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2008年3月 2日 (日)

NHK篤姫(09)薩摩の話:幾島の特訓

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 徳川家祥(いえさち)→家定、を堺雅人が演じている。微笑や声のトーンが良く現れていた。父将軍が亡くなったとき、遺骸に向かってネジを巻けば生き返ると言ったり、雨中の花に水をやったり、以前はマメをマスにいれて幕臣の前で食べていた。
 芳しい噂のない13代将軍になるわけだが、彼のもとに篤姫が輿入れするのが話の太いスジになっている。篤姫の将来の婿殿が堺雅人ならよかったろうに、家祥はこのころ心身虚弱な若様と思われていたし、事実そうだったのだろう。何らかの疾患はあったはずだが、この頃から徳川宗家はまだ150年ほどしか経っていないから、学術論文でない限りは、個人情報は書かない方がよかろう。

 ただ、こうもいえる。
 この頃の徳川将軍は、なるもならぬも辛い立場に置かれていたはずだ。ストレスの塊ではなかったろうか、と他人事ながら想像する。「大変な仕事」だったはずだ。
 どんな政治体制も、組織も、生まれた頃には考えるいとまもなく次々と切り開いていくことに忙殺されて、気がついたら寿命がつきていたという、生涯アドレナリン漬けで、あっけなく死ぬことも多かったろうが。
 じりじりと滅び行く、沈み逝く大船の場合は、眼前の案件をひとつひとつこなしていっても、すべて、打つ手打つ手が裏目にでる、じり貧状態に陥るだろうから、ストレスの質が異なる。
 と言うわけで、それを達観しているのか、惚けているのか、堺雅人の微妙すぎる微笑に魅入った。

 さて、篤姫と幾島の戦い。
 幾島は帰国した斉彬に、姫のことを「手の付けられないじゃじゃ馬」とよどみなく即答する。どうしようもなさは、篤姫のふてくされた顔や態度によく表れていた。

 幾島は、姫の何を特訓したのか。
 薩摩訛り。これは篤姫付きの育ての老女(菊本)をけなしたことになる。篤姫にとっては随分こたえる指摘だったろう。訛りは、今なら個性、その人の文化である。菊本と一緒に作った文化が19歳の篤姫を支えている。それを、幾島は否定した。
 立ち居振る舞い。これは、生来篤姫が元気な娘だったのだから、おしとやかに振る舞うのはつらかろう。
 言葉、発声。小声はいけない、独り言を言うな、つぶやくな。すべて家来にとっては聞き直せないのだから、困惑させることになる。これは妥当だろう。
 武芸、長刀。お腹に力が入っていない。この時の幾島の雄叫び(笑)は、往年の松坂慶子を知る故に、真に女優魂というものを味わった。松坂さん、立派だ、貫禄あると思ったよ。

 さて、斉彬(なりあきら)がなお篤姫を評価した点。
 それは、たしかに幾島の手に負えないじゃじゃ馬で、人前にだせる娘ではないのだが、物の考え方に、英明な斉彬とそっくり同じパターンをもっていた。合理的に先の先まで洞察する知力が篤姫にあった。何故自国で黒船に匹敵する船を造るのがよいのか。戦をしかけるのか? いえ、将来の恫喝に備えるためです、と。瞬間瞬間の立ち居振る舞いを枠にあてはめる姫様教育では得られない、生得の力を持った篤姫を、再度斉彬は評価した。
 斉彬が好ましく思うような合理的な考え方は、姫様教育では得られないのかも知れない。

 しかしそれでも斉彬が幾島の力を必要としたのはなぜか。もちろん篤姫を将軍御台所にするためである。おそらく、幾島の指導に耐えられない娘なら、江戸城大奥に入っても、混迷する将軍家を制御することはできないだろう、と判断したのかもしれない。真の実力があれば、どれほどのタガをはめても、首に鎖を付けても、飛び立つことができる。
 なんとも、斉彬、篤姫、幾島の三者の間に強烈な、核融合のようなイメージを味わった。

 来週も楽しみにしましょう。

追伸
 京塚さんの父親、そして肝付尚五郎さん、相変わらずしみじみとした味をみせていました。

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