嵯峨野鉄道図書館ジオラマ(01) はじめに
0.結論
嵯峨野鉄道図書館ジオラマを製作することにしました。台はTOMIXの規格木製ボードで600mmX900mmと小ぶりですが、いくつかの事情からこの大きさにしました。
初めての自製ジオラマなので、両手で扱える範囲にしたのと、設置場所や移動を考えると、これ以上は難しくなるからです。
名称は、当初嵐山か嵯峨野か、迷いました。京都市右京区の名勝地なのですが、嵯峨野トロッコ列車が現実にあるので、それにあやかりました。
ジオラマ製作目的は、「近未来の図書館」を模型で造ることにあります。単館としての詳細よりも、「鉄道図書館」を含めた嵯峨野の景観全体を、図書館とすることにしました。
図書館については、専門として講義しているわけですが、ジオラマ製作は別途「『昭和の鉄道模型』をつくる」キットを毎週造っている最中なので、全くの初心者です。
おそらく、この最初の自製ジオラマでは、図書館景観設計よりも、如何にしてジオラマを製作し、その中をどうやってスムーズに鉄道図書館号を走らせるのかに、重点が移ってしまうと思います。
1.経緯
2007年の秋から、講談社の週刊工作誌「『昭和の鉄道模型』をつくる」を体験しだしました。MuBlog に大体一週間に一度記事を掲載し、やっと10号まで完成しました。手元には現在11~18号(最終は50号)まで残っていますが、順次掲載予定です。
この週刊誌には、毎回鉄道模型の鉄人紹介や、鉄道模型のイロハ記事があります。どれもこれもおもしろい内容で、いつのまにか「自製する」という気持が強くなってきたのです。
当初は、この「昭和の鉄道模型」ジオラマに、古びた図書館建築模型を最後に一つ置いて、それで「事始め」と思っていたのですが、鉄道模型世界におけるジオラマ製作が、魅力にあふれ、そういう技能を習得すればいろいろな世界に応用できると思いました。
私は長年授業科目で「近未来の図書館設計」を受講生に講義してきました。その学生達の造った、優れた図書館企画書や模型が保管されています。ただ、教員として、自らの図書館をまだ披瀝していなかったのです。これまでは、指導の中で、学生達の自由な発想の図書館を多数得たわけですが、今度からは、私自身も一つのコンセプトを示そうと思いました。
私の場合は、環境、景観全体の中での図書館を設計することが主調です。個々の図書館は充分なものであると仮定した上で、その図書館がどういう世界にどんな風にあれば良いのか、という発想です。
ともかく、本記事をNo.01として、製作に入ります。記事間隔は、長くなりますが、来春(2008年)には大枠が完成する予定です。その間、「『昭和の鉄道模型』をつくる」も進めていきます。
2.嵯峨野鉄道図書館・レイアウト
つまり、レールだけが中心の場合に「レイアウト」と呼び、下記のように景観を含みだしたとき、あるいは景観が目的のときには「ジオラマ」と書きます。
メビウスの輪レイアウト
さて写真のように、レイアウト(レールの配置)は簡単な「メビウスの輪」のような形式になりました。小さな面積でレール長を延ばす楽しみを得るには、高さ、つまり三次元的な処理しかないわけです。
そしてこういう高架のレイアウトで、図書館をどこに配置するかは、まだ未定です。このままだと、図書館がレールの日陰になりそうなので、後日、図書館は高台を造ってそこに設置する予定です。
外周と内周
外周は普通のレールセットなので、どんな列車でも走りますが、内周はミニカーブレールと言って半径が小さいので、トーマス号のような車軸間が狭いか、台車の回転角度が大きい列車しか走れません。
『昭和の鉄道模型』もそうなので、単車(連結無し)でないと走りません。ただし、トーマス号は貨車を二つ付けてもミニカーブを高速で走ります(笑)
来年は工夫して「図書館列車」を紙で造りたいので、その汽車だと内周も外周も自由に走ることでしょう。
意外に難しいエンドレス化
なお、このレイアウトは一カ所だけ計算に合わない無理矢理接続をして、エンドレスにしました。どこがそうかは自分でも分からなくなりました。多分内周のレールを最後に、外周の手前のポイントに接合するところだと想像しています。レール自体が高低を持ち、微妙なカーブを持たせたので、現実の誤差に吸収されて円が閉じたと思っています。誤差は、円周全体の中に自然に分散したのでしょう。
ポイントと電源接続箇所
レイアウトが複雑だと、ポイントの位置と電源供給の位置で、列車の走り具合が変わってきます。これは正確には理解していないし複雑なので、結論だけメモしておきます。列車の位置は、下記の「ジオラマ」写真を参考にして下さい。
手前ポインタを1とし、向こうのポイントを2とします。1と2とを解放して外周がぐるりと通ったとき、気動車が高速で外周を走り、内周にあるトーマス号は止まったままです。同じ外周にトーマス号があると、二つは同時に走ります。しかしカトー製の気動車が速くて、大抵TOMIXのトーマス号はぶつかられて脱線します(爆)。
1と2とを接続して内周を通したときは、内周にあるトーマス号だけがエンドレスに内周を走ります。外周の、ポイントより右側の円弧上にある気動車は動きません。ただし、左側の円弧に置くと二台が同時に走りますが、この内周では車軸間の長い気動車は、高架以外のカーブで脱線転覆します。
実は高架レールの部分は普通のカーブなので、ここは大丈夫なのですが、内周の内周で脱線です。
3.嵯峨野鉄道図書館ジオラマ
地形は発泡スチロールを基本にしました
山や川や地形を造る方法、手法はいくつかあるようです。その中の一つに発泡スチロールを使いこなす手法があって、私はそれを取りました。手技が切断だけになり、気楽に思えたからです。これはTOMIX系のやり方です。
他方カトー系のやり方はもっと自由度が高いのですが、巧拙は露骨にでると思いました。板や竹その他で骨組みを作り、その中は新聞紙とかその他でふくらみを持たせ、上から下記のプラスタークロスを貼って整形する方法です。昔の言葉では「張りぼて」方式と言えますね。
私は基本をスチロールで造っていますが、最後の仕上げはカトーが提供している「プラスタークロス」:布にプラスター(漆喰みたいな)が付いていて、これを水に浸して貼る方法。あるいは自製「水溶ボンド紙」、つまりボンドの水溶液にキッチンタオルのような紙を浸して、「水溶ボンド付き紙」をこさえ、これをべたべたと貼り付ける手法を使う予定です。粘土じゃなくて、紙か布で下地を整形する手法ですね。
プラスターであれボンドであれ、両方とも未経験ですが、惹かれる技術です。一応、カトーの既製品プラスター巻布を一本買いました。プラスター布は固まると強度があると雑誌に載っていました。自製水溶ボンド紙も、似ているのだと思います。
これらは後日に。
カッターナイフとライターオイル
写真は、厚さ1センチの発泡スチロール板を大胆にボンドで貼り合わせ、2センチの板を造ります。ボンドの量がわからないので、ぼちょぼちょと、まき散らしたから「大胆に」と表現しました。細密模型部分だとそんなこと出来ません。(発泡スチロール板は80センチX50センチ程度の大きさを選びました。自動車に簡単に乗りますから)
マーカーペンで池や川を大胆に薄書きしました。大胆なのは、Nゲージ基本の1/150に精密に縮尺して造ることは、今の私の技量では無理です。たとえば、来年作成予定の箸墓図書館ジオラマを計算したら、全長280mもありますから縮尺しても、前方後円墳だけで長さが2mにもなるのです! そんなジオラマは、豪邸に住まないと無理ですね。仁徳さんや応神天皇陵をNゲージに正確に持ち込むと、古墳だけで4m近く必要になります。
さて、『昭和の鉄道模型』を勉強した結果、カッターナイフにライターオイルを振りかけながら切ると、音も出さずにスムーズに行くようです。さっそく真似しました。OK! ド素人の私でも、うまくいきました。
斜め切りの池
カッターナイフの刃先を1センチ程度にして、斜めに池をくり抜いていくと、本当にうまく穴が掘れるのです。川は、渡月橋とか保津川なので、今はまだ縦切りにしましたが、これは手技が必要で、ぼろぼろと発泡スチロールが壊れる部分もありました。
二枚重ねにしているので、必ず底が平板に得られます。もし単板スチロールで平らな底を造るとなると、平面化処理の手技が必要になりますね。
4.今後の予定
山を造り、トンネルを通します。愛宕山は左上になるので、この辺りの処理は複雑ですね。外周の上空を走る内周レール部分(画面左)は、山の側面を走らせ、画面左全体は切り立つ絶壁で保津峡をそれらしく表現します。このために、別途サイコロのようなスチロールや、8センチ面で長さが30センチもある棒スチロールも入手しました。
これらを貼り合わせたり、くり抜いたり、削ればなんとか京都市右京区の嵯峨野嵐山界隈の風情が出そうです。
山ができたところで、レールを全部外して、プラスター布か水溶ボンド紙をはって凸凹をなめらかに造り、下塗りします。池や川面もそれらしく塗装します。画面の右側は低地なので民家を置くか、列車の車庫にしましょう。
その後は、……。その時のお楽しみ。なんとかなるでしょう。
最大の問題は、「図書館をどうする」ですね(笑)
(えてして、目的を大きく外れるのが、現実の世界ですなぁ。ジオラマ全体が空中に浮くとか、周りを火星や月に変更するとか~)
追伸
発泡スチロールをカッターナイフでさくさく切っていて思ったのですが、将来はメキシコ系ピラミッド図書館とか、餘部鉄橋宙づり図書館とか、近江朝琵琶湖図書館とか、夢が次々と湧いてきて、頭も胸も毎日あふれる空想で一杯になって、苦しいくらいです。
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コメント
私の京都
Mu大兄の(私の京都)の愛読者としては新しい楽しみです。
ジオラマ制作と日曜作家が結びついて、つい池波正太郎さんのことを思い出しました。
彼は座付き脚本家の時代、舞台監督もずいぶんやったようで、舞台の制作のこともエッセイに書いていますよね。
舞台を設計し役者を演出することは後の彼の小説に大きな影響を与えているように当方には思えます。
映画を見るようなリアルさを文章だけで表現しているのですからね。
ジオラマ制作と日曜作家活動はプラスの相乗効果が大きいのではなかろうかと、外野席としては楽しみにしております。
投稿: ふうてん | 2007年11月30日 (金) 15時01分
ふうてんさん
よいことを教えていただきました。
池波さんは芝居小屋をうろうろして、脚本を大量に書いておられたわけですね。
芝居は、生身の役者が動くのですから、小説とは違うところがありますね。その違いを意識して小説を書くと、独特の臨場感がでるのだと、ふうてんさんの話で気がつきました。
そういえば。
池波さんは、いつも江戸時代の地図をもって、東京を散歩していたようですね。
そうですか(笑)
では、Muも嵯峨野や、京都や近隣のジオラマをつくることで、新境地に立つかもしれませんな。
そうそう、ミステリ作家で館物(かん? やかた?)を書く人は、小説のどこかに、その複雑な屋敷の間取りを大抵記されます。
……
しかしMu日曜作家がジオラマを作るのは今回が始めてなので、まだイメージを表現することは難しいですね。二度め、三度目ころから、ふうてんさんのおっしゃったことを、会得し始めると思いました。
投稿: Mu→ふうてん | 2007年11月30日 (金) 18時12分