NHK篤姫(12)薩摩の話:さらば桜島
夜も9時をすぎました、というわけで、今夜は?
秀逸でした。
別れの一日だった、だけなのです。事件もなにもありません。セリフの過激さもありません。
強いて申せば篤姫と幾島の腹芸、いやそれに斉彬が加わりました。
姫の賢さでは。
後の久光と篤姫の囲碁対談、これが最初の方でうならせました。久光(斉彬の腹違いの弟)も相当な傑物だったわけですが、その彼が「兄上(殿)が、姫を選んだわけがわかりました」、というセリフに尽きましたね。たしかに見せ場なのです。碁石への愛おしさを姫が語り、その意味を截然と判断できた久光、それに深くうなずく斉彬。碁石の一つ一つが姫の家族、知り合いであり、薩摩の人であり、ひいてはこの世に生きる「人人」だったのです。言外に、「女」こそが碁石一つ一つを知り愛おしみ、布石することが似合っている、とまで言っているようでした。
わずか20の小娘が、幕末の英雄二人を相手にして、一歩も後に引かない名場面でした。
姫の切なさでは。
実の両親と対面しても涙を流さなかった姫が、尚五郎の対面を受け、大久保の母からの献上品「手まり」を受け取るあたりから、おかしくなりました。顔を伏せたまま、幾島の目も斉彬の目も、眼中にないかのごとく、涙涙涙。
ちかごろ気持ちよいほどの涙でありました。
泣かせようとして作られた場面ではなく、必然として、涙ながさずにいられない名場面でした。
姫の勝ち気さでは。
船が桜島、今和泉の領地を過ぎる頃、船内に入れと言った幾島に、姫は言い切った。
「幾島、わたしはそなたが嫌いじゃ」
「わかっておりまする」
「しかし、私は約束する。嫌いな者に対しての約束だから、私は破らない」
「はい」
「今日をかぎりに、薩摩を思って私は、二度と泣かない」
(そこで、ナレーション。その後30年有余、篤姫は二度と薩摩の地を踏まなかった)
嫌いだと、面と向かって言うのは珍しい。ないこともないが(笑)
嫌いな者だからこそ、約束するといった篤姫の気丈夫さ、一本気、勝ち気、すべてが船上の数分の場面展開で描かれ尽くした。
なかなかに。そう、秀逸なり。
事件もない、人も死なない、別れがあった。
もう一度申しておく。
泣かせるために作られた場面とは思わなかった。泣かざるを得ぬ必然があった。その必然は、一般ドラマなら「すじがき」にしかならなかったと思う。
だから、ロジックとして今夜のドラマを語ることはできない。何故佳かったのかも言い尽くせない。
今夜のドラマは出色の一夜でした。
追伸
幾島、人気が出るはずだと思いました。それが何故なのかは、言葉では言い尽くせません。
今夜で言うなら、今和泉の実家前で籠が止まり、姫がそれとなく別れを告げた頃合いをみて、再び腹の底から涌き出すような大音声で、幾島の「立ちませぇぃ~」。感動の一声でした。
再伸
今日の最後に、最近感じたことを二つあげておきます。いずれも新聞や週刊誌で得た情報や、自分で感じたことです。
☆NHK篤姫は、人気が高いようです
主に40代~の女性に人気があるようです。
何故なのかを考えました。この何年も、ホームドラマが少なかったのでしょうか(TVを見ないからわからない)。若い人達の色恋沙汰や、ちょっと桁外れにリッチなドラマが極端に多くて、40代の人達には入り込めなかったのかもしれませんね。
以前、ちょっと見かけたドラマで、なにかしら20代の新卒女性が東京の高級マンションに住んでいるのを見て、気持が悪くなった経験がありました。
その点、篤姫は薩摩で、同じ青春といっても、なにかしらほんわかとした若者群像が描かれていますね。
もちろん、謀略戦史戦略戦術組織論好きなMuですから、篤姫をうまく理解はしていないのですが、いつものMuとは違う世界と感じています。
ただし、篤姫自身には、正統的なすばらしさがあります。
賢いですね、意気地がありますね、ねじくれておりません。なかなか、よい役柄です。
☆出色の篤姫ポスター
NHKのサイトでみかけた篤姫の記念写真は、感動的な出来具合ですね。
せっかく引用しても来年には消えましょうが、この二枚です!
うむ、む。佳い! です。評価は秀です。
特に左写真が気に入りましたが、ふと別の想像。昔、スターウオーズを見たとき(巻名をわすれました)、お姫様が日本風の髪型と着物を着ていたのです。
それを思い出しました。
もちろんこの写真の篤姫の方が、数段似合っております。
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