NHK風林火山(26)殺戮とガクト
今夜は書きにくい。Muは軍略、謀略を好むわけだが、殺戮は消化しきれない。
昔の大河・伊達政宗でも、若き政宗が800人「撫で斬りの所行」におよんだり、あるいは秀吉が関白秀次の親類縁者を全部切り捨てたり、あるいは信長が長島の門徒を数万単位で皆殺し、比叡山皆殺し、あるいはモンゴルが一都市全員を殲滅したり、あるいはアメリカが広島(20万以上死亡)、長崎(14万以上死亡)に原爆投下して、原爆症を含めて50万人以上を殺戮したり、あるいはアメリカがネイティブを皆殺しにしたり、……。あるいは鯨もバッファローも皆殺しにしたり、何をいまさら捕鯨反対、笑止千万。
鯨の脂だけとって、肉は捨てていたと言うから、仏陀が聞けば顔をしかめることでしょう。
人類史の中で、皆殺しという悪行に手をよごしていない国家、民族は無かったのかも知れない。
それにしても、今夜の晴信、血に酔った姿だった。番組最後に、由布姫にとりすがり「これまでは戦に勝つことが怖かった。今は、負けることが怖い」と言ったのは、ご愛敬。
ご愛敬と皮肉ったのは、来週あたりその晴信を、由布姫がどう切り返すのか、見どころだなとおもった故に。
ガクト。
仏門に入っていたのが、還俗したのか。それにしてはどうみても仏門の雰囲気ではない。青年長髪稚児の雰囲気だし、常にライトのあて方が特殊だから、陰陽師や天草四郎(ジュリー)になってくる。いや、宝塚男装の麗人か。近頃、これほど楽しい俳優は見たことがない。
笑っているのじゃない。
役者というものの、すごさ、この世のものならず、ないものをあるものに仕立ててみせる、夢芝居というか、玄の玄、夢幻世界。ガクトを探してきたのは誰だ。NHKのキャスティングAIマシンかもしれない。
この発想は、Muでも思いつかない(笑)。
ガクトは黙っているだけで格好がつく。長袈裟つけた鎧立ち姿で、シュワと太刀を一閃させただけで、画面にオーラがたった。感動! 世界が傾く、天が割れる。
してまた、セリフがすごかった。「空しい」と。
よくわかる。わかりすぎるほどによくわかる。
しかし、ガクトは天才だから戦いの場に押し出されてしまう。いや、「義」を打ち立てる限り、ガクト、いや長尾景虎(かげとら)の身の回りに戦がおこる。
楽しみだね。
今期は本当に楽しみが尽きないが、先頃と今夜をあわせると、
(1)由布姫がきりっとして、◎白眼でにらみつける姿。
(2)ガクトが、長髪の影から薄目をあけて「空しい~」と呟くセリフ。
毎週、これだけあれば、Muは視聴料はらっても、よいよぉ~。おいおい、勘助さんはどこへいった。まあ、そのうちに。
勘助、今夜は晴信に諫言した。晴信は勘助に、「軍師解任、死ね」と言いそうな雰囲気だった。その数分のやりとりで、今夜の勘助は出番を尽くした。役者は出ずっぱりであるよりも、時に影に溶け込んだ方がよい。戦場での、喉を破った勘助の大音声が耳にこびりついた。
というわけで。
あらすじも、深い鑑賞も、なにもない風林火山感想に終わりそうだが、見どころがありすぎて書ききれない。小山田さんがひっさらった美瑠姫だが、この姫、今後どうなっていくのでしょうか。見どころの一つになりそうです。
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コメント
今回のキャスティングって考えてみると「変」ですね。ややこしいドラマにこのキャスティング…というあまりの独自路線で、もう視聴率については気にしないでおこう、と思いはじめています。上杉の軍師には緒方拳がなるみたいですし。
私的には、今回の見どころはやっぱりGacktと板垣・甘利でした。
投稿: なったん3211 | 2007年7月 2日 (月) 10時47分
なったん3211さん
メル返、ものすごおくれました。
さて、板垣・甘利のあつかいは、あなたのblogの通りで、実に味わいがあります。
Muが記さなかったのは、このドラマ、良いところは常によいので、空気みたいになって、取り上げるのを忘れるのです。
ガクトのことは、奇妙奇天烈な魅力満載なので、ついつい筆が先走りすぎました。ああいう人選は、すばらしい(笑)。
もしもしも、秀吉なんかをガクトにやってもらったら、日本史が大変革し、女子高生たちも日本史大好きが増えるでしょうね。
これからは媛ファッションが男子に流行るかも知れない。いやはや。
ほんまもんの女子は、どうするんやろ?
Muみたいな加齢者は、衣裳はむりなので、細眼あけて、ひとこと「む、空しい」とでも呟くことにします。
というわけで、Mu記事、薄くなりましたが、感動が薄くなったのではないのです。おもしろさを噛みしめているのが実情です。
投稿: Mu | 2007年7月 2日 (月) 21時51分