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2008年5月25日 (日)

二階建て図書館列車考(6)改造車篇:愛宕号(あたご)

承前:二階建て図書館列車考(5-2)乗車篇:嵯峨野トロッコ列車
目次::嵯峨野鉄道図書館ジオラマ

Atagodd
(二階建てトロッコ図書館列車:愛宕号)

はじめに
 昨年秋から考えていた「二階建てトロッコ図書館列車」モデルを、愛宕号としてお披露目します。ディーゼル機関車と、二種類の客車(図書車)で編成しました。完全自作の無理を知り、既成の客車Nゲージ・モデルを改造することで、目的を達成しました。
 詳細は各写真の説明欄に解説しましたのでクリックして下さい。客車は二台とも現代の特急列車ですので、トロッコという範疇からは外れるわけですが、大胆な開放性という意味で用語「トロッコ」を使っています。雰囲気を変えるために、両車とも車体色を「国鉄黄かん色」で統一しました。

 あたご1号は全天候型で天井が色つきアクリル板による透過性を持つことに特徴があります。後尾に展望雑誌室を持ち、メゾネットタイプ(1階と2階とが緊密に繋がっている)の三室は各々1階を書庫、2階を専門読書室とし、人文科学、社会科学、自然科学の3領域を部屋毎に分けています。
 あたご2号は開放型の2階に一般読書座席と、オープンカフェを持ちます。1階は半分を書庫とし、残りを静粛性の高い重読書座席に設定しています。

愛宕号の編成

DD&T(1)愛宕号編成
DD&T(1)愛宕号編成・上空
DD&T(1)愛宕号編成:愛宕DE10

 編成は、牽引車が愛宕DE10ディーゼル機関車です。これはTOMIXの樽見鉄道TDE-101を無改造で流用しています。次にトイレと調理室を持つあたご2号、最後尾には司書室と司書作業室を持つあたご1号を連結しています。
 元来は、嵯峨野鉄道図書館ジオラマ用の図書館列車ですが、今回の写真では「昭和の『鉄道模型』をつくる」ジオラマの中でテストしています。制限の強いミニカーブですが、順調に走行しています。
 このことで「二階建てトロッコ図書館列車」を、昭和35年当時に対する現代、すなわち「未来の図書館列車」と設定しました。このジオラマはその世界に図書館を置く余地がなく、逆に、図書館が無いから未来の鉄道図書館列車を走らせるという風に、発想を逆転したのです。
 巡航速度は、現実の嵯峨野トロッコ列車にちなんで、時速25~50kmを想定しています。現代特急列車の構造の助けを得て振動騒音ともにクリアし、良好な読書環境を実現しています。

あたご1号

DD&T(2)あたご1号:展望雑誌室
DD&T(2)あたご1号:2階のアクリル屋根
DD&T(2)あたご1号:上空

 あたご1号は実車・寝台特急列車「カシオペア」のNゲージ・モデル、1号車(KATO製)を改造しました。
 全天候型ですが、天井部分を透明アクリルと色つきアクリルに張り替えて開放性を出しました。また、3つのメゾネットタイプ客室を、3分野の図書室に分割した利用想定を織り込みました。
 この列車は、1階2階とも静粛性が高く、重読書に向いています。最後尾の展望室は、展望雑誌室としてリラックスできる軽読書室仕様に変えました。

あたご2号

DD&T(3)あたご2号:2階はオープンカフェ
DD&T(3)あたご2号:幌つき2階
DD&T(3)あたご2号:開放タイプの2階

 あたご2号は実車・JRサロ124客車のNゲージ・モデル(TOMIX製)を改造しました。
 2階には予備の幌は想定しますが、原則天井無しの完全開放性を持たせました。一般読書座席と、オープンカフェおよび調理室を設定することで、図書館列車の利便性を高めました。列車という「読書の拘束性」を持たせると同時に、あらたな読書空間の提供によって、図書館の魅力を高めるためです。
 この列車は2階部分の静粛性は完全には保証出来ませんが、引き込み線での待機によって異なった風景の中での読書環境をもたらします。また、補完的に1階は静粛性を保ち、重量配分の意味から書庫(小説類)を設定しています。
 サロ124の実車・台車は、「TR235G型ボルスタレス台車」(台車近影)と呼ばれる現代的な仕様なので、無蓋車を改造したトロッコ客車に比べて振動騒音は低いと想定しています。

まとめ
 今回制作した愛宕号は完全自作ではなく、既製品を流用改造したものですが、コンセプトとしてはほぼ目的を達成したと考えています。「トロッコ」という用語を拡大解釈することで、貴重なNゲージモデルに刃を入れる決断ができたわけです(小説木幡記・工夫と決断)。

 実際には、調理室も司書室も書庫もモデルとしては想定しただけで、それぞれを精緻に組込工作したわけではありません。しかしNゲージモデルでは、それでよいと考えています。細部はどんな場合にも大切であるとは理解していますが、手技の熟練度や、モデルの大きさや、制作時間を考えるなら、教材模型としてはこれで良しとしています。

 さて一旦は、ワイルドな無蓋車仕様のトロッコ図書館列車を諦めたような記事となりましたが、二階建てトロッコ図書館列車は、様々な空間(ジオラマ・レイアウト)の中で多様に存在してよいものだと思います。本来は深山幽谷を走る図書館列車だけを考えていましたが、こうして昭和35年代の街並みに未来の図書館を走らせるという、逆転の思考も経験しました。今後は、さまざまなモデルをよく眺め、さらに幾種類かの図書館列車を考えていくつもりです。

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コメント

すごくよくできていますねぇ。自分がこれに乗っていたら、なんて想像してしまいます。
オープンカフェにはアルコールはあるんでしょうか?
コーヒー、紅茶、冷たいお飲み物だけじゃなくて、水割りくらいあるとうれしいですが・・・。

幌なしでは、よい季節の晴れた日の明るいうちの走行を想定しますが、
ちょっと薄暗いころに、壁面の明かりを頼りに推理小説を読むなどというのもいいですね。

投稿: 伽羅 | 2008年5月28日 (水) 18時49分

伽羅さん
 お気に召して幸いです。実際の工作は、精緻の反対で、惜しげもなく精密モデルを切り刻み、色をさっとスプレーでかけて、アクリル板をアレンジしました。
 アクリル板の四隅をヤスリでせっせと斜めに削って、2ミリ厚の側面だけを「磨りガラス」のようにしたのが、得意技でしたね。
 その後はひたすら伽羅さんの「想像」と同じく、イメージの奔流というか、念を込めることでした。

 しかし現実の「公共図書館」というものからは相当にかけ離れたものが生まれそうです。別記事で記したものを転載しておきます。

「当然ですが、そこでは「飲食厳禁」などという野暮なルールは御座いません。ヱビスビールもキリマンジャロ珈琲も喫煙コーナーもプレーンオムレツも、居眠りも自由なのです。まるで自宅の書斎のように自由に利用できる「公共移動静止型図書館列車」は、これまでとは別の考えで設立されるものなのです。
 そこは、知遊あわさった新世界読書空間なのです。」
(二階建て図書館列車考(5-2)乗車篇:嵯峨野トロッコ列車「5.トロッコ保津峡駅の情景」)

 いつか、まとめて「読書マナー」について「考」を練るつもりです。

投稿: Mu→伽羅 | 2008年5月29日 (木) 02時12分

一種の限定サービスとしての、図書館車がある。
台湾での災害時に用いられた。
ただし鉄道ではなく、貨物コンテナを改造して、学校などに置いたり、トラックなどでコンテナ毎、巡回する方式。
コンテナだから、そのまま鉄道で移動する可能性もあるだろう。

http://current.ndl.go.jp/ca1347
CA1347 - 歓楽書香列車行動図書館−台湾大地震被災地における移動図書館サービス− / 安藤一博
「カレントアウェアネス・ポータルは、図書館界、図書館情報学に関する最新の情報をお知らせする、国立国会図書館のサイトです。」

投稿: Muメモ | 2008年5月29日 (木) 02時29分

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受信: 2009年4月 2日 (木) 15時03分

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受信: 2009年4月21日 (火) 01時13分

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