昭和の鉄道模型をつくる(24) 映画館(スバル座)
承前:昭和の鉄道模型をつくる(23) 菓子屋(井口菓子店)
24:部品と工作(映画館:スバル座)
ただ、この「昭和の鉄道模型」全般に通じる話として、大変組み立てやすい付属部品だと思います。たとえば、最近別のプラモデルで建物を造ったのですが、その時は部品を全部接着剤で組み上げる方式だったので、苦労しました。こちらの建物では接着剤を使う方がまれで、大抵ははめ込み式になっています。なんとなく旧来の宮大工のような、釘を使わない工法に思えて、納得していました。
写真の映画館は、まだ「看板」にあたるシールを貼っていません。どうするか考えています。それとは別に、本当にタイルや壁の質感が上手にでている建物模型だと、見ほれていました。
24:鉄道模型の達人/持元節夫
模型と言うよりも実車という風に感じました。モーターは24Vの直流で、集電は架線から直接得ているというのですから、驚きました。
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「桜谷軽便鉄道南山線」という鉄道名です。オーナーの持元さんの年令をみていて、いろいろ考え込みました。この世界では、先号は30代の若い先生で、次号は80歳以上の方です。最後に全部調べてみるつもりですが(笑)、感触として、50、60は、はな垂れ小僧という世界のようです。とは言っても脂ぎった政治や経済界とは異なり、全身「夢」、見果てぬ「夢」に包まれた世界ですね。
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私自身、20代前後の頃から、今までを見渡して、60歳定年という社会通念の枠もあるでしょうが、多くの世界では若者文化が隆盛を極め、加齢は隠退・隠居、その後の消息はようとして知れず、消滅。というパターンがくっきりと出ていますね。現代はそれが極端です。町に出ても、若者の喜ぶ施設で満ちあふれていますでしょう。
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鉄道模型世界は、珍しく加齢・経験が実り豊かに「姿」を表し、そして自己評価も他者評価も、充分に得られる世界だと思いました。文芸の世界ですら極端に若年傾向に走っている時世ですから、これはとてもよい傾向だと思ったのです。
写真では小学生くらいからのボランティアも参加していますね。残念ながら女性の姿はなかったのですが、老若男女が「鉄道」を作る夢、乗る夢にひたれる新世界でした。手触り、手作りの世界を、70代の人が先導する、素晴らしいじゃないですか!
24:AtoZ:建物(1):ジオラマ/レイアウトの制作(13)建物を自作する
二、三度読み返したのですが、これはちょっと遠慮したいと思いました。
方眼紙に設計図を引いて、プラスチック板を重ねて、透けて見える設計図に合わせて、プラ板用特殊カッターで切って、接着剤で組み上げていくわけですが。
難しく思えました。
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私のこととして、この工程をうまくできないと、別の企画・自作「二階建てトロッコ図書館列車」は作れそうにもないのですが、だからいつかは試してみますが、それにしても難しく思えました。
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設計図を書くこと。プラスチック板を細かな精度で切り出すこと。小さなパーツ(プラ板)を接着剤で立体的に組み上げること。
そして窓ガラス部分。
近頃アバウトに作った、ジオラマ製作の経験からすると、以上のどれもが微細な細工になり、つまずきそうになった次第です。
24:昭和の『鉄道模型』をつくる
そして青函連絡船。
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初号からしばらくして、熱心に本誌全般を読むようになりました。当初は、あくまで「昭和の鉄道模型」という、未知の工作・手引書と考えていたので、豊かな本誌記事に目が移らなかったのです。
しかし、この週刊誌50冊をひととおり読み終えたとき、二分された昭和の戦後編を深く理解していることに気がつくのではないかと、喜んでいます。昭和史は実体験と客観資料によって豊かになると考えています。
昭和30年代は、丁度私の小中高の期間だったことを実感しています。記憶の薄いことから、明瞭に覚えていることまで、つい昨日のように甦る記事内容がいくつもあったのです。
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青森駅と函館駅とを結ぶ青函連絡船は、歌にも映画にも小説にも描かれました。
明治41(1908)~昭和63(1988)年まで丁度80年間運行されました。そして、昭和29(1954)年には台風15号によって洞爺丸(とうやまる)が沈没し、1400名以上の人が亡くなりました。青函トンネルが具体化されたのは、この事件が大きな要因になったようです。
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桟橋と船を接続する可動橋では3線のレールが、船内では4線に広がるという、合理的な仕様のようです。可動橋と船とのレール接続の仕組みがどうだったのか、ますます興味がわいてきました。
ところで、名作『虚無への供物/中井 英夫』は洞爺丸事件が発端となっておりました。
24:未来の図書館、過去の図書館
未来の図書館といえば、ここ数十年の読書によって、いくつか思い浮かべてきました。それらは現代用語でいうと、不思議なくらいに「人工知能」として意識されます。紙とか本とか電子情報とか、そういう区別はなくて、アーティフィシャル「人格」だけが思い浮かぶのです。
それはこの図書館小話としては矛盾の極みとなりますが、人は一枚岩で成り立っているわけではないのです。片方で古典的な紙の図書を、渓流の傍に停車した二階建てトロッコの上階オープンカフェで読みながら、他方別の私は本とかコンピュータ操作なしで、もろに「人」に語りかけるように、完全無欠の人工知能と対話する。
両方必要としています。
アーサー C.クラークが数日前に亡くなりました。厖大な影響を受け、未来を彼の目で見つめてきたのですから、弔辞の数行は書くべきと思いました。
大昔のことですが、2010年という、「2001年宇宙の旅」の続編が、上映されました。(図書も読みました) その時、インド人の人工知能学者が人工知能HALの妹にあたる、たしかサル? に語りかけたのです。「サル、どうしてHALは狂ったのだろうな」と。
私はこの場面で、涙滂沱とあふれました。
「2010年」は固有名詞も、セリフ内容も一度劇場で見ただけの映画ですからから、なにも覚えていないのですが、研究者が、兄の人工知能HALのことを、妹にあたるサルに語りかけた情景だけは、記憶にあるのです。
この場合、HALもサルも私にとっては、人格を持った図書館になります。
スタニスラフ・レムでしたか、(惑星)「ソラリス」という小説がありました。映画にもなり、観ました。そこでは、宇宙基地の一室に図書室があったように覚えています。意外にコンピュータは覚えていませんが、なにかしら典型的な未来の図書館というイメージだけが残ったのです。「未来の図書館論」を書くときは、再読して、一人の作家の心に浮かんだ未来を確かめておきたいです。
「デューン:砂の惑星」。主人公ポール・アトレイデは、父公爵の薫陶を受け、世界を知るために、小さなノートパソコンのような画面に語りかけ、説明を受けていました。これは小説も良かったのですが、映画も超秀逸でした(たしか、監督がデビッド・リンチ)。各場面の一々がいまでも甦ります。全十数巻の文庫ですが、三読しました(笑:若い頃は読書も馬力があったねぇ)。
(↓記憶の中の対話再現です)
「父が新たな領地としたデューンとは、どんな惑星だ」
「砂の惑星です」
「生態系は? そこはメランジの、宇宙唯一の生産地と聞いたが」
「砂の中に、虫が棲息しています。詳しくは分かりませんが、メランジはその虫が地下数百メートルで造り出すようです」
「どんな虫?」
「今、貴重な動画をお見せします。大きなものになると、全長500mを超えます」
ポールは人間を相手に勉強しているのではなくて、人工知能を相手にしています。
メランジとは香料ですが、不死を約束し、吸引し過ぎると人型を保てなくなり、精神世界を突き抜ける物質。この世界では、他のなによりも、黄金よりも価値があります。
ところで、実はその世界は機械打ち壊しの宇宙ですから、本当の人工知能は、メンタートと呼ばれる人間だったのです。
と、語れば長くなる世界です。ご想像して下さい。
英国の作家デイヴィッド・ウィングローヴ 「竜の帝国」(チョンクオ風雲録)では、現代の中国らしき国が世界を支配しています。暴虐の初代皇帝は建国時、隣国の日本を抹殺しました。しかし、代を経ると穏やかな世になり、帝達は統治を、人生を真剣に悩みだします。
若き皇帝は、人生に行き詰まりを感じたとき、帝だけが使える古文書館に行きます。読書するためではないのです。偉大な父皇帝がそこに住んでいました。父皇帝のすべてのパーソナリティ、経験、智慧、知識が眼前に「父」として立ち現れるのです。未熟な皇帝は、そこで故父と話しあいます。
このシリーズも全20巻近い長編だったです。
……
わずかに数編の、心に残った昔の小説を記憶に参照しても、紙の図書でもない、コンピュータそのものでもない、他の何物か、現代イメージでは人工知能と呼ばれる、究極の人格によって、人の知識と感性とが支援されています。そこに昔の人(ここ数十年の作家達)が見た未来があります。
こんな世界を、私の半分は切望し、半分はそれでも「木漏れ日の中で文庫本を読む、この現代よ、永遠に」と思うのです。
さて。
今、プロジェクト嵯峨野鉄道図書館線「二階建てトロッコ図書館列車」を切望する、そして企図する私の考えを、どのようにして、一般世界の論理に合致させましょうか。
最近思ったのは、それはTDLと博物館明治村を比較検討して、両者ないし片方に図書館を造るなら、自動的に導かれるのではないか、という推測です。
解はなかなか得られないでしょう。
だからこそ、考える値うちがあります。
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