NHK篤姫(04)薩摩の話:信賞必罰と融和策
ここしばらくは家庭ドラマの様子で進むようですね。Muはそれも一興と思っております。今夜は帰国した藩主斉彬(なりあきら)が島津分家の面々と面談する日でした。終盤の江戸城開城まで道のりは長いですが、その間話は薩摩、京都、江戸と回っていくのでしょう。落ち着いて見ていきたいと思いました。ここしばらくは、薩摩の情景、主に桜島の姿や武家屋敷が珍しくて、地図を眺めてきました。
鶴丸城跡:鹿児島県・歴史資料センター黎明館
鹿児島県鹿児島市城山町
詳細HP:黎明館
信賞必罰と力の行使
みどころは、藩主となった斉彬が、自分を排斥しようとした父斉興(なりおき)派(腹違いの弟・忠教(ただゆき)=久光)の取り巻きと、その間罪に服した斉彬派の、処遇の問題にあった。たしかに、父が遠島、本人は謹慎の大久保利通らが、そのままになっているのは、Muも不思議に思えた。一方、斉興派の重臣はそのまま役を継続するとの沙汰が下った。
このことを篤姫は疑問に思い、四分家が斉彬と面談した日の最後に、斉彬に食い下がる。
斉彬は言う。力に対して力、刃(やいば)に対して刃、いずれも一時はことが制せられるが、必ず憎悪を生み、別の刃が飛び出してくる。今は、薩摩が一致団結しなければ滅びる。わしを信じられないなら、国をでよ。と、斉彬はまだ17歳の篤姫に怖い顔をして言う。
なぜ父斉興が下した斉彬派の家臣への罪をすぐに解かなかったのか。
なぜ父斉興派の重臣をそのまま継続登用したのか。
謎は原作にも頼らず、史実にもよらず、この大河ドラマの中で解かねばならない。ドラマは原作とも史実とも違った別の世界なのだから。
Muなりにそこを、ドラマ中から考えていた。少なくとも斉彬の篤姫に対する説明だけでは納得できなかった。
おそらく。篤姫が言ったように、父斉興への遠慮があったと思う。その解釈に関わってこよう。
(1)父親が下した裁きは、切腹という取り返しのつかない者も含めて、当時の藩のルールとして処断されたわけだ。いわゆる私刑ではない。重臣が公に関わって行った。たしか、江戸家老も一人切腹したはずだ。
要するに今の観点は別にして、当時は詮議があったなかったというよりも、正統な主命によったものだ。
(2)先代の仕置きであったとしても、正統な主命を日ならずしてやすやすと覆すことは、70万石を超える大藩では難しいことだし、もしそこで再度裁可を変えると、またしても、切腹遠島蟄居数十名の規模になる。正しきを糺すは、どこの国でも昔から倫理としてあったわけだが、「綸言汗の如し(りんげんあせのごとし)」という言葉があるように、下された裁可は元に戻らないのが現実だ(一旦出た汗はもどらない)。
(3)政治はバランスにある。報復人事は悪しきバランスの典型であり、力に対して力をむけて報復すると、再び反動がある。それをじっくりゆっくり調整するほどのゆとりは、当時の薩摩にも日本にも無かったのだろう。おそらく、斉彬は江戸の老中と、日本国をどうするかで頭が一杯だったと思う。薩摩で騒乱が起きるのは避けたかったはずだ。
(4)想像する結論。Muが政治家なら、じわじわと先代斉興(なりおき)が下した裁可を取り消し、切腹した家には再興や見舞金を出していくだろう。そのまま登用された過去の重臣も、じわじわと斉彬派に変えていくだろう。人は時間の中で生まれ生き死んでいく。だから同じ結果を出す場合も、即決と遅延とがあって、どちらのやり方をとるかは、時と場合とリーダーの資質によろう。もしも織田信長なら、即決を選び、家康ならじわじわと変えていくことだろう。
(5)というわけで、篤姫が言った、斉彬の父への遠慮とは、間違ってはいない。ただし、その間に将来を見据えた名君斉彬の相当に高度な政治的判断があって、その結果は万民がすぐにわかるような単純なものではないだろう、ということだ。米価を下げるのは分かりやすいことだが、70数万石の大藩経営と日本国経営と、二つを肩に背負った斉彬の政治感覚は、ほとんど理解されないと、思った。
篤姫の剽軽さ、気性の柔軟性
姫の剽軽さとか、表情の変化がとても楽しかったです。
父親から、登城するための挨拶練習を仕込まれる画面が、思わず笑いました。父親の口まねをして、その父親がまた17歳の少女の声色(こわいろ)で挨拶したり、なかなか楽しい場面でした。
篤姫の表情は、笑い顔、怒った顔、すねた顔、しょげた顔。ゆたかに次々と雰囲気が変わっていきました。
もっといろいろありましたが、ちょっとキーボードに疲れました(笑)。まだまだ先は長いです。今夜のMu談議はこれにて、一件落着。
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