NHK風林火山:後日談→勘助、由布姫、ガクト
承前:NHK風林火山(50)川中島・山本勘助の最期(3):放映直後
風林火山の総集編がいつなのか探したら、大晦日の午後になっていた。録画するつもりだが、見る機会は訪れないと思っている。それは否定的な気持じゃなくて、一年間毎週日曜の夜にTVにかじりついていたのだから、充分心身の滋養になった、ということだ。これ以上摂取すると栄養過多になる。
十日ほど前にまとめたとき、山本勘助、由布姫、ガクト謙信だけは記さなかった。たいした理由ではないが、一息で描けなかった、要するに息切れすると思ったからだろう。それを今朝は少しでもメモとして残しておく。すでにだんだん記憶が薄れていき、今の内に描いておかないと、来年になったら真っ白になってしまうからだ。記憶として、想念としては未来永劫残っていても、記録文章にすることが出来るのはわずかな期間しか、私にはない。それを過ぎると純粋の創作になってしまう。
さて勘助・内野
内野さんという役者は有名な人のようだ。私が春まで知らなかっただけのこと。
印象深いのは、他のドラマで素顔らしい場面を見たときに、おもいのほか姿形顔形に特性が薄い感じがした。特徴を言葉でも印象でも言えない役者って、ものすごく特殊なんじゃなかろうか。
しかし、それで主役はるっていうのは、なにかあるのだろう。
その何かに一年かけて気がついた。内野・勘助は、山本勘助その人になっていた。実在の勘助に会ったわけじゃないから、なにが実像なんかはわかるはずはない。ただ、小さなTV画面に、勘助は勘助その人として湧出してきたわけだ。
つまり、この一年間、内野という役者はどこにもいなくて、山本勘助がNHKのスタジオや信州のロケ地に実在したのだろう。
ここから導かれる真実は、役者・内野は、おそらく何者にでもなれる、化身する、希有な役者なのかもしれないという仮説だ。だから平成に生きる生身の内野は、何者でもない。個性がない「人」なんだろう。おそらく、実在の彼に京都の町中で出くわしても、何も感じない予感がする。彼は、役を背負ったときだけ、その役になる人なんだ。
軍師になってからの、黒の鎧兜に隻眼姿が強烈な印象として残った。終盤では、坊主頭が似合っていた。
勘助はこれ以上ないほどに醜い男と、今川義元なんかにさんざん言われ続けたが、それでも諏訪の美少女に激烈に好かれたのだから、男って顔じゃないよね。あはは。
ところで由布姫・柴本
この姫しゃまのことは、MuBlogでは以前に掲載した以上には、記すことはないね。他のblogを見る機会がないのでよくわからないが、同性からはどういう目で見られているのか、わかりにくい。確かに美しい女とは思うが、その後に続くオーラとなると、表現しがたいし、男達が由布姫のオーラをどう感じたのかさえ、わかりにくい。私は日常では、男達と女性の話はまったくしないほうだから、男達がどう考えているのかも知らない。まして、女達が由布姫をどうみたのかも、うむ、わからないなぁ。
ここではまとめとして、どう見えたかを一つのMu事例として記録しておく。
聡明で勝ち気で複雑で、男性的思考で、美しい。中性的な雰囲気だな。他の女優にはない一種の神秘性を味わったが、それは諏訪の巫女という役柄と柴本の資質が合致したからだろう。卑弥呼でもやってくれたら、MuBlogは数年間その記事でうめつくされるだろう(爆)。
京都の町で彼女にであったら、無意識に、教え子相手のように「ゆうさん、こんな所で何してるの?」と、言ってしまいそうで怖いね。ストーカ扱いされたら、困る脳。
柴本幸、えがたい女優だと思った。
ともかくガクト
MuBlogを振り返ると、結局「ガクト」という鍵語での検索の山、熱烈ファンも多かったので、語りにくいね。もちろん勘助や由布姫もあったが、なんか、「ガクト」という鍵語にはファンの「怖さ」が含まれていたよね。変なことを書くと、夜道を歩けない恐怖だったぁ~。
ただ、Muがそもそも風林火山を昨年か一昨年に知ったとき、最初に興味をもったのは「ガクト」が出演するという記事だった。これは保証する。つまり、ガクト故に「こりゃ、一年間みないとぉ」と、思った。
そういう点ではNHKの企画とMuの考えは合致していたような気がする。ガクト出演はあらかじめ仕組まれたNHKの罠だったんだ。だから、由布姫は、なんとなく当初は洒落だったのじゃなかろうか。つまり、まだ世に出ていない美しく若い手垢のついていない女優を、「見付けた」、失敗しても勘助や信玄や謙信の戦上手で逃げ切ろう、という魂胆だったのかな。
ガクトのノリはよくわかる。背後に熱烈強烈なファンがいる。それは以前の紅白で証明すみのことだ。それが時代劇でどうなのかは、これは英断だったろうな。
で、結果はまるで絵に描いたようにはまった。様式美という、Muが義経の時にさかんに用いた用語は、ガクトの場合、全てに成功した。じっくりと、押さえ込んでいくようなセリフ、目の狂気と鋭さ、背景の絵、コスチューム、蒼い鎧、白馬、……。もう、記す必要もないほどに、風林火山にガクトという色彩を乱舞させた。
たしかに、美しいと思った。
もちろん、「妖」という文字がMuの脳裏に渦巻く。結局、NHK関係者の罠にMuは嵌ったのだから、これ以上言うことも無かろう。人の好いMuなんだからさぁ~。
いろいろ
真田さんや、板垣さんや、いろいろ語り残したことも多いのだが、それはまた思い出した頃にでも。
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コメント
「風林火山」は、これから後も、
大河ドラマの成功例の代表的なものとして数えられるでしょうね。
内野聖陽さんに関して、
「役者・内野は、おそらく何者にでもなれる、
化身する、希有な役者なのかもしれない」という
Muさん意見に賛同いたしますッ。
数年前に上戸彩主演のスポ根ドラマ
「エースをねらえ!」というのが放映されてましたが、
その中の重要キャラクター「宗方仁コーチ」役を内野さんが演じてました。
内野さんが、漫画で長らく連載されてきた宗方コーチのキャラクターに
雰囲気がそっくり似ていたので、私も大変驚きました。
素は全然違うのに・・・・
内野さんはものすごく役を作り込んでゆく人ですね。
その役そのものに化身してゆくというか、
内野さんが化けるのか、役どころが憑依するのかわかりませんが、
外見もそっくりになってゆきます。
こういうのをスピリチュアルカウンセラー江原啓之氏に言わせると、
人間の霊体エネルギーであるエクトプラズムを用いて
顔かたちもそっくりにしてゆくことの出来る名優なのだそうです。
他には中井貴一さんがそれに相当するそうですが。
内野さん、ほんとうにナリキリ役者さんだと思います。
投稿: 伽羅 | 2007年12月29日 (土) 07時56分
続いて 姫しゃま・・・!について
NHKサイドとしては「風とともに去りぬ」の
スカーレット・オハラの雰囲気がある女優を探していたそうですから、
そういう意味ではドンピシャだったのでしょうね。
最初キャストが発表された時には、
同性から見て、特別際立って美しい女優さんという感じはしませんでしたが、
柴俊夫、真野響子夫妻の一人娘だけあって、
品がある、芯のしっかりした感じがしました。
ミツが可愛げがあって親近感の持てる作りだったのに対して、
姫しゃまは対照的に、強い、硬質の、凛とした、
寄らばはじくぞよ!の雰囲気がありました。
将来的には、凄みのある役を演じたら、
相当いけるのではないかと思われます。
念、あるいは念の昇華した久遠の慈悲のようなものを
表現できる女優さんではないかと思われます。
それにしても大河を一年間見続ける要素として、
男性だけでなく女性としても、
女優陣の見た目の美しさや、
その役柄や演技に対して共感がもてるかどうかが、
大きく関わってきますね。
投稿: 伽羅 | 2007年12月29日 (土) 08時17分
三連続投稿させていただきます。ご容赦を!
私も風林火山を見ようと思ったのは、
予告などで見る内野・勘助が、なかなかいい感じに仕上がっていたこともありますが、
なんと言ってもやはりGacktが出るから・・・
とにかく大河のGacktを見てみたいという興味が大きかったです。
別にGacktの熱烈ファンではなかったですが、
終わってみて、しっかりGacktファンクラブに入会してました(笑)
私は第一回川中島の戦いに出陣する時の
景虎の名セリフ「運は天にあり、鎧は胸にあり・・・」
あれを録画を見ながら何度も真似てみたのですが、
あの謡い方は出来ない・・・・
ものすごく抑制を利かせながら十分に抑揚を付けるって、
ちょっとやそっとでは出来ないです。
「うんはてんにあり」ではなく
「ぅうんはてんにあり」という具合で
厚みがあるんですよね。
あの出陣のシーンをはじめとして、
Gacktの出演シーンは緒形拳をうならせるほど、みごとでしした。
「言霊Gackt・様式美Gackt」
これからどんどんドラマにも出てほしいですが、
ご本人はすっかりミュージシャンとしての使命を
果たすべく、来年はツアーを企画しておられるようです・・・・
何年かに一度は、ドラマ・映画に出てほしいです。
外国人の映画監督とかが、目をつけないかなぁ。
コスチュームパフォーマンスならば
「我にお任せあれ”!」でしょうにね~。。。。
投稿: 伽羅 | 2007年12月29日 (土) 08時44分
毎度、伽羅さん
3連続コメントはMuBlog始まって以来の壮挙です。
いささか、右肩、両眼疲労困憊の年の瀬ですが、ふんばって数行ずつ、気は心、「コメ返」いたします。
その1:内野・勘助
同じ意見を持たれたようで、安心です。
中井貴一さんもそうなんですか。実は、義経の時の彼が頼朝の姿は、未だに消えません。なるほど、なりきっていました。目を中心にした表情だけで、セリフが「むむ」程度なのに、頼朝の苦渋やいらだちや、はかりごとや、すべてを表していましたね。
もともと好きな俳優じゃなかったのですが(暗いから)、頼朝役で中井さんへの評価が一変しました。
とすると、最初から勘助の内野さんも、中井系列の役者だったわけなんですね。
思い出してみると。初期の可愛らしいミツさんとあれこれ演じていた内野さんは、いささか馬鹿っぽいというか、軽率というか、騒ぎすぎというか、そういう愚かしき若者に見えたのです。
それが、由布姫と出会った頃から、なにか深みが増してきて、後半は、まるっきり軍師ですから、その驚きは大きかったです。
多分、役もそのときどき、役柄に応じて変えていった、とそうおもえば、初期の喧噪が納得できますね。
投稿: Mu→伽羅さん | 2007年12月29日 (土) 19時34分
毎度、伽羅さん
その2:由布姫・柴本
「同性からみて」という文言にようやく、というか伽羅さんが女性であると、あらためて確信いたしました。しかしそこまで気を配った叙述ミステリを書く男性だと、まだまだ油断できませんが。
いやもしかしたら、柴本幸さんが男性なら論理的に合致するのだから。~、一体何をもうしたいかというと、最近ネット上や放送上の情報に対して、迷わず文言や見た目だけで解釈するのが一番よいと思い出したのです。背景をあれこれ忖度するのは愚の骨頂。
伽羅さんが女性なら、ただしく、女性のみた由布姫評として、コメントをいただいておきます。
それで結論は。
「凜」がおそらく万人の由布姫評でしょうね。
あと「美人考」については、評価が別れるようです。やれ眉毛がどうの、これ◎白○のと、キツイのイケズのと、酷評も目にしました。
Muの心底では、それらがまったく信じられない評価なのですが、そう感じる人もおると、諦めておきます。
伽羅さんは、さすがにわざわざMuBlogにコメント下さるお人ですから、「念の昇華した久遠の慈悲」と佳いお言葉をたまわり、幸(ゆき)に代わってお礼をもうしあげておきまする。
投稿: Mu→伽羅 | 2007年12月29日 (土) 20時06分
毎度、伽羅さん
その3:ガクト考
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「うんはてんにあり」ではなく
「ぅうんはてんにあり」という具合で
厚みがあるんですよね。
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こういう評価視点をもって、ガクトを見つめる伽羅さんに、Muは何も申し上げることはございません。
この「ぅうんは」という所など、えもいえぬ、今生味わえない評論文の極致ですよ。
伽羅さんはもしかしたら、その世界では名だたるエンタメ評論家の仮の姿ではないでしょうか。
たしかにガクト兄が「ぅうんは」とおっしゃった場面をまざまざと覚えております。
というわけで、ガクト考はこれくらいで勘弁してください。なにかしら、神経を研ぎ澄まして文をかかないと、~、命がけのコメント返し(コメ返)となりました。
投稿: Mu→伽羅さん | 2007年12月29日 (土) 20時13分