小説木幡記:2007/09/05(水)知的障害、社会福祉、年金犯罪
例によってNHKのクローズアップ現代。毎日夕方7時半から30分ある。
時々刻々の時事を取り上げて、一般人には分からない内容を、比較的詳細に解説している。終盤は大抵、知的な女性アナウンサーと、対象世界の専門家とが、語り合う。
感心するのは、一つ一つが、よく調べられていることだ。そして、さらに感心するのは、比較的ひねくれた余が、大抵は「う~む」と感心することだ。
余は騙されやすい資質だが、それでも、感心するのはほんのわずかで、大抵はTVなら消し、新聞雑誌なら、「また、アホな記事。だれが読むのや」と、放り投げ、人とはほとんで話さない。外部のゴミ情報を強靱に消化するだけの余力がないからだろう。
1.刑務所
極悪非道な犯罪とはことなり、軽微な万引き、食い逃げ、窃盗事件の受刑者のうち、20%くらいの人が知的障害というデータがでたらしい。これまでは、そういうデータが無かったというのだから、驚いた。
知的障害とは、番組ではIQテストが69点以下と言うていた。IQとは、もう忘れたがたしか米軍が徴兵するときに、命令を理解できない、集団行動ができない国民を選別するために使われた、という記憶がある。
IQが持つ、個人の知能を計る尺度の妥当性はしらない。要するに、この話は現代世間で、知的な側面でうまくやっていけない人、それは計算ができなかったり、文章の読み書きが出来なかったり、人の話が理解できずに、仕事に就けず、助けがなければ世間から脱落せざるを得ない人をさしていた。
問題は、そのために仕事に就けず、一人で生きにくい人達のことだ。家族や社会の受け皿があれば、知的障害が犯罪に結びつくことは無いのに、助けてくれる人もお金もないから、生きるためには盗みをせざるを得なくなる。
こういう人は、出所しても誰も迎えに来ないらしい。だから、数ヶ月後にまた捕まって刑務所にくる。
番組では50代のおとなしそうな女性を映していた。18歳ころから家がなくなったらしい。腹が減ると公園の水を飲んで路上で寝起きしてきたらしい。
2.受け入れ施設:南高愛隣会
刑務所でも、そういう実態が露わになってくると手をこまねいているわけにもいかない。この女性は、なにかの縁で長崎にある南高愛隣会という施設に入所できることになった。
迎えに来る人、送り出す女性刑務官の姿、よい映像だった。
南高愛隣会での様子も、よかった。小さな個室に落ち着いて、簡単なインタビューが始まった。要点は「やっと、はじめて、家に住める。初めて、まともな食事ができる」。余は落涙した。
前にも記した筆致で言う。
この豊かな、爛熟した、飽食の放漫の自由世界日本。豊かさでは世界でいつも最上位グループに入る。その日本で、この女性は30年間以上、国からも世間からも捨て置かれた状態、まさに路傍の人、行路死してもだれも気がつかない、そんな状態に置かれていたのだ。刑務所だけが三食提供してくれる安宿だったとは、悲惨すぎる。しかし彼女ははっきり言った。「刑務所には、行きたくない」と。
南高愛隣会、そういう施設はどこにでもあると想像していたら、本当に全国をみてもわずからしい。大体、社会福祉施設は、こういう高度資本主義世界にあっては、生産に直結しないから、重視されない、その上お金がかかる。国の補助があっても、ぎりぎりの水準らしい。施設で働く人達の給与水準が劣悪であることは、昨今のマスコミ情報でもよく聞かされる。今の給与水準では、だれも志願しなくなる環境のようだ。
3.社会保険庁の犯罪
昨夜のニュースでは、今朝の朝刊をみればもっと正確に書いてあるだろうが、全国の年金を受け取る市区町村の関係者と、社会保険庁の関係者とで、合計100名、4億円近い「年金ネコババ」が、やっとのことで発覚したらしい。
このことはすでに想定内だから驚きもしないが、検察庁が麻痺するくらいの事案が、この何十倍も隠れているにちがいない。ゴキブリ一匹見つかれば、最低10匹隠れているのは、当たり前の現実だから。
日本の公的年金関係者(公務員)は、ネコババしなければ行路死するような、知的障害者の集団だったのか。
そんなことはあり得ない。高度な試験を合格した、国家、地方の公務員のはずだ。豪邸をもっているとか公務員宿舎に安く入居しているとか、先述の知的障害者に比較すると、すばらしく贅沢な生活を何十年も営んできたに違いない。
彼等は、天から授かった能力を、狡さに使ってしまった。しかも、驚くべき事は、それらが発覚した者達も、処分されたかどうか、そのまま退職金をもらって辞めたのか、あるいは簡単な懲戒ですませたのか、あるいは返金だけでおとがめなしなのか、ほとんど発表されていないらしい。
関係者は、腹を切るか、生涯悔い改めて、刑務所に入りながら三食だけ支給されて、社会福祉施設で働くべきだと、瞬間思った。
4.まとめ
余は社会の正義派ではない。もともと、独りよがりの引き籠もりの偏屈教授と思っている。ボランティアなんてしたこともない(そのはずだ)。
しかし。
眼前で、あまりに破廉恥なことが、白昼堂々とおこなわれていることに気がつくと、ショックをうけるだけの普通の神経の持ち主だ。
長年収めてきた税金や年金は相当な額だと思う。その多くがどぶにすてられてきた思いがした。一体、どこに消えたのだ。
ただ、断っておくが、ここでジェット戦闘機を一台買う金で、数万の人を救えるという論法は絶対に用いない。国防力も警察力も消防力も、そして公務員組織も社会秩序と制度を保つ最低限の保険と考えている。
しかし、知的障害で身よりのない人を支える金が税金では出せない、とは言わせない。
高給とりの公務員に、盗人に追い銭のような、ネコババを、生活費支援だなんて、絶対に思わない。
後者、彼等は明白な犯罪人だ。隣国だと、簡単に懲役数十年、死刑になるかもしれない重罪だと、本気で思う。
まさしく「ゴメン、公務員辞めます、ですんだら、警察いらん」と、感じた。
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コメント
はじめまして 「ねんきんどっとネット」と申します。
「年金ネコババ公務員」問題を扱ってるブログを見て回っておりまして、
> まさしく「ゴメン、公務員辞めます、ですんだら、警察いらん」と、感じた。
という言葉に、国民のほぼ全員が、今感じていることを的確に表現されているなぁ と関心いたしました。
当サイトは、個人サイトですが、「年金問題」に関する問題追求、政策提言などを行っているサイトです。
その中で、MuBlogさんのこの文章をご紹介させていただきました。
もし、不都合があるようでしたらご連絡ください。
これからも、これを機会によろしくお願いいたします。m(_ _)m
投稿: ねんきんどっとネット | 2007年9月 5日 (水) 12時00分