよいが、漢字は意味が繊細なので足)が左右逆様なのにぴたりと合わさること。「反対の形」とか「敵対関係」などを表す。しかし禅寺の庭を何と比べて「イミテーション:真似た、ニセモノ」と言っているのかよく分からない。
 で、直前の文を読んでみると、こうだった。

奈良春日神杜の建築の樣式の美しさは、奈良に數ある文化財の中でも、第一級のものである。また何も無い庭をこの建物のまへに作つてあるのがよい。この何も無い庭は祭典の時に禮樂が行はれる場所である。そのただ砂を敷いただけの禁庭は、高貴な折目の正しさをあらはしてゐる。

 つまり「貴賤好箇の對蹠」のうち、「貴」が春日大社の前庭で、「賤」が禅寺の庭、となろうか。現代の常識として禅寺の庭を馬鹿っぽいとか、厭らしい、という人はいないだろう。余も折にふれて嵐山の天龍寺のでっかい部屋から庭を眺めることがある。なかなかよいものだ。竜安寺の石庭などは世界的にも知られている。ふむふむ。

 ただ。
 抽象的なジオラマを造るとすると、それは禅寺風になるだろうと、想像できる。現実世界のイミテーションであるのは事実だろう。暇な禅坊主が瞑想にふけるのに飽きたとき、せっせとジオラマを造るように作庭したのかもしれない、と想像した。
 で、今時計をみたら午前三時になっていた。余は若年から保田に親しんできたので、彼が書いたものを「わからない!」と思ってはいない。ただ、人に説明するとき、現代の普通の論理で分析するとき、「難しい」わけだ。一用語を、一文を普通に説明するだけで一時間かかる。やはり、難しいのかもしれない。

事のついでに超小型ジオラマ
 「嵯峨野鉄道図書館ジオラマ」は今春に第1期の完成をみ、今夏八月2~3の両日に、大学キャンパスでJK達を相手に披露する。テーマ図書館列車は「改造・愛宕(あたご)号」にするつもりだが、これをこの二ヶ月の間に「おもしろい!」「すばらしい!」と言った者はだれもいないので、おそらくJK達も「つまらない」「何、これ?」という反応しかなかろう()。
 そこで、急遽人寄せに「トーマス世界」を豊かに走らせることにした。新たに数両の列車を揃えた。独特の雰囲気があって、たしかに可愛らしい。しかも、葛野図書倶楽部2001の隊員が三人そろって「トーマス」世界のレファレンス・ツール(調べ物をするときに使う道具:つまり、調査字引のようなもの)を、「情報サービス」という科目の課題テーマに選んで、数日前に班を結成した。成果が楽しみだし、オープンキャンパス当日のトーマス列車運行も、若き一番隊長、三番隊長、新人隊員に任せきれるかもしれない。一挙両得とはこのことなりや。

 で、他方「邪馬台国周遊図書館列車ジオラマ」プロジェクトは、まだ手を付けていない。90X120センチの大きさだから中程度の規模といえようが、まだまだ余力がない。今夏は夏期論文との競合となろうか。

 以上が長い前振り話()。ここから本論。
 つまり、「嵯峨野」の60X90センチとか、「邪馬台国」の90X120センチのジオラマ(レイアウト)は世間では決して大きなものではない。しかし造るには数ヶ月とか一年かかる。これでは、教材として対応できないことに気がついた。
 そこで最近は、葛野や木幡の机上で、30X60センチないしA3判程度の大きさで、Nゲージ・超小型ジオラマを製作しはじめた。テーマごと、コンセプトごとに次々と短期間に図書館列車モデルを作るわけである。
 現在葛野研では、「町・図書館と図書館列車」、木幡研では「高台の図書館」に手をつけ出した。後者は、長岡京市の図書館をモデルにして、ガラス張りの図書館が大きな池のほとりにある情景を造ろうとしている。もちろんすべて自由設計(フリーランス)なので、現実とは全く違った物になる。「高台」に図書館を置くのは、宇治市立図書館が見晴らしの悪い(笑)高台にあるので、これを見晴らしよくしたかったわけだ。

 ただ問題は、超小型だとレールの曲がりが強いので、愛宕号のように20m級の普通列車を改造したものが走らない。だから、超小型図書館列車では、15m級、つまり現実の「嵯峨野トロッコ列車」をモデルにし、さらに一両ないし二両で「図書館列車機能」を果たす必要があり、なかなかの難問である。

 現在午前四時前。そろそろ眠ろう。疲れました(

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