昭和の鉄道模型をつくる(22) パン屋(みのりベーカリー)
承前:昭和の鉄道模型をつくる(21) 八百屋(丸茂青果)
22:部品と工作(パン屋:みのりベーカリー)
このパン屋さんの建物は表も裏も洋風もどきで整っています。他の店だと、表は洋風もどき、裏はまったく和風そのまま、というのがあります。
そうそう、組立のメモですが、ここ数回私は瞬間接着剤を多用しています。初めのころ、建物だけなら組み合わせて差し込むだけで済んだのですが、小物(人形や机や椅子)が増えてくると、接着剤を使った方が気楽でした。本当は、小物にはゴム製品などもあるので、瞬間接着剤の種類を選んだ方が良いのかも知れませんが、経験的に、そこらにあるものできっちり接着できました。
22:鉄道模型の達人/稲野政男
そう言えば、名古屋在住の著名な模型作家も、町から離れた広いお屋敷に、盛りだくさんな機械工具をお持ちでした。オープンカフェのように瀟洒な工作室に、重厚な機械が工場のように並んでいました。
道を究めると、多用な工作機器が必要になるようです。
私が持っているのは、電動ドリルと糸鋸とヤスリとニッパーとドライバー程度です。

電動ドリルは1万円近くしたのですが、電線を通すために、木の台に穴を三カ所あけただけです。普通の錐(きり)でもできる作業でしたが、振動の感覚が強烈でした。
糸鋸は、高架線路の覆い(プラスチック)が邪魔だったので、切ったくらいです。
まだ、初心者ですね。
さて。
稲野さんはHOゲージ(Nゲージより一回り大きな鉄道模型:高価です)で、写真でも一目でわかるように、貨車を徹底的に集め、それを徹底的に改良することで著名な方のようです。要するに、そのままのキットや完成品は稲野邸には無いということです。
たとえば、塗装はすべてご自分の流儀で塗り直しです。一説に、塗装は一番難しいことなので、これを徹底的にする方は、それだけで達人称号を持たれます。コツは、模型の細部を残すために、薄い塗料を何度も塗り重ねる技術のようです。これは、あはは、わが「嵯峨野鉄道図書館ジオラマ」の実作事例と比較すると、よく分かります。後者は、こてこての塗料を塗りたくって、厚化粧、原型が塗るたびに変わっていきます。ディテールなんか、あったのか? という野蛮な世界。
貨車を引っ張る機関車だと、動力部を一度すべて分解し、動力伝達のギアを調整しなおすようです。このギアについては、まだNゲージ製品を見てもいませんが、自動車で想像すると、ギア比(ギアとギアの組み合わせで変化する)を変えることで、機関車がスムーズに走ったり、高速になったり、低速でも長大な貨車をじわじわと引っ張ったりと、変化があるのだと想像します。
分解して調整して組み上げるときには、時計やカメラなどの精密機器で使うグリスを何種類も使い分けるとか。グリス(半固形油脂)は、温度によって、粗密さによって、違ってくるのだと想像。そうですね、自動車のオイルだって、厳密には夏場、冬場で、温度変化の粘性が異なるから、おそらくF1レースなどでは使い分けられていると思います。グリスは、ギアのセットにねじ込む油脂ですから、いろいろあるんでしょうねぇ~。
キットや完成品であっても、各パーツはご自分で新たに作って置き換えるようです。もう、想像がつかない世界です。痛切に、この世は広い、と思いました。
(私なら、自作PCのハードディスクを分解してベアリングを変えたり、グラボ(グラフィックスボード)の回路を変えたり、冷却フィンの種類を変更するようなものです。まず、できないし、PCが動かなくなります!)
22:AtoZ:樹木・紅葉編:ジオラマ/レイアウトの制作(11)樹木を作る
材料は、細い線を寄り合わせた普通の電線です。
これを幹の部分、枝の部分と、寄り合わせた銅線の数を変えながら、太くしたり細くしたりするわけです。細い枝を立体的な方向に造り出すところがコツでしょうね。キットだと平面的なプラスチックの木と枝をねじ曲げて立体的になんとかするわけですがぁ~。
次に、着色ですが、この部分が凄い。単に色をぬるだけじゃなくて、「ハードゲル」という未知の高粘度水性ペーストを塗料に混ぜるわけです(ホームセンターにはないでしょうね。画材屋さんです)。すると、幹は如何にも幹らしく、なめらかな木肌になるというのですから、お釈迦様でもご存じないでしょうね。
最後はフォーリッジ(多分スポンジ)をそれらしく、葉っぱのような形で、盛りつけるわけです。色は紅葉ですから、朱色フォーリッジを使うわけです。なければ、朱色を塗る必要が生じます。
私が以上の精密極まる樹木製作に手を付けるとしても、多分途中で代用品をいろいろ使うでしょうね。すると、大抵は失敗します。
ハードゲル、これは余ったパテで電線を化粧して、乾いたら色をぬることでしょう。朱色のフォーリッジ、これは見つからなくて、結局朱色に染めたパウダーをばらまくか、直接朱色水溶液にスポンジをどぼっと浸けることでしょう。
手間と本人性格とのバランスで、いろいろ道はあるでしょうが、一応この記事はジオラマ製作の本流というか本道、正道なので、規範として勉強しています。
22:昭和の『鉄道模型』をつくる
その名古屋に、関西でいえば阪急、京阪、近鉄なみに有名な「名鉄」があります。一昨年、名鉄瀬戸線に乗って、瀬戸物の瀬戸はこのあたりと知った驚きがあります。
さて、名鉄瀬戸線からみると北側に愛知県犬山市があって、この動物園に名鉄のモノレールが走っている、という記事に引き込まれました。
詳しく言うと、名鉄犬山線に「犬山遊園駅」があって、そこから「名鉄モンキーパークモノレール線」がでていて、終点の「動物園駅」まで全長1.2km、走行時間3分間、「浮世離れした」「急カーブ」「急勾配」を、最高速度時速30kmで、45年前に造られた跨座式(こざしき)モノレールが快走する世界です。
出発したとたんに、禅・瑞泉寺(ずいせんじ)の山門を通過し、巨大楠の茂みの間を通り抜け、眼下のお墓に坊主の法要をながめ、97パーミル(1000メートルの間隔で97mの高低差:主要鉄道では25、登山鉄道などで50パーミルが限界)の急勾配で峠を上下、……。視界ががばっとひらけたら日本モンキーパーク。
近頃出色の臨場感のある「名鉄モノレール線」という記事に感動した次第。「乗ってみたい」と痛切な読後感でした。
(愛知県犬山市)
22:未来の図書館、過去の図書館
一般に図書館は図書から知識や楽しみを得るところと考えられています。私はかねがねこのことについて、不十分な感想をもっているのですが、そのことは過去に、さまざま書き散らしてきました。主に20世紀末の10年間でした。いずれその「不十分」と考えたことを、まとめる必要を感じています。
ここでは、図書館をどうとらえるかの「不十分さ」ではなく、知識や楽しみを得る点での、現在の図書館の至らなさについて話しておきます。図書館のあるべき姿は後日のこととして、今、なにが不満かについてメモを残しておきます。
まず、図書や雑誌記事や論文は、読んでみないと中身が分からないという不満があります。
もちろん、知識(楽しみ)とは、読みながらそれを受容していくことで、ひとつひとつ階段をあがるように、ページを繰るたびに自分の中で、内容が消化され血肉になっていくわけです。
それは分かっています。
この点では、読んでみないと分からないということは、読んでも理解できるか、楽しめるかは分からないという事も表しています。
1.何を読めばよいのか、何を楽しめばよいのか、わからない。
一番手強い「図書館存在」の脅威です。知識を得ることや、人生に読書の楽しみをみつけることに何の感興も持たない人の場合、それに対応できない図書館の至らなさと言えます。
これは逆に人はなぜ、知識を求め、なぜ小説や漫画やアニメや映画にのめり込むのかという点を、じっくり考察すれば、そうでない人への対応に、解があるかもしれません。
2.未体験のことで理解したい、自分はどんな物語を読めば楽しめるのか、知りたい。
「昭和の鉄道模型」が私の場合当てはまります。実は、小学校の時に少年らしくちょっと鉄道模型に興味を抱いただけで、そのご昨年初秋まで、鉄道模型には興味を持ち合わせていなかったのです。しかしなにかが引き金になってこの週刊誌を読みだした時から、「ジオラマ」を造るという未体験の世界に強烈な「知」への欲望をもってしまいました。
さてそのことで、一般的な図書館は、私にとって充分だったのか。
図書館に行けば、鉄道模型やジオラマの図書は確かにあります。しかし、まず何から何まで読めばよいのか、と言う点では至らなかったと思いました。図書や雑誌があっても、私になにが適切なのか、読む順番はどうなのか、そう言う点では、図書館と書店とでは区別がつかなかったのです。
一番気楽な解は、ジオラマや鉄道模型の世界を知っていて経験していて、なおマニアではなく、客観的に妥当な範囲でさまざまな図書や雑誌の内容を説明できるような司書がいたなら、私は満足したことでしょう。
3.インターネットという非・図書館
20世紀末に考えたことですが、インターネット(情報)とは野原や広場に、知識や楽しみが、図書や雑誌が、山のように積み重ねられた、野放しの情報ゴミ箱です。
そのゴミ箱から上手に「お宝」を拾い出すには、その人の知識や情感がきっちり整理され、ある程度の言葉を操る手技がないと難しいです。
検索サイトで示された上位ランキングに導かれて、行き着いても、成果というか満足感は数割あればよいほうです。寝言のような日記や、卑猥ふんぷんとした記事や、「お安くしますよ」「お得ですよ」という商売っけだけの記事で満ちあふれています。
その点からみると、インターネット情報については、図書館にもつ「至らないなぁ」という不満どころか、人を混迷に追い込む害毒と思うことさえあります。
ただし。
私のMuBlogがインターネットを使って寝言のような断片情報を公開蓄積しているのは、まぎれもない事実です。だからこそ、これまで図書館が築いてきた情報の整理方法や、今後の館(やかた)としての図書館と、インターネット上での仮想図書館について、古くて新しい課題をこれからも考え続けていくのです。
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