小説木幡記:2007/11/24(土)老人性隠遁症(ディオゲネス症候群)
ディオゲネス症候群というビョウキがあるらしい。老人性隠遁症と日本語では使われている。
新聞の人生相談で見付けた。
依頼者の近親者が、山のようなボロやクズを集めて、部屋一杯にため込んで、退職金で「古道具屋」とか「クズ屋」を開業する算段らしい。それで困っての相談だ。
さて、今書きながらおもったが、古道具屋とかクズ屋とかいう言葉は、自粛されているのだろうか。言葉に罪はないが、どこかでだれかが悪く言ったのかも知れない。だから、古物商と言った方がよかろうか。不知。
しかし、依頼者は、そういう仕事を第二の人生にえらぶ近親者を、困った顔で見ているのだろうか、あるいは未知の世界に退職金を使い込む変人近親者を心配しているのだろうか。
実際は。
部屋中、足の踏み場もないほどに「ゴミ(依頼者には、そう見える)」を溜め込みだして、付き合いも激減して、その上退職金を使うというのだから、依頼者が困るのも無理ないな。
ディオゲネスは、キニコス学派(キニコスは犬のギリシャ語なのだろう)とかいうらしい。ギリシャの哲学者で、余などは「ディオゲネス学派」とか「犬儒派」と習った覚えがある。犬のような儒者という東洋風命名だな。住まいは樽(たる)の中で、自然を重んじて、常識・規則や風習や華美(文化芸術も)をけなし、犬のように生きた哲人らしい、と書いたが実際に余が会ったわけではないし、犬が聞けば怒る。
アレキサンダー大王と同時代の人で、ともかく有名人なのだろう。
そういう病名があって、翻訳されて「老人性隠遁症」となったようだ。
隠遁者がそれほど小汚いとは思わないが、実際は山中やド田舎のボロ小屋に住んでいたら、風呂もシャワーもないだろうから、湯浴みとは言っても、雨に打たれるか川で水浴するしかなかろう。洗濯もしないだろうから、やはり、隠遁者というのは、汚くなるのが普通なのだろう。
だがしかし。
汚い汚くないは表層的だ。
余のように、先程も朝風呂、香りのよい芳香剤に包まれて、風呂上がりにアフターシェーブローションやハッカ油で身を浄めて、清らかな筆致でMuBlogを書き出しても、つらつらおもうに、隠遁症にかかっていると自覚した。
祝日と言っても、近所の模型屋をこっそり覗くくらいで、人にも会わず、ただぼんやりと何日も逼塞していて、仕事に行っても、だれも読まない授業のパワーポイント紙芝居を、一人で造って、ときどきトーマス号を走らせてぼんやり1時間も過ごしていて、会議にでかけても目がとろんとし、話しかけられても、「よろしきように、(勝手に)お取りはからいください」と、言ったきり。ううぅ~。
やはり余は、ディオゲネス症候群に、もうはまっているのだろうか。
木幡も葛野も、人がみればクズみたいな模型やPCや本や雑誌で、足の踏み場もない。
やはり、そうなのだ。
病名がわかって、胸のつかえがとれたので、さあ、今日の昼食は上等なところで、上海かに玉ランチにでもしよう。
数日前には、松茸ご飯とカキ土手鍋をいただいたら、900円もかかった!
| 固定リンク
「小説木幡記」カテゴリの記事
- 小説木幡記:楠木正成のこと(2013.06.07)
- 小説木幡記:腰痛と信長(2013.05.28)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
上海蟹の季節
寒くなりましたね、外は木枯らしが吹きすさび、夕方は西の空が真っ赤になり夕日が富士山に沈む今日この頃だす。
この西方浄土の途中にMuの旦那はお住いですね。そして、美味い物をお食べになっている。上海蟹の季節なんですね。
揚子江は汚れていないのだろうか、最近の中国産の食材は色々と問題視されていますね。師走には多分、仕事で上海、無錫と旅をする予定です。
上海蟹の按配と太湖の汚染の按配を調べてきます。
投稿: jo | 2007年11月24日 (土) 09時54分
JOさん
ビョーキか変人か。
気質か病質か。
難しい分かれ目、灰色領域ですね。
ただ、じっと目をつむって来し方振り返れば、一般に、我々は終わりのないゲーム世界で、勝ったの負けたの、ずるいのペテンの、勝負師の、じり貧男のと、やくたいもないことに、命をすり減らしてきたようです。
昔なら、刀槍弓が飛び交うところですから、ごちゃごちゃいうているまに首と胴が分かれていたわけです。現代だと、勝負はついても、生殺し、というか、なかなか死にきれないし、かと言って簡単には勝利宣言もできないわけでして~。
となると。
ディオゲネス症候群。
一つの余生を生きる道でしょう。
私は、そこまで深みに入らずに、なんとなくディオゲネスで、生ぬるく行きたいですよ。うまいもんたべたいし、文化芸術模型世界は楽しいことも多いからね。
さて、みなさんはどうなるのでしょう。たとえ、若年、中年、壮年でも変わりはござんせん。
これをして、緩やかなアナキズムともうせましょうか。
投稿: Mu→Jo | 2007年11月24日 (土) 16時48分
今のところ正常かと拝察いたしております。ただ「松茸ご飯とカキ土手鍋」で900円を高いと認識なさっているらしいのはいささか問題があるかと・・・
投稿: 某O | 2007年11月24日 (土) 18時47分
某Oさん
松茸のエッセンスを外国産のキノコにふりかけて醤油で色をつけた松茸ご飯と想像。
カキ土手鍋はお徳用で580円。
にしても、真っ昼間から900円も使うのは贅沢と思いました。おにぎり二個で200円ですからね。
ところで、近頃解けない謎。解けないのはビョーキなのかと、自問自答。
物はレンズ(単眼レンズとか)、かーるつあいすとかいう洋物。毎月700円で50年払いと書いてありました。これって、いくらなのかな。計算すると50万円くらいになるけど。人工ダイヤモンドでレンズがつくってあるのかな~。世の中分かりにくいです。ご本人の生眼よりも、値うちあるレンズで、何をみるのだろう?
投稿: Mu→某O | 2007年11月24日 (土) 20時16分