NHK風林火山(42)なぜ高野山?勘助と景虎
承前:NHK風林火山(41)さよなら由布姫・柴本幸
高野山・奥之院
なぜ高野山
軍師勘助(内野)と軍神景虎(ガクト)がなぜ高野山で遭遇したのか、空海・弘法大師さんのお導きなのか、迷いだした。空海といえば司馬遼太郎『空海の風景』とか、裏高野・退魔師・孔雀の物語『孔雀王』で一世を風靡した萩野真、高野山「奥の院」を想像するだけなのだが、気持の中では「何故、高野山?」とわだかまってしまった。そもそもは、後世信濃の真田幸村父子が、なぜ高野山麓の九度山に配流されたのか、そういう疑問は真田十勇士を幼き頃読んでいて、わきあがり、それからずっと解けなかった。
そして今夜、謎がとけたのだろうか、勘助とガクト・景虎のたちまわり。
さて今夜のドラマ
相当に、風林火山、脚本も演出も俳優達もノリにのっている。息もつかせぬというと、ハラハラドキドキを想像しようが、そうではない。
全編、機知というか、智慧がみなぎっていて、半分笑いながらみていた。その笑いというのは、ドラマは機運がみなぎると、ここまでおもしろくなるのだなぁという、感慨だった。
ガクト・景虎が食事しながらいう。<勘助、お前をこのまま帰したら、晴信と計って、わしがいない越後を攻めるだろう、狡いやっちゃ>
内野・勘助、紀州梅でも食べたのだろうか、酸っぱい顔して答える。<わしを斬りなさるか。さすれば、景虎さまは、出家修行したことにならなくなる。それでもよろしのか?>
ガクト・景虎。<そうだよ、だから困っておる>
勘助・景虎、両名大笑いする。
まさか両者が高野山で同日出くわすのは史実ではなかろう。出奔した景虎が高野山に来るのは、彼が仏道マニアだから必然性がある。三年前の上洛のおり、高野山に立ち寄り清胤(佐藤慶)師のもとで真言を修行したのだから。
勘助が由布姫亡き後、心が沈み世をはかなみ、姫との約束「結婚」を受け入れられずに、かつて放浪した高野山に籠もる、……。うむ、これも必然性があるような(笑)。いやいや、お屋形様に置き手紙ひとつで、一国の軍師がぶらぶらできるわけがない。いや、勘助のことだから「西国へ、紀州へ偵察」といえば、可能性もあるな。
と、両者を別々に記すと、高野山で相まみえる可能性もでてくるのだが、あはっは、嘘だよ、これはドラマだよ。と、書きつつも、うん? 「あり得るかな」と迷うMuであった。
ところで前後するが、ガクト・景虎も内野・勘助も、両者共に仕込み杖なんかもって高野山修行、これがまず笑えた。あれは、じゃらじゃらいう密教法具の錫杖(しゃくじょう)でないと、裏高野。それに、ガクトがののしることば「汚い」は、勘助の顔も着物も汚いのが売り物だから、ちょっと笑ったが、よく考えると「杖と思ったら仕込み杖、勘助、お前は卑怯だ」の文脈のようだ。と、見てみるとガクトも仕込み杖なんだから、わけがわからなくって、大笑いした。
今夜はまたガクトの長セリフを堪能したが、ああいう発声、イントネーション、顔の緊張と雰囲気は、ガクト流とでも言ってよいほどの、新たな演技メソッドとして確立したのじゃなかろうか。真似する演出や役者も数年後にでてきそうな気がするな。それほど、おもしろい。決まっている。
北野監督なんかが、みずからガクト流で役者やったら、それこそ天地がひっくり返るほどの喝采、爆笑をもたらすことだろう。
ガクト、君って、凄い人だよ。Muは、最高に感心した。
(うちの漫画博士が、あとでぼそりと言っていた。ガクトに安倍晴明やってもらいたい、って)
嫁取り変じて娘となる
たしかに由布姫の真新しい卒塔婆の前にぬかずく勘助は、胸に迫るところがあった。回想シーンで描かれる由布姫(柴本幸)も、その一つ一つが瞼閉じれば鮮やかに思い出せるセリフと表情だった。
その勘助が、姫様から「嫁をとれ」との最後の約束を無理強いされて、今極まって高野山に逃れ、もどって晴信に答えたのが、なんと「リツさんを、娘に、養女にいたします」とはなぁ。
もともと由布姫も16歳の美少女だった。そも発端が妖しい。今度は20過ぎた、しかも自分を慕う美女を養女にしたいとは! もしかしたら、山本勘助殿は、生粋の「ろ○こ○」サンじゃなかったかしら、と疑うほどの遁辞、逃げ、上手な結論だね。
ただ今夜は、このあたりの場面も実は笑ってみていた。上手やなぁ、これで由布姫の本当の心を傷つけず、晴信大将にも逆らわず、世間さまに顔向けできる。こんな答えがあるとは、実は、Muは気がつかなかった。それを、あっさり言ってしまう勘助は、なにかしら剽軽ささえある。心がなごんだ。
あの、今は眼前になく彼岸の人とはいえ、由布姫の気性を考えるなら、殺されそうな選択を迫られて、よくぞ勘助、八方うまく収めたと喝采を送った。
まとめ
三条夫人の顔つきが大人びていて良かったな。由布姫に対する感情の複雑さが現れていた。
清胤(佐藤慶)の目元が細く、メークか貫禄なのか、高僧そのものに見えた。佐藤さんは京都の町でも以前ときどき見かけたが、渋い俳優という言葉がぴったりする。曼荼羅の説明を、景虎と勘助にする場面が印象に残った。
景虎の姉役の女優だが、うむ、よいねぇ(笑)。
だがしかし、景虎は姉を慕い、そして姉の口からは、景虎の母への思慕の深さがうかがえた。男女共同参画のずっと以前から、男は女に支配されてきた痕跡がたしかにあるぞぉ。その影をひいて、景虎、また越後の龍にもどった。
来週も楽しみだ。
参考
高野山と武家についてのサイトがありました。
武将と高野山展示リスト
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コメント
はじめまして。
毎週風林火山を楽しみに見ているものです。
楽しい情報、ありがとうございます。
期待していた以上にGacktさんが素晴らしいので、驚いています。
役者に向いていますね。あの人。
これから第4回、5回の川中島の決戦に向けてますます目が
離せなくなってきています。
投稿: 伽羅 | 2007年10月27日 (土) 10時56分
伽羅さん、はじめまして。
風林火山は50回まであるようです。
このあとどうなるのかは分かりません。
わからないというのは、川中島へ突撃するのはわかっていても、その間、どういう委細をつくすのか。
内野さん、亀さん、ガクトさんが戦の話ばかりして12月まで行くとも思えませんしね。
原作本は、どっかに隠れたままでてこないしで、先が見えません(笑)
今度は、比叡山延暦寺に、亀さんとガクトさんが鉢合わせ~そんな、馬鹿な。
フィクションだから何でもありでしょうし。
うむむ。
というても、ガクトさんが毎回あの長台詞では、お疲れになるでしょうし。
投稿: Mu→伽羅 | 2007年10月27日 (土) 14時22分