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2007年10月14日 (日)

NHK風林火山(41)さよなら由布姫・柴本幸

承前:NHK風林火山(40)三国同盟よりも由布姫の去就

ドラマ:由布姫の最期
 俳優(女優)というものの特殊な姿を今回のドラマで由布姫(柴本幸)に見た想いがした。Mu流の言葉でいうと、それは「依り代」となろうか。簡単に言い直すと、女優に神が宿る、なにかが憑依するとも言える。日本映画でも過去数名は思い出すが、いずれも名優だった。
 今回の柴本の場合は、若さもあって、本人自身の今後を考えると危うさも味わった。
 しかしその危うさとは、マイナス要因としてではなく、女優として切迫した状態が継続することの危うさである。日常に戻れない。日常が空しくなる。虚脱する。だから、女優として生きる他には、柴本の道は限りなく細い。

 そしてまた、国内だと差し障りもあろうから、海外に例をあげるなら、初期段階で大役をこなした俳優が、その後長く、別の人生を次々と演じることの難しさもよくみるところである。007のジェームス・ボンドを演じたショーン・コネリーがその後、たとえば「薔薇の名前」にまで達するには相当な努力があったはずだ。観客が彼をボンドとしか見ないことと、本人が初期刷り込みによって、脱却は、命がけとなるのだろう。アラビアのロレンス役だった、ピーター・オツールも、Muの中ではそうなってしまっている。彼の20代後半のロレンスは、「彼こそがイギリス軍諜報大佐、ロレンスである」とまで、異国の観客だったMuにすり込まれてしまった。その後の彼は、随分名優としてしんどい人生を歩んだようだ。

 柴本幸の脳内はおそらく由布姫になってしまっている。一々のセリフはやがて、台本ではなく彼女本人のセリフ、所作になってしまった。
 そして、今夜の由布姫最終回。それは極みに達した。
 台本を作るのは柴本じゃない。しかしなお、書かれた文字内容を内在的に消化して、身の深奥から肉体を通した音声として出すのは女優・柴本幸であり、彼女の場合、台本からも演出からも、枠を壊して遠くへ飛び上がってしまっている。だが、柴本が演劇を芝居をドラマを無視したのではない。柴本にとって、それが自然体、地のままだったのだろう。
 まさしく、由布姫は柴本幸だったのだから。

 というわけで、緩急、笑いと悲傷と、暗鬱と、そして勘助に対する命令口調、すべてが流れるように自然に、姫の表情や立ち居振るまいが変化していく。つまり雰囲気全体が変わっていく。そのような、流れを自在に制御できるのは、ある点で名優だし、ある点では柴本の力量よりも、天性の資質なのだろう。資質は経験則に載る力量を、常に凌駕する。

 今夜も、もちろん由布姫のエピソード以外にも、心残りのシーンがいくつもあった。それらが由布姫の死で吹っ飛んだわけではないが、それを詳細に記すほどにはMuの心が闊達ではない。人の死は重い。たしかに予定調和としての死の退場ではあったが、勘助を困らせるのは姫の仕事という別れを前にして、姫のドラマ生命が走馬燈のように流れていく。もはや、筆とるあたわず。

 さて。
 柴本は今後も女優・柴本幸の生を生きることだろう。それを見る機会もなかろう。これで、オシマイと、いたしましょう。
 来週からは、終盤の突撃(笑)、男勘助、死力を尽くして戦国乱世を突っ走る。そばにいるのはガクトに亀さん。よい取り合わせだと心から思う。

 最後に、かねてよりしたため置きし、Muから由布姫への惜別辞、一通付帯するものなり。↓

こんにちは由布姫・柴本幸さん
  君を生まれて初めて目にしたのは、2007年4月18日の14回目だったと記憶にあります。その時は「表情のないアンドロイドじみて寒々しいから、背中にぺったんカイロなんかを貼ってさしあげたい」などと、ひどいことを公器blogで発表してしまいました。
  これは、その後の姫さまのご精進を振り返りますと、まことに不謹慎というか、無礼というか、申し訳ないことと心から思っております。したが、一旦記したことを、Muの都合で書き換えるのはもっと酷いことなので、未来永劫記念碑として、それは残しておきます。
  さてその後Muにも紆余曲折ありまして、いつのまにかMuBlogは「柴本幸ファン倶楽部blog」の様相を呈するにいたりました。圧倒的な強さでキーワード「由布姫」がMuBlogにアクセスされるこの半年でした。これ、ひとえに姫さまのお力であります。
  事例として、本日夕方のKGR指数を算出いたしましたところ、以下のような驚異的な数値が出ております。

  6.19kgr(071014){由布姫} GoogleでWeb全体検索、7位/113000件中
  MuBlog: NHK風林火山(17)由布姫の慟哭
    
  4.69kgr(071014){風林火山、由布姫} 
  MuBlog: NHK風林火山(18)由布姫の決意 GoogleでWeb全体検索、4位/85300件中
  MuBlog: NHK風林火山(16)由布姫と自害 GoogleでWeb全体検索、5位/85300件中

  このKGR指数は、6.19とか、4.69のように数値が10を切るほどに低くければ、その対象「検索用語」が異様に強力であるとお考え下さい。一般に、母数(検索結果総数)が10万件前後以上ですと、KGR指数が10を切るのは、対象検索用語が非常に著名で、それと記事内容のバランスが良く取れている場合だけに起こる現象と思われます。
  つまり、このKGR指数を得られたからこそ、最近のMuBlogは尋常ではないアクセスを得ているのです。αブロガ(月に20万アクセス前後あるブロッグ)には到底及びませんが、βの准βブロガほどにはこの半年、なっております。一時的にプチモンスター化したと言ってよいでしょう。これひとえに、由布姫人気に便乗した幸運と、考えております。合掌。

  なお、MuBlogへの記事アクセスの増減はMuの基本趣旨には全く無関係であることは、あえて付記しておきます。申したいことは、{由布姫}という検索用語が非常に強い力を持っている、その例証として上記文言を重ねたわけです。

さよなら由布姫・柴本幸さん
  さありながら、今夜は君に惜別の辞を記すことにもなりました。ニュースでは例年とは異なり今年の風林火山は50回まで延長するとか。その追加回ならびに総集編に君が再び姿を現すことは予想できますが、それは附録人生。今夜の「由布姫の最期」をもって、Muはお別れいたします。突然の惜別に、別れを縷々述べることもできず、はなはだ唐突な申しように、ファンとして万死に値する所行とは思うのですが、Muにも現実生活というものがあります。
  NHKの大河ドラマ以外にはTVを見ないMuが、いつまでも姫さまの姿を追って、西に東に君を追っかけすることは、立場上、金銭的にも、精神的にも到底できぬことです。ここで、潔く姫さまを忘れることこそ、MuBlogに残された君の記録を静謐に、末永く留め置く最も有効な方法だと、かねがね思量しておりました。
  おそらく、風の噂で、君が今後どのような人気ドラマ、凄い映画に出られ、映画・芝居世界を席巻されようとも、Muは二度と君の姿を見ることはないでしょう。
  この世にTVドラマ鑑賞は、毎週一回、日曜夜の大河ドラマしかない、これこそ、Muの不変の世界なのです。もちろん、数年後また日曜夜大河ドラマに出られたなら、満腔の賞賛、拍手感激、血涙ふりしぼってMuBlogを華々しく御麗姿にて飾るつもりではあります。

 お達者で幸姫さま。
 Mu 識。
 再見~

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NHK風林火山」カテゴリの記事

コメント

始めまして、そして有難うございました。
柴本さんのファンというわけではありませんが
「風林火山」というドラマにおいて柴本さんという新人女優さんに
由布姫という大役を任せたという意味はあったと思います。
誰も知らない女優でなければできなかったような気がします。

ほとんどTVをご覧にならないようなので、先週柴本さんがNHKスタパに
ゲストで出演されたときの内野さんのコメントを
一部紹介させてください。
「フィクションを作る人達は,本当にフィクション作ろうとしちゃダメだと思う。
やっぱり心の真実をえぐり出してみせるというのがボクは役者だと思う。
そういう意味では,彼女は本当にその心からえぐり出そうとしてるって言うかその姿勢を、
今回のあのキャストの中で新人かもしれない経験もないかもしれないんだけど、
一番俳優として大事な姿勢は彼女に一番感じたかもしれないですね。」

ネット上で柴本由布姫を認める方の声は謗る声高な声に消されがちで
少し歯がゆい思いをしておりました。
此方の感想を読ませていただくとちょっと胸の使えが降りました。
あともう残りの回も少なくなりました。
ご一緒に楽しみたいと思っております。

コメントの引用不快に思われましたら全文削除お願いいたします。

投稿: 月猫 | 2007年10月15日 (月) 15時43分

月猫さん、はじめまして

 内野さんの、柴本さんへの感想はこうして読んでみると、よく分かります。いわゆる、肺腑を突くような台詞と様相とが、柴本さんにはありました。

 ただ、これをして演技とは、なんとなく思っておりません。柴本さんのそれが自然、地かと想像しています。日常は普通の人なんでしょうが、引き金がかかると、その世界に埋没する資質なんでしょう。

 ところで。いささか、笑えるのですが、由布姫の台詞は一字一句、脚本家がかかれた物です。それを発する由布姫を、どうして世間が貶すのか、ちと、理解に苦しみます。殺人鬼の役を演じたら、まるで殺人鬼のように、糾弾するのでしょうかねぇ~(爆)

 昨夜は二点、心に残りました。
1.雪齋の最後ですね
 松平の竹千代の酌で、酒を何杯も飲みます。その二杯目あたりの、雪齋の雰囲気、これこそベテラン役者のすごさと思いました。単に酒を飲む姿だけなのに、大役を果たした後の気持ち、今後の算段、あらゆることを考えて、寛ぐ姿が、盃の動きにでていました。すごすぎる、と思ったです。

2.晴信さんが、由布姫に、木曽か上杉か、どちらを攻略すると、判断を仰ぐところがありました。もちろん脚本の良さですが、心にしみました。
 つまり、晴信は、由布姫を長年「側室」として扱ってきたことを、詫び、そしてその失策を反省したわけです。

 由布姫は、いわゆる男勝りの知将、猛将になるだけの、気質・気力・知略を持った「女」だったと、表現しているわけです。
 「由布が男だったら、武田は諏訪に負けたかもしれない」と、以前晴信ははっとして気づきました。
 今回、戦の指揮権、軍議の行方を任せたのは、心から晴信が、姫を見直しているという証なのでしょうね。
 そして、それは死出の旅路にでる姫への、はなむけだったのかもしれません。
 なかなか、すばらしいドラマだと思いました。

ではまた

投稿: Mu→月猫 | 2007年10月15日 (月) 17時15分

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