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2008年3月 4日 (火)

嵯峨野鉄道図書館ジオラマ(03) 下地作りと下塗り

承前:嵯峨野鉄道図書館ジオラマ(02) ジオラマの基盤

 前回は、発泡スチロールで山や川や丘をつくって、あらっぽい仕上がりでしたが、基盤を作りました。嵯峨野の情景とは似ても似つかぬ地形なのですが、やはりそこに愛宕山があって、嵐山保津峡が流れ、そして中央図書館があるような幻視をえることができたのです。もちろん、線路には「嵯峨野鉄道図書館:二階建て図書館列車」が走っています。
 今回は、たとえコンセプト重視の本ジオラマ・プロジェクトでも、発泡スチロール整形だけでは物足りないので、お化粧を始めることにいたしました。
 まずは、ファウンデーションという次第です。

3-1:ボンド水溶液の練習

嵯峨野鉄道図書館3-1:ボンド水溶液

嵯峨野鉄道図書館3-1:桜を作る
 下地作りや下塗りに入る前に、ジオラマ制作に独特の「ボンド水溶液」を作り、それで桜花を定着する練習を事前に済ませました。
 どういう事かというと、生まれて初めてジオラマを作る今になって、その感触の一つを「ボンド水溶液扱い」と見たのです。「感触」というのは新たな世界に直面したとき、要点と思われる独特の手触り的な、「何か」をさしています。
 適当な霧吹き容器にボンドを1、水を3入れて、表面張力を消す為に中性洗剤を一滴たらして、よく振って混ぜました。これを、別途作成した桜樹と花に、たっぷり吹き付けたのです。花はスポンジの固まりですから、瞬間接着剤で一部接着しただけでは、ぼろぼろとこぼれ落ちるのです。これを乾くと透明になるボンドの水溶きで固定するわけです。

☆要点
1.ボンド水溶液は1:1とか、1:2とか、ボンドが比較的濃い方がよいという感触です。慣れた人は、普通1:3とか1:5とか水が多いようですが。薄いと水浸しになります。
2.少なめに作って、すぐに容器を水洗いしないと、目詰まりを起こします。
3.学生の過去作品には、癒し系の図書館が多く、植物を多用すると思います。ボンド水溶液霧吹き固定は便利な方法なので、スポンジ系植物などには、一度練習してください。

3-2:石膏布(プラスタークロス)での下地作り

嵯峨野鉄道図書館3-2:プラスタークロスと霧吹き

愛宕山の原型
嵯峨野鉄道図書館3-2:愛宕山の原型

プラスタークロスの切断
嵯峨野鉄道図書館3-2:プラスタークロスの切断

 嵯峨小学校での想いでの一つに、社会科か図画工作で、白ボール紙を等高線毎に切り抜いて貼って、ニスで仕上げた経験があります。さらに、新聞紙を切り刻んでノリを入れて鍋で煮詰めて紙粘土をつくり、これで愛宕山の模型を作った覚えがあります。そのあと絵の具で色づけし、乾いたらまたニスで仕上げました。
 今回、図書館全景模型を教材として作り、その作成過程を学生でもわかるように記事にしているのは、きっとそのころの、今となっては「美しく(笑)、楽しい思い出」を、司書卵に伝えたいからなのでしょう。多分、今時のヒトは、そんな原始的な工作を経験する時間もないままに、大学生になったんじゃないかな?
 さて、プラスタークロス。これは以下(写真説明でも)で丁寧にくどく説明しますので、ここでは「水と石膏布で下地を作る」、と頭に入れておいて下さい。

水を含ませ手で整形

嵯峨野鉄道図書館3-2:水を大量に含ませる

手で整形
嵯峨野鉄道図書館3-2:手で整形
 ごわごわしたプラスタークロスですが、霧吹きで水を噴霧し、手で押さえていくと実に快適に愛宕山の原型を作り出してくれます。
 布の裁断は、大きめが良いでしょう。そして端布がでても棄てずに、また隙間にぺたぺたと貼って水をかけるのです。本当に、おもしろいくらい良い曲線がでてきます。ヒトにもよりますが、継ぎ目なんかは気にしなくてよいでしょう。後で色を塗り重ねたり、パウダーをまくと分からなくなります。

☆要点
1.押さえ込みながら貼るのがコツですね。石膏がどろりと布を覆いだすのを見届けましょう。
2.水はしつこいくらい噴霧すればよいです。
3.下敷きに新聞紙などを敷いておき、終わったら雑巾掛けしておくと、テーブルが汚れません。

嵐山と愛宕山の下地完成

嵯峨野鉄道図書館3-2:嵐山の下地完成

嵯峨野鉄道図書館3-2:愛宕山の下地完成

 最初はうまく行くかどうか心配でしたが、写真の通り、よい味わいがでました。元々の発泡スチロールに、指で引きちぎるような成型をしたのが、微妙な山の稜線を造り出すコツでしょうね。

3-3:下塗り

嵯峨野鉄道図書館3-3:下塗り準備

嵯峨野鉄道図書館3-3:愛宕山と嵐山の下塗り正面

嵯峨野鉄道図書館3-3:愛宕山下塗り正面

 下塗りには普通画材屋で購入するジェッソを使うようです。いろいろ調べてみると、非常によい素材で、下地を調え、後で塗る発色を助けるとのこと。美術絵画作品には必ず使うようです。
 白ジェッソが画材屋(京都のロフトでした)にあったので購入しました。
 ところが、割合高価です。1リットルで1500円程度します。さらに、画材屋さんでないと売っていないようです。で、アバウトな私はホームセンターで水性塗料を購入しました。0.8リットルで900円程度ですね。たまたま私はホームセンターによく出掛けるので気楽だったわけです。
 これを下塗りにしました。(ところが、上塗りも色違いの水性塗料です!)
 まだ、下塗りとか上塗りの違いが分かっていないようですが、要するに一度ぬりよりも間隔をおいた二度塗りの方が、仕上がりがよいのだろうと想像しています。
 この「塗り」のアバウトさには、多分ジオラマ達人とか美術系学生が知れば、失笑するでしょうが、結局の所はコンセプト重視、時間と労力と資金とのバランスの中で決めました。

3-4:中央台地の処理

嵯峨野鉄道図書館3-4:中央台地の原型

嵯峨野鉄道図書館3-4:中央台地のPクロス処理

嵯峨野鉄道図書館3-4:中央台地下地完成

 ジオラマ全体を三つにわけて、左を「山と川」、真ん中を「中央台地」、右を「右台地」としておきます。
 この中央台地までは、プラスタークロスを用いて下地を作りました。
 普通は、山などの起伏ある部分をプラスタークロス他で丁寧に仕込み、そこも含めて全体を、別の「石膏プラスター」を水でこねて完全な下地をつくるようです。
 プラスタークロスとは布に石膏を付着したもので、水を含ませると曲線を綺麗にカバーしてくれます。
 石膏プラスターは、昔で言うと、紙粘土とか粘土の代わりでしょうか? 彫刻制作で使うものでしょうか。
 私は「石膏プラスター」で最後の仕上げをするところを、手抜きしました。理由は単純で、初心者には大がかりな作業で、疲れるという事情です。プラスタークロスだけだと、凸凹は表現できますが、布目が浮き出ておもしろくない未完成という感じになりました。

☆要点
1.起伏の多い山などは、プラスタークロスに水の霧吹きとか、キッチンペーパに濃いボンド水溶液霧吹きとかで、丁寧に下地を作る。
2.正しい手法ではさらに、石膏プラスターで完全な下地を作る。
3.図書館学教材作成の立場からすると、時間と労力と仕上がりのバランスをとって、一工程(石膏プラスター)を省略しました。そのためにリアルな仕上がりにはなりませんが、「コンセプト」を伝えるには妥当なところでしょう。

3-5:レールレイアウトの確認記録

嵯峨野鉄道図書館3-5:レールレイアウトの確認記録

嵯峨野鉄道図書館3-5:レール撤去
 レールレイアウトが初心者にしては複雑怪奇なので、一旦写真に収めて記録しておきます。
 まるっきり、レールの各規格は覚えておりません。総て分解したら、再構成ができないですね。
 ところで。
 普通の方法ですと、まずレールを基盤にきっちり組み込んで(釘やボンドで)、それからレールをマスキングテープで覆って、石膏作業や色づけをするようです。
 私の場合、時間と労力のバランスが切実なので、山や中央台地などはモジュール化(独立部品)して殆どの仕込みを終え、基盤全体の下塗りなどは、レールを取っ払って一挙に済ませる方法を採ってみました。
 この事のデメリットはいろいろ発生するでしょうが、なにかしら私は、ジオラマは初めてでも、幼児期から模型その他を経験してきたので、「登山するには、道はいろいろあって、ヘリコプターで頂上へいく道もある」という実にアバウトな考えに、押し切られた次第です。
 PC自作はこれでうまく行ったのですが、ジオラマとなると~?
 おそらく、繊細さに欠ける、コンセプトだけが露骨な作品になることでしょう。

3-6:まとめ
 下地、下塗り段階で随分手を抜いて、その上失敗もしました。形良くできた愛宕山(笑)も嵐山も、布目がでていてえもいえぬ味わいです。
 写真で見ると毒々しい山に見えますが、現物は可愛らしい物です。
 それと、この工程はなれないせいもあるのでしょうが、随分ダイナミックに疲れました。作業自体は工作なのでおもしろくて仕方ないのですが、多分肩に力が入りすぎて、ぎっこんばったんと手を動かしていたのでしょう。
 塗料はすべて水性なので無臭に近いし、気楽でしたが、ボンドも含めて、化学薬品のような物ですから、微妙な影響が脳や身体にあったのかもしれません。

 要するに、トータルに言いますと、粘土細工やお絵かきと一緒で、教材作成とは言っても、充分私も楽しめました。きっと、将来図書館模型を作る司書卵たちも、喜んで試してくれることでしょう()。

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コメント

 今朝確認したところ、MLA(森博嗣先生のblog)に塗料と塗装の記事がありました。アクリル塗料(水で溶かして、洗えるが、乾くと水に溶けない便利なもの)の事ではなくて、プラモデルに使うラッカー類の話でした。

http://blog.mf-davinci.com/mori_log/archives/2008/03/post_1730.php

 結論は、油性のラッカーやエナメルは扱いにくいが、仕上がりが最良となり、これを使う「プラモデル塗装」ほど難しい工作はないということでした。読んでいて、多分金属模型の塗料も、そうだと思いました。

 なお、MuBlogで言及した事情は、将来独自設計の二階建てトロッコ図書館列車を作ったときに、塗装が課題になるわけです。紙で練習して、プラスチック板で成型することになるでしょうから、色塗りは練習が必要になります。

 あるいは。
 PCで展開図を書いて色まで塗って、厚紙にカラー印刷して、クリアなラッカーとかニスとかで仕上げする方法もあると思いますが、どれにしても難しそうです。

 Nゲージの大きさでバルサ材などを使う事例をさがして、木製もよいですね。
 要するに金属製は無理だと諦めているのですが、色塗りだけは、なんとかしないと、かっこうわるいと思いました。

投稿: Mu:塗料と塗装 | 2008年3月 6日 (木) 09時00分

 ところで某日、屯所でせっせとジオラマを作っていましたら(すでに実物はだいぶ完成に近くなっています)、先輩の英文学教授が見学(笑)にこられて、立ち話。
 つまり、アメリカのホワイトマウンテンでは、山上まで汽車が登っているとの、話を伺いました。
(私が、愛宕山のケーブルカー図書館の話を、トーマス号を使って説明していた時です)

 アメリカらしい雄大な観光地のようですが、今朝ネットを探してみたら、あったので、記録しておきます。
The Mount Washington Cog Railway
http://www.thecog.com/

ついでに、ちょっと引用しておきます。
”The Cog Railway is set in the midst of the White Mountain National Forest with its natural and man-made attractions. It may well be the most unique vacation experience in all New England.”


投稿: Mu:ホワイトマウンテンの登山汽車 | 2008年3月 6日 (木) 10時18分

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受信: 2008年3月 9日 (日) 09時20分

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