大覚寺裏と広沢池の桜:20080405:桜変じてオブジェとなる
事の起こり
先週の土曜日でしたか、午前中にオリエンテーション最後の責務が終わり、持参のお握り一つとシジミの味噌汁をいただいて、研究室で横臥していました。お握りは二つあったのですが、なにかしら二つ目は食べられなくてそのまま「満腹」とつぶやいて目を閉じました。
しかし、横になると、今春も昨年と同じく、思うように桜を撮れなかったことの悔恨が胸に突き上げて、「ああ」とため息が何度もでてきたのです。
眼裏には大覚寺や大沢池の桜が一杯に拡がり、桜吹雪に洗われた鏡面のような池の面(おもて)が次々とわきあがってくるのでした。
それは苦痛でもありました。
感性ゆたかに育った者の宿命でもありましょうが、「桜スナイパーの誇りと苦痛」とに身を嘖(さいな)まされて、横臥していることが出来なくなったのです。
ところが天啓に近いと申せましょうか、ふとJo爺の昨年の言葉が耳にこだましたのです。「来年は、舎人たちにあちこちカメラ持たせて、Mu皇帝はそれを選ぶだけにしたら、楽になるでしょう」と。
昨年同じ頃、今は卒業した当時の副長2007に、大沢池、広沢池の一切合切を写してもらったことを思い出したのです。「桜絵」として、私にとって記念すべき作品が残りました。
で、舎人?
おお、舎人(とねり)はおりませんが研究室の近くには葛野図書倶楽部2001の屯所があったのです。土曜の昼下がり、誰もおらぬだろうと思いつつ、ドアをあけて廊下の奥を眺めてみました。電気が点いていました。
部屋には珍しく上級生全員が揃っておりました。様子を聞くと、一人は就活、一人は所用で直ぐに帰るとのことでした。残った二人は局長2008、経理局長2008になりました。
Mu 「どうだい、お握りがあるが、いらんかね?」
経理「さっき昼食をすませました」
局長「うぅ~」と、考える素振り。
Mu 「うん?」
局長「では、いただきます」
食べ終わった頃を見透かして、チョコ一枚を経理局長に手渡しながら、二人に「お腹もふくれたことでしょう。桜でも観に行きましょう。私はそのまま帰還するが、帰りに葛野で降ろすよ」。というわけで、交渉成立。どさくさに紛れてカメラを局長に持たせてしまいました。
桜を撮るのも選別するのも、それはそれは心身にキツイところがあって、この10日間、少し手を染めるだけでますます杖に過重がかかる日々だったのです。こんな時、桜撮影助手がいる環境に、私はにんまり笑ったのでした。
幾つかの写真を掲載しました。今春の大覚寺裏桜、広沢池桜2008として、ご賞味ください。
なお、局長撮影の物には、トンデモないオブジェが7割写っていて、その中からも数枚選び最後にまとめました。桜を写して欲しいという依頼もどこ吹く風、好きなオブジェにカメラを向けて、気軽にシャッターを押していました。携帯カメラ以外は触ったことが無いようですが、人には個性がありますね、初心にして写すものがこれなんだから。
局長2008が延々と桜を撮影している途中、ふと経理局長と話すと「センセ、局長ね、桜は写さずに松ぼっくりとか、変な物が一杯カメラにはいっていましたよ」と言われてびっくりしたのです。木幡に帰って全部見て、やはり驚きましたなぁ。
長い長い前振りとなってしまいました。それではどうぞ。
大覚寺裏の桜
桜の名勝として大覚寺(嵯峨御所)や境内の大沢池(大澤池)はつとに有名な桜スポットです。毎年訪れますし、桜以外の季節にもぶらぶらと散歩代わりに出向くところです。しかし肝心要の桜季節に身動きできず、今年は車で通過できる大覚寺の裏に回りました。
というのも、大覚寺駐車場からは桜が見えず、そこから境内や大沢池までは百メートルもあるのです。随身の舎人二人に任せればよいわけですが、なにもない車中で一時間横臥して待つほどには気長ではありません。それで、何かあるかも知れないと思い、大覚寺の裏に回って、局長に撮ってもらったのです。その間、私は車中から外の桜を眺めておりました。
広沢池の西畔にて、広沢池桜2008
広沢池に着いたとき、経理局長の言葉が耳を離れませんでした。
「松ぼっくり?」「変な物ばかり?」
もしも桜が一枚も無かったなら、どうしよう、来年まで広沢池桜を見られない!
この恐怖は顔には出しませんでしたが、強烈でした。倶楽部員達への信頼は海よりも深いのですが、取り違いと言うこともあり、また歴代隊員の風変わりさは葛野の外に出しても恥ずかしくない(?)ほどのものなのです。人によっては、桜=オブジェ、という語彙構造になっているかも知れません。
私は慌てて鞄から小型カメラをとりだして、RSの総ての窓を全開にして、見晴らしの良い広沢池周辺を車中から撮りだしたのでした。これは、何事に於いても、第二第三の手を尽くすという、生きるための、身に染みついた必須の戦術だったのです。
私が写したこの四枚のうち、柳の良さには再度喜色をあらためました。桜に気を取られがちですが、この季節の柳は伏見港ばかりではなく、爽やかですね。広沢池にも柳桜をこきまぜた風情があったのです。
さらに帰る頃に写した西方浄土の風景は、タイムマシンそのものでした。そこを自転車で走る子らが小学生の「ぼく」であり、「ぼくの友達」だったのです。
オブジェ・ギャラリー(変な物写真展。MuBlog造語では「変物」)
局長2008が、知らない間に、桜以外に写したもののうち、この三枚は格別に私の気を惹いたものでした。他に壊れた自転車、松ぼっくり、野にさく花、まったく見当もつかない「何物」か、多数ありましたが、それらは私からすれば異次元、異世界のものでした。ぎりぎり、この三枚は私の感性に合致し、しかも気に入った写真なので、長くMuBlog に記録することにしたのです。
今年の広沢桜は、巻頭の局長撮影桜と、このオブジェとで無事完了しました。
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コメント
ポストマン地蔵
最後の写真、面白いですね。よだれかけとすると地蔵さん、顔は郵便配達のお兄さん。明るい顔ですね。
このような姿を誰か地元の人がされたのでしょうか。心温まる雰囲気が伝わりますね。
古来、日本には身の回りの使い古した道具にも神が宿ると考える信仰がありますが、この地蔵さんもそうですね。
素晴らしいものを発見しましたね。日本珍八景です。
投稿: jo | 2008年4月10日 (木) 07時02分
Joさん
確かに、よだれかけ地蔵は目を惹きました。
郵便局と見立てましたか。ポストにも見えるし、配達の人にも。
一体、何なのか現地では気がつかず、今度行ったとき探して見ておきます。写真順番からすると、多分広沢池西畔ですから。
痛感したのは、同じ世界であっても、個々人が見る物はそれぞれ違いが大きいという現実でした。カメラは、プロは知りませんが、私でも誰でも、写したいものに向けるわけですね。それは多分見たいもの、見ていたいもの、と同義です。
私はこの季節「桜」ないし「柳」しか目に入りません。他は、そこにあっても、無いのと同じ。
人間というのは、多様ですね。
さて。
来年こそは、広沢池、大沢池写真の真打ちMu登場となるように、いまから祈念しておきます。
投稿: Mu→Jo | 2008年4月10日 (木) 13時59分