小説木幡記:2008/01/02(水)昨夜は寝台特急・カシオペアで「相棒」を見る
昨日の元日は、終日ぼんやりしていた。なにか読書しながら居眠りしていた。予定とか時間予約なしの正月は極楽だなぁ。人にも自分にも「スケジュールをきっちり立てろ!」と日頃叫んでいる自分がアホにみえてなぁ。馬鹿馬鹿しいロボット人生じゃなぁ。
亡きマタリン君だって、ひながぼんやりしていた。寝てばかりいるからネコだなんて、本当なんだ。何時何分に、ご飯食べるとか、トイレに行くとか、MuBlog書くとか、葛野へ出勤だなんて彼が思っていたわけがない。
元日の夜からミステリー・ドラマ「相棒」と、これは昨年も同じだった。ちょっと2007年の正月記録をみたら、ありましたね。「正月の二日目」
昨夜もついふらふらとTVの前ににじりより、あとは終わるまでかぶりつき、なんかMuって本当に「することない、暇なオジキ」だと、客観視。よいよい。たのしんだのだから、と自らをなぐさめたとさ。
1.寝台特急カシオペア
昨夜「相棒」で一番に驚いたのは、この日本に16時間もかけて、東京上野から札幌まで走る夜行列車があって、しかもその仕様が、クリスティも驚く、オリエント急行(殺人事件)よりも豪華なシティーホテルみたいな個室になっていて、王侯貴族のお召し列車と同じだなんて。
目が点になった。
TVとかミステリ小説って、こういう日常性を離れた場面が必要なんだ、と日曜作家は深く反省した。あまりのすごさに「一度乗ってみるベイ」と、朝からネット探索したら、サイトはあったけど、うむむ。宝クジあたったとき世界だね。
お値段をみてみたら、片道で3万円強。ところが、一人取材はゆるされなくて、かならず相棒料金がいるという注記にがっくりした。つまり、必ず二人分の寝台料金、特急料金が必要。早い話、二人で行けば複雑じゃないのだが、一人だとものすご割高。いや、これはホテルの部屋料金と考えれば、それでよいのだと、一応納得したがな。
夕食はフレンチで予約の8千円弱。う~。取材経費は日曜作家の場合、どこからも出ない。これでは無理だな、と諦めた。(しつこい性格だが、駄目とおもうと諦める潔さもあるのよ)
上野から計算しただけでも、一人カシオペアに往復乗るだけで12万円ほどかかる。これだけあれば倶楽部の連中に毎月腹一杯回転カッパ寿司を支給できるじゃないの。そのうえ京都から新幹線のぞみに乗って上野・夕方4時過ぎのカシオペアまでたどりつくなんて、ものすご贅沢というか馬鹿っぽい行為に思える。
別の事件現場になったホテルもついでに検索した。洞爺湖だった。地理にうといから、洞爺湖が北海道のどこかもわからないまま探してみたら、どうやら「洞爺パークホテル天翔」らしい。ここで、最後の見せ場があった。
馬鹿馬鹿しい世間と、自分を鎮めながらも、どうにも魅力のあるカシオペアだった。
以前、京都から佐渡に行ったとき、一番安い寝台列車に乗って、なんか牢獄というか、拷問部屋の思いがしたが、よく眠った。だから、カシオペアに乗っても、楽しむより先に眠りそうで、これももったいない話。
列車は自分だけじゃ走れないようで、必ず昔懐かしいゴツゴツした電気機関車が索引していたなぁ。JRの記事にもあったが、途中(青森)辺りで業務停車して、そのあたりで前と後が入れ替わるらしい。乗客には関係のないことだが、なぜ北海道行くにはそういう仕掛けが必要なのかは、今日時点ではわからなかった。(マニア世界では当然の話かもしれないが)
2.相棒
「寝台特急カシオペア殺人事件:上野~札幌1200kmを走る豪華密室」というタイトルだった。結論を先にいうと、「よかった」。二時間半程度だったが、目が話せなかった。ずんずんと引き込まれていった。もちろん何カ所も鼻白らむ所もあったが、それはまあMu一人の勝手な好き嫌い。
内容は、ネタバレになるんだろうな、普通に記すと、これも。
そうそう、DVDになるはずだから、やはり日曜作家としては業界に仁義を切って、詳細は言わないでおこう(あはは)。しかし、帯情報程度はな。書いておきましょう。でないと、Muが来年になると忘れてしまう。
☆☆☆
東京のどっか繁華街で指名手配されている若者が雑踏の中を走っていく。それを数名の怖いオジキたちが監視TVで眺めている。若者を追っていく刑事たちと、それを眺めているオジキたちとは、お互いに相手が何者かはわからない。
追われていく若者以外にも、別の男がこそこそと逃げている。
最初の指名手配された若者が突然壮絶な爆死をする。別の男が参考人として警察に連れて行かれる。
杉下右京(水谷豊)警視と相棒の亀山薫(寺脇康文)刑事は、その参考人を札幌まで、カシオペアで護送するはめになる。
ところが、カシオペア号という走る密室で殺人が起こった。乗客はみんな身分を隠した者ばかりで、有名人たちもちらほら。右京はそれを手際よく解決した。しかし、手際よく解決したことこそが、実は別の犯人の目論んだ仕掛けだった~。
うむ。
よい脚本やね。もちろん過去に絡む事件だから、その登場人物達の過去をどう解釈するかで意見は分かれるところだろう。しかしフレーム(枠組み)としては、実に堅牢なものだった。堅牢だが、予定調和的にドラマが進まなくて、話が大きく二段構えになっている。見ようによっては、はらはらどきどき時計のアクロバットなのだが、それががっしりと、結論に運んでくれた。
もし、Muならば、犯人の動機をもうすこし別の風に味付けしたいね。現代の若い連中だと、その動機を聞いてもぽかんと口を開けたままになるのも、数割おるだろうから。
3.まとめ
ところで、Muは、最初の犯人はわからなかったが、主役犯人(こんな云い方あるかな)は、すぐに分かったぞ! うむ、まだ衰えてはおらん。ただし、なぜそうなったかは、なかなか分からなかった。
カシオペアというMuのような庶民には別世界を舞台にして、オリエント急行殺人よりも、もうすこし分かりやすく乗客達の欲望を描き、そこに目が行っている間に別の大きな事件が背景でちゃくちゃくと時限爆弾のように時計を進めていく。
実に、正月そうそう、よいミステリを味わいました。
もちろん、日曜作家Muには絶対に書けない世界ですね。せいぜい、京阪電車宇治線ただ乗り殺人事件、程度でしょうかぁ。
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コメント
本年もよろしゅうに
ブロッグ連歌師仲間に新年の挨拶を、と昨日は途中でつい飲みすぎて・・・。
今日、元旦二日目も朝も早よから飲んでおります。
このところMuBlogは快調ですね。
記事連発でコメントするいとまもありませぬ。
Mu大兄、絶好調とお見受けします。
対してコチラはどういう訳かスローライフが板についてきた感じです。
2008年になったし、北京オリンピックもあるし、少しはたるみきった、甘やかされたままの体にカツを入れてやろうかと思っております。
快調が過ぎると必ずお休みになるのがMu大兄の常故、すこ~し快調ぶりが心配にもなる今日この頃です。
ご無理をなさらぬよう、たまには体を休めて下さい。
キーボードから離れてデジカメやらビデオカメラに仕事さす、いう手もございます故。
投稿: ふうてん | 2008年1月 2日 (水) 11時27分
ふうてんさん、こんにちは
年末はJoさんの鞄持ちをしておりました。
MuBlogが快調にみえますか? 木幡記とか葛野記は、実は幾分心身をいとった結果ですよ。ああいう記述は約1時間ですべて完了だから気楽なんです。
それにくらべてシリーズものはどれもこれも、数日前から写真やビデオや、以前の形式を確認したりで、一作につき、多分6時間くらいみっちり時間がかかっていますよ。
だから、シリーズは常時並行して書く必要があって、今掲載したならバックに数点完成したものとか、間際とかがないと、途切れてしまいます。
そう言うわけでして、なかなか平日ブロガーはシンドイですよ。
しかし、「ふうてんblog」みたいに、逆に一週間に一作というのも、禁欲的で、なかなか真似の出来ないことです。
リズムというか、ノリというか、流れにのらないと心身おかしくなりますね。
今年もよろしく、MuBlogを。
さらに、めなみへはご招待しますから。めなみと珈琲程度なら、Muでも遠来の友を歓待できます。ぜひ冬の京都へおこしやす。
投稿: Mu→ふうてん | 2008年1月 2日 (水) 17時48分
観ましたよ!
昨年、家内が私とカシオペアで北海道を往復するツアーを申し込んでいましたが、スケジュールの関係でキャンセルした経過があります。
Muさん、是非、世界一周を船旅で優雅に過ごす日本郵船の”飛鳥”の旅は1千万ですよ。ミステリー小説の舞台としてはおもろいと違いますか?
小説を書くにも軍資金が必要ですね。
投稿: jo | 2008年1月 2日 (水) 23時14分
北海道にも東北にも住んだことのある伽羅です。
寝台特急での北紀行は風情があって好きです。
伽羅は「北斗星」には何度か乗車していますが、「カシオペア」はまだ乗ったことがありません。
北海道への寝台特急を利用するなら、往復鉄道でなくても、片道でもいいと思います。
その場合、「北への往路」に乗車されることをお奨めします。
できれば日の長い時期がいいですね。
冬場だと乗車してすぐに日が暮れてしまうので、移りゆく車窓の景色を楽しむことが出来ません。
夏場ならば、ゆっくり暮れてゆく景色を楽しめます。
また北紀行の往路をお奨めするのは、
明け方から朝にかけて青函トンネルを抜けてからの、
北の大地の景色が素晴らしいからです。
とくに函館~長万部間の駒ヶ岳あたりの景色は最高です。
食事は、北斗星でも8000円弱しますし、
普通のレストランならばあの値段出せば、もっと豪華なものが食べられるとは思いますが、
ケチって弁当持ち込みなどすると、旅の楽しみは半減してしまいます。
やはりダイニングでいただいたほうが優雅だと思います。
そのためにはやはり同伴旅がいいですねぇ。
Mu御大臣様の取材旅行の折には、ぜひ一声おかけください。鞄持ちいたしますです(笑)
投稿: 伽羅 | 2008年1月 3日 (木) 01時52分
Joさん
さすがですね、カシオペア殺人紀行を予定にいれておられましたかぁ。
そのときこそ、ドアボーイで同伴させていただければ、実にありがたいです。ドラマを観ているとドアは手動でしたから、わたくしめが、常時ドアの開閉をさせていただきます。
で「飛鳥」船旅ですね。これは数年前に、内田康夫先生がちゃんとミステリ仕立てになさっておられます。ざんねんですなぁ。
Muもやがて、先述の、「京阪電車宇治線ただ乗り殺人事件」に手を染めますので、それでよいでしょう。あらすじは、まだネタバレしたくないので、こんどまた物語ということで。
投稿: Mu→Jo | 2008年1月 3日 (木) 05時29分
伽羅さん、まいど。
本当にネット人士は多才ですね。
まず北海道や東北で生活されたという経験は、Muからみるとまぶしいような多才さです。
想像では、大きな企業とか国の機関にご家族ないし伽羅さんが属していたなら、あり得ますが。
どなたかは存じませんが、現代では「東京に生まれる」ことが才能の一つ、と言うてましたが、Muに言わせれば、諸国を巡遊することが才能の一つと思えます。たとえそれが、社費旅行であれ、官費旅行であれ、得難い経験ですね。
寝台特急北斗星による、委細を尽くした旅のノウハウ、ありがとう御座いました。
日の長い夏、往路北行がよい。多分帰路は飛行機か新幹線かフェリーでしょうね。
圧倒的にダイニングルームの使用がよい。旅情がいやまさるわけでしょうね。
そして同伴者。
うむむ、これが一大問題。
鞄持ちというても、秘書というても、助手というても、若き女性を同伴したとなると、一大珍事、大問題に発展し、国会が解散、わが倶楽部崩壊になりますからね。
しかしそういう大問題も、作家に変装したガクトや、行商人の勘助がいて、伽羅さんは実はガクトとお忍びで会うために、葛野村の教授秘書に身をやつして、……、という一大異常事の影に隠れて雲散霧消。
ともかく、ミステリは何とでも設定できますから、想像するだけで、お腹いっぱいになります。
では、よいお正月を(ああ、今日は三日ですね)
投稿: Mu→伽羅 | 2008年1月 3日 (木) 05時47分
明けましておめでとうございます♪
新年のご挨拶が、3日になりましたこと、申し訳ございません。
昨年の『MuBlog』では、Muさんの知らない一面をうかがい知った気がします。
創作者としてよりも、TVドラマ解説者として、名を上げられました。『風林火山』は、内野勘助さんが出ていたので、毎回欠かさず見ておりましたが、Muさんとは少し違った思いも持っておりました。内野さんご自身が、大河では(けれん味)を出したとおっしゃっていましたが、そのけれん味が私にとっては違和感がありました。
『MuBlog』創刊からの読者としましては、もう一度、ブログを読んでドラマではなく、作品を読みたくなったという記事も書いて欲しいなと、あつかましいことを考えております。http://blog.livedoor.jp/ki_718_hokamo/archives/26128142.html
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
投稿: ほかもどり | 2008年1月 3日 (木) 10時46分
謹賀新年、ほかもどりさん
今年もよろしく。
古都奈良の隅々までの記事、蓄積された様子は圧巻でした。ちゃりでなにげなく行くという様子が実におっとりしていて、気持がよいです。
よい記事を続けてください。
追伸
MuBlogについてのお考えについてですが。
日曜作家という創作者であるかぎり、文学評論は難しくなり、心身壊します。
だから最近少ないのは保身でしょうね(笑)。
それと下世話なたとえですが、自分の子供に手を焼いているときは、人の子供(作品)には気が回らなくなります。
なにかを完成したとき、おもむろに手をのばすのが、Muにとって最良の文学になり、そこで至福を味わいます。
また、TV日曜解説者である自分の資質も昨年は知りました。1時間でドラマのことを書けるのですから、呻吟してたった原稿5枚なのに3時間見直すことに比べたら、ドラマ解説こそ本当の楽しみだと自覚しています。
TVドラマ解説は息をするように書けます。不思議です!?
幼児期から芝居や工作がすきだったのだから、多分先祖返りだと思っています。
では
投稿: Mu→ほかもどり | 2008年1月 3日 (木) 18時27分