嵯峨野鉄道図書館ジオラマ(03) 下地作りと下塗り
前回は、発泡スチロールで山や川や丘をつくって、あらっぽい仕上がりでしたが、基盤を作りました。嵯峨野の情景とは似ても似つかぬ地形なのですが、やはりそこに愛宕山があって、嵐山保津峡が流れ、そして中央図書館があるような幻視をえることができたのです。もちろん、線路には「嵯峨野鉄道図書館:二階建て図書館列車」が走っています。
今回は、たとえコンセプト重視の本ジオラマ・プロジェクトでも、発泡スチロール整形だけでは物足りないので、お化粧を始めることにいたしました。
まずは、ファウンデーションという次第です。
3-1:ボンド水溶液の練習
どういう事かというと、生まれて初めてジオラマを作る今になって、その感触の一つを「ボンド水溶液扱い」と見たのです。「感触」というのは新たな世界に直面したとき、要点と思われる独特の手触り的な、「何か」をさしています。
適当な霧吹き容器にボンドを1、水を3入れて、表面張力を消す為に中性洗剤を一滴たらして、よく振って混ぜました。これを、別途作成した桜樹と花に、たっぷり吹き付けたのです。花はスポンジの固まりですから、瞬間接着剤で一部接着しただけでは、ぼろぼろとこぼれ落ちるのです。これを乾くと透明になるボンドの水溶きで固定するわけです。
☆要点
1.ボンド水溶液は1:1とか、1:2とか、ボンドが比較的濃い方がよいという感触です。慣れた人は、普通1:3とか1:5とか水が多いようですが。薄いと水浸しになります。
2.少なめに作って、すぐに容器を水洗いしないと、目詰まりを起こします。
3.学生の過去作品には、癒し系の図書館が多く、植物を多用すると思います。ボンド水溶液霧吹き固定は便利な方法なので、スポンジ系植物などには、一度練習してください。
3-2:石膏布(プラスタークロス)での下地作り
愛宕山の原型
プラスタークロスの切断
嵯峨小学校での想いでの一つに、社会科か図画工作で、白ボール紙を等高線毎に切り抜いて貼って、ニスで仕上げた経験があります。さらに、新聞紙を切り刻んでノリを入れて鍋で煮詰めて紙粘土をつくり、これで愛宕山の模型を作った覚えがあります。そのあと絵の具で色づけし、乾いたらまたニスで仕上げました。
今回、図書館全景模型を教材として作り、その作成過程を学生でもわかるように記事にしているのは、きっとそのころの、今となっては「美しく(笑)、楽しい思い出」を、司書卵に伝えたいからなのでしょう。多分、今時のヒトは、そんな原始的な工作を経験する時間もないままに、大学生になったんじゃないかな?
さて、プラスタークロス。これは以下(写真説明でも)で丁寧にくどく説明しますので、ここでは「水と石膏布で下地を作る」、と頭に入れておいて下さい。
水を含ませ手で整形
手で整形
布の裁断は、大きめが良いでしょう。そして端布がでても棄てずに、また隙間にぺたぺたと貼って水をかけるのです。本当に、おもしろいくらい良い曲線がでてきます。ヒトにもよりますが、継ぎ目なんかは気にしなくてよいでしょう。後で色を塗り重ねたり、パウダーをまくと分からなくなります。
☆要点
1.押さえ込みながら貼るのがコツですね。石膏がどろりと布を覆いだすのを見届けましょう。
2.水はしつこいくらい噴霧すればよいです。
3.下敷きに新聞紙などを敷いておき、終わったら雑巾掛けしておくと、テーブルが汚れません。
嵐山と愛宕山の下地完成
最初はうまく行くかどうか心配でしたが、写真の通り、よい味わいがでました。元々の発泡スチロールに、指で引きちぎるような成型をしたのが、微妙な山の稜線を造り出すコツでしょうね。
3-3:下塗り
下塗りには普通画材屋で購入するジェッソを使うようです。いろいろ調べてみると、非常によい素材で、下地を調え、後で塗る発色を助けるとのこと。美術絵画作品には必ず使うようです。
白ジェッソが画材屋(京都のロフトでした)にあったので購入しました。
ところが、割合高価です。1リットルで1500円程度します。さらに、画材屋さんでないと売っていないようです。で、アバウトな私はホームセンターで水性塗料を購入しました。0.8リットルで900円程度ですね。たまたま私はホームセンターによく出掛けるので気楽だったわけです。
これを下塗りにしました。(ところが、上塗りも色違いの水性塗料です!)
まだ、下塗りとか上塗りの違いが分かっていないようですが、要するに一度ぬりよりも間隔をおいた二度塗りの方が、仕上がりがよいのだろうと想像しています。
この「塗り」のアバウトさには、多分ジオラマ達人とか美術系学生が知れば、失笑するでしょうが、結局の所はコンセプト重視、時間と労力と資金とのバランスの中で決めました。
3-4:中央台地の処理
ジオラマ全体を三つにわけて、左を「山と川」、真ん中を「中央台地」、右を「右台地」としておきます。
この中央台地までは、プラスタークロスを用いて下地を作りました。
普通は、山などの起伏ある部分をプラスタークロス他で丁寧に仕込み、そこも含めて全体を、別の「石膏プラスター」を水でこねて完全な下地をつくるようです。
プラスタークロスとは布に石膏を付着したもので、水を含ませると曲線を綺麗にカバーしてくれます。
石膏プラスターは、昔で言うと、紙粘土とか粘土の代わりでしょうか? 彫刻制作で使うものでしょうか。
私は「石膏プラスター」で最後の仕上げをするところを、手抜きしました。理由は単純で、初心者には大がかりな作業で、疲れるという事情です。プラスタークロスだけだと、凸凹は表現できますが、布目が浮き出ておもしろくない未完成という感じになりました。
☆要点
1.起伏の多い山などは、プラスタークロスに水の霧吹きとか、キッチンペーパに濃いボンド水溶液霧吹きとかで、丁寧に下地を作る。
2.正しい手法ではさらに、石膏プラスターで完全な下地を作る。
3.図書館学教材作成の立場からすると、時間と労力と仕上がりのバランスをとって、一工程(石膏プラスター)を省略しました。そのためにリアルな仕上がりにはなりませんが、「コンセプト」を伝えるには妥当なところでしょう。
3-5:レールレイアウトの確認記録
まるっきり、レールの各規格は覚えておりません。総て分解したら、再構成ができないですね。
ところで。
普通の方法ですと、まずレールを基盤にきっちり組み込んで(釘やボンドで)、それからレールをマスキングテープで覆って、石膏作業や色づけをするようです。
私の場合、時間と労力のバランスが切実なので、山や中央台地などはモジュール化(独立部品)して殆どの仕込みを終え、基盤全体の下塗りなどは、レールを取っ払って一挙に済ませる方法を採ってみました。
この事のデメリットはいろいろ発生するでしょうが、なにかしら私は、ジオラマは初めてでも、幼児期から模型その他を経験してきたので、「登山するには、道はいろいろあって、ヘリコプターで頂上へいく道もある」という実にアバウトな考えに、押し切られた次第です。
PC自作はこれでうまく行ったのですが、ジオラマとなると~?
おそらく、繊細さに欠ける、コンセプトだけが露骨な作品になることでしょう。
3-6:まとめ
下地、下塗り段階で随分手を抜いて、その上失敗もしました。形良くできた愛宕山(笑)も嵐山も、布目がでていてえもいえぬ味わいです。
写真で見ると毒々しい山に見えますが、現物は可愛らしい物です。
それと、この工程はなれないせいもあるのでしょうが、随分ダイナミックに疲れました。作業自体は工作なのでおもしろくて仕方ないのですが、多分肩に力が入りすぎて、ぎっこんばったんと手を動かしていたのでしょう。
塗料はすべて水性なので無臭に近いし、気楽でしたが、ボンドも含めて、化学薬品のような物ですから、微妙な影響が脳や身体にあったのかもしれません。
要するに、トータルに言いますと、粘土細工やお絵かきと一緒で、教材作成とは言っても、充分私も楽しめました。きっと、将来図書館模型を作る司書卵たちも、喜んで試してくれることでしょう()。
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コメント
今朝確認したところ、MLA(森博嗣先生のblog)に塗料と塗装の記事がありました。アクリル塗料(水で溶かして、洗えるが、乾くと水に溶けない便利なもの)の事ではなくて、プラモデルに使うラッカー類の話でした。
http://blog.mf-davinci.com/mori_log/archives/2008/03/post_1730.php
結論は、油性のラッカーやエナメルは扱いにくいが、仕上がりが最良となり、これを使う「プラモデル塗装」ほど難しい工作はないということでした。読んでいて、多分金属模型の塗料も、そうだと思いました。
なお、MuBlogで言及した事情は、将来独自設計の二階建てトロッコ図書館列車を作ったときに、塗装が課題になるわけです。紙で練習して、プラスチック板で成型することになるでしょうから、色塗りは練習が必要になります。
あるいは。
PCで展開図を書いて色まで塗って、厚紙にカラー印刷して、クリアなラッカーとかニスとかで仕上げする方法もあると思いますが、どれにしても難しそうです。
Nゲージの大きさでバルサ材などを使う事例をさがして、木製もよいですね。
要するに金属製は無理だと諦めているのですが、色塗りだけは、なんとかしないと、かっこうわるいと思いました。
投稿: Mu:塗料と塗装 | 2008年3月 6日 (木) 09時00分
ところで某日、屯所でせっせとジオラマを作っていましたら(すでに実物はだいぶ完成に近くなっています)、先輩の英文学教授が見学(笑)にこられて、立ち話。
つまり、アメリカのホワイトマウンテンでは、山上まで汽車が登っているとの、話を伺いました。
(私が、愛宕山のケーブルカー図書館の話を、トーマス号を使って説明していた時です)
アメリカらしい雄大な観光地のようですが、今朝ネットを探してみたら、あったので、記録しておきます。
The Mount Washington Cog Railway
http://www.thecog.com/
ついでに、ちょっと引用しておきます。
”The Cog Railway is set in the midst of the White Mountain National Forest with its natural and man-made attractions. It may well be the most unique vacation experience in all New England.”
投稿: Mu:ホワイトマウンテンの登山汽車 | 2008年3月 6日 (木) 10時18分