小説葛野記:2007/09/22(土)混沌の葛野研
いろいろな事情で葛野研、多分休日祝日こそ羽を伸ばして仕事はかどる、ということだろう。
宿題はまだまだ山ほど残っている。ただ、どんな場合でも、トンネル掘りと同じで、最初のちっこい貫通をするまでが、胃が痛む、目がかすむ、鬱になる、しびれる、空しくなるの状態なんだろう。たとえ直径一センチでも、向こうが見えたら、のきなみ90%完了となる。今夏予定責務は、この一週間ほどで、ぱたぱたと9割完成。残りはじわじわじっくりと、手当するだけで、気がついたら終わっていた、となる。
ここで教師癖。
つまり、若い未経験な人は、責務、重責にでくわすと、この直径一センチの穴を開ける前に、ダウンしてしまう。そこまでは息を詰めてやらないとできないことも多いのだが、めげてしまう。ある時期がくると、どれほど難儀なことがパラレルに、三重、四重にかさなっていても、瞬時にカタがつく。この経験をへないと、入り口で討ち死にするなぁ。まあ、よかろう。たんと討ち死にしてくだされ、のたれ死にしてください、余は生きる、「勘助、わたくしは、生きたいのです!」と、どっかで聞いた台詞じゃね。
混沌とした作家森博嗣の動向
MLAの記事から、いろいろ混沌を味わった。「2007年09月18日(火曜日)HR:見通しほんの少しだけ」
要旨は、すなわちこの12月に先生は50歳を迎えるようだ。ついては、そろそろ好きでもない小説書きを辞めるとのことだった。以前からそのMLAにちょっぴり書いておられたが、ついに、その日が、Xデイがきたかぁ! の感深く、混沌の「作家精神」に目がくらんだ。ただし、正確にはMLAの契約が終わる来年のようだ。それまで、じわじわと、「今後は少しずつ表に出る機会を減らし、人知れず地味に静かに消えたいと願っている」と、あった。
森先生がデビューしたのは、たしか36歳頃のことだ。もうそんなになったのか、と人ごとながら驚いている。
そばにおられる、多分ご正室(いや、側室がおるとは耳にしていない。なんとなく信長時代がなつかしくって)であられるスバル氏はそれとなく「引き籠もったら、つまらないよ」と、つぶやいておられるよし。
一般的な作家芸術家アーティストなら、「やめたけりゃ、辞めろ。死にたければ勝手にせい。すぐに、次が出てくる!」と、瞬時に結論するのだが、森博嗣については、そこを言えない事情がある。どういうことかというと、少なくとも文学の毒にまみれていない(と、見える)、作家の臭みにまみれていない、正常な頭のよい人が、過去のしがらみや伝統に屈服せず、好きにマックを動かして、自由自在に膨大な小説世界を作ってきた、そして本業は模型作家だった、そういう夢のような現実を実現させた希有なひとなんだから、そうやすやすと消えてもらうと、「困る」という実に私的な利己的な理由があるからだ。
ただ、問題は。
森博嗣はミステリでさんざん嘘をついて来た人だから、現実の、地の文では絶対に、金輪際、書いたこと、言ったことを違えたことのない、強烈な頑固作家である事実を、余はファンとして知っている。「辞める」といった限り、編集者達が家の周りをとりかこもうが、ファンクラブが数万通の嘆願書(笑)をだそうが、日本政府が頭をさげようが、「嫌だ」の一言でそっけなく、マックを池に沈める(いや、マックは大切になさるだろう、つまり筆をおる)だろう。本当に、こまった方だと、他人ながら、よそのひとながら、そういう情景を想像すると、ため息がでる。余の親族、兄弟とか同僚でないからよいようなものの、……。
さて。想像すると、本当に困ったことだ。余の脳は混沌としている。
変名、偽名であらたに同人誌的コミュケ的活動を開始して、旧来の出版社系には一切しらせずに、ファンクラブ登録番号の1000番あたりまでの人にこっそり、変名を知らせるという方法を進言してみようかな。ああ、余の番号は忘れた(笑)。
名前を変えたら論理的には、森博嗣は消えたことになる。嘘をついたことにならない。同人誌活動だから、印税もなくなり、資産数百億(?Mu嘘。多分数十億円レベルだろうな)の原資にゴミみたいな収入を追加する煩わしさも免れる。
ともかく、生きておられたら、また4年後、お会いできる可能性が残る。
いろいろ考えてみよう。
追補
ディープなファンというものは、ターゲットを自分の人生設計に組み込んでしまうことが多い。余の場合、森博嗣の新シリーズを、年に数回MuBlogに掲載することを、ビルトインしてしまった。辞められて、数年は過去作でしのげるが、その後を想像すると、目の前が暗くなる。ファンとは、そういうものなのだ。
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