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2007年6月12日 (火)

小説木幡記:20070612(火)富者と貧者

 昨夕と今夕、NHKの例のクローズアップ現代を聞くともなく聞いていた。
 この一年、夕方家路に向かうころ、この番組に接するのだが、気持が沈潜する。

 描かれる現代の疾病といえるほどの社会現象は、一体何なんだろう。
 犯罪、享楽、貧困、不労収入、身的病気、心的病気。

 過去を振り返る。過去は良いこともたくさんあったが、今よりもっと悲惨なことも多かった。
 日本なら、余が生まれる前、東北地方では飢饉が多発し、餓死、餓死寸前、娘を売りに出して最低限の生活をいとなむ人達が多かった。

 余の幼少時も、風呂には一週間に1~2回ほどしか入れなかった。
 真冬でも冷水で洗顔していた、日本全国禅宗の坊主みたいな生活だったなぁ。

 ……

 昨夕の番組は、ネット上の仮想住人になって、起業し、商売繁栄、現実的な金銭を得ている人達の姿だった。
 「現実」で満足できないから、仮想に走ったか、と思ったぞ。
 それなら余が物語に沈潜するのと比較して、あまり変わらないなという自笑。余も物語の中なら、かっこよい男になって、男達の挽歌を奏でることも出来よう。英雄にも天才にもなれよう。
 勘助にだってなれる。あはは。

 しかし、かれらはネット上で「すごい男」や「すごい女」になって闊歩するだけじゃない。
 余がいくら物語にひたっても、眼が覚めれば職場にでかけて、しこしこと地味な細かな仕事に一日を終わる。
 なのに彼等は、毎週、毎月札束を手にしておった。
 無論、余だって収入はあるが、車はファミリーカー、住まいは狭い。景色はよいが(笑)。

 ところが。
 今夕は逆の話だった。東北の田舎で、学校を卒業しても職がなく、東京に職をさがしにきた。友人宅に居候して探したが、ない。
 月3万円のアパートを借りて独立しようとしたが、入居するには20万円必要だった。その頃の預金が2万円。
 それが数年前。
 ~
 現在は、日雇い派遣しながら、月のうち殆どは一晩1000円程度のシャワー付きネットカフェ利用。
 それでも日雇い派遣がとぎれると、五日目くらいからは野宿せざるを得ない。
 一日の食費生活費が千円。
 やっと、倉庫で検品仕事が見つかった。10時間働いて9000円の高収入! 三ヶ月ほど働けばアパートを借りられる。住所さえ確保すれば、もう少し恒常的な派遣、仕事にありつける。と、思った矢先に、14日で打ち切りと派遣会社から言われた。
 おそらくそれ以上だと、派遣会社に保険料などを負担する義務が生じるから打ち切られた、とNHKも本人も言うておった。

 派遣会社は、派遣先から日に12000円ほど得ると、なんやかんやと理屈を付けて、本人には5000円強支払うだけ。60%近くが派遣会社の収入になるらしい。

 そうだ。
 倫理道徳仁義人の道が廃れると、とれるところからがんがん取るという、そう言う感覚が現代企業の「正しい方法論」になっているようだ。江戸時代の高利貸しとか悪徳越後屋と変わらない。
 その強欲に見える派遣会社は、もうけた金をどう使うのだろうか。従業員、正社員に手厚くボーナスを払っているのかもしれない(邪笑)。

 そして。
 我らの余生を保証する年金。社会保険庁につとめていた国家公務員は、どういう気持で、今、一生の仕事を振り返っているのだろう。自分達が長年一見真面目に働いてきたその基盤が、嘘となれあいと、責任のたらいまわしと、……だったのかもしれない、と。
 年金の原資である現代の労働者の30%が派遣社員、アルバイトらしい。年収100万円台では、積み立ても、税金も払えない。はやばやと、国の根幹事業が破綻する。
 
 豊かさの中。
 真綿で首を締め付けられるような雰囲気で、物心両面の貧困が押し寄せてくる。
 そして、日本は、大国らしい。
 ドンパチと、爆弾テロがない分、幸せと、そう思うことにした。
 辛いな。 

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コメント

 同じ番組を見ました。以前から話題にはなっていましたが、何よりも驚いたのが6割近いという派遣会社の搾取。これはもう、現代の奴隷制ですね。たった20年前には、派遣という勤務形態自体がほとんどの場合違法だったのに、何でこんなことになって(というより「して」)しまったのかと思います。

投稿: 某O | 2007年6月12日 (火) 22時28分

江戸時代頃の四公六民(実際は20%程度だったという説も:二公八民)に比べても、これは搾取の典型でしょうね。奴隷以下の六派遣会社・四民、おお!

以前の共産主義、社会主義の跋扈は、A.J.トインビーの説では「キリスト教会が、ちゃんと社会への手当てをせず、私腹を肥やしたから、こうなった」と言うてました。「歴史の研究」ですね。

その筆致でいうと、某○さんへの答えの一つは、大東亜戦争後の、共産主義や社会主義が、民の安寧を忘れ、権力闘争に憂き身をやつすから、現代資本主義下の庶民が、こうなった、と言えるでしょう(爆笑)。

派遣制度は合理的だし、よい面がたくさんあるのに、眼前の利に夢中になるから、人でなしの我利我欲に走る会社が増えるのでしょうね。

一般に、時間をかけて人を育てるという考えが、日本でも薄れています。短期決戦、儲けるときに儲ける。

まるで一時期の風俗(いまも?)かな。法が介入する前に、徹底的に暴利をむさぼる、あのやり口が、社会の基盤である企業の多くにはびこりました。

終身雇用を捨てたツケは、意外に早くおとずれそうです。

ただし。
メディアの負の投影に、ちょっと過敏なのか、どうか。考えるところです。

どっちにしても、世界の疾病の多くを日本も背負わされているようですね。

投稿: Mu→某○ | 2007年6月12日 (火) 22時56分

9.11のとき、私は暢気にもスポーツジムで走ったりしていたのですが、急いで家に帰ってテレビをつけて、しばらく呆然と見入っていました。

そのときに、漠然と「世の中は変わったのだ」
と、思ったのです。

何が変わったのかはうまく言えないのですが。

一部マスコミの妄想的報道は脇に置いておくとしても、日本周辺にも「火種」がないとはいえない状況。

そして、テロじゃなくたって子供をたくさん刺し殺したり車で突っ込んだり、そういう異常な人間が間欠的に発生しているこの国の治安は、もう思うほどいいものではない、ということは皆知っているはずです。

一つの問題を解決できぬまま、毎日のようにメディアは問題を報道しつづけるわけで、そのうち元々の問題を、ともすると忘れてしまうような気がします。

「サンドバッグ」みたいだと思うのです。

次から次へと、誰にも、問題が降りかかってきます。

持って生まれた要素で少しハンデがつくにしろ、自分で解決していくしかありません。
それに耐え切れなくなっている人がたくさんいるように思います。

最近、京都では週の後半に雷の日が多かったですね。

ここのところ毎年「異常気象じゃないか」と思ってしまいます。(というか、何が正常なのか、最近よくわからない…)

しかしそれが地球の「危険信号」なのか。

あまりにも大きすぎて分からないのです。
結局私もあまり深く考えることなく、大きな波にのまれてしまう一人のような気がしています。

投稿: なったん3211 | 2007年6月13日 (水) 16時22分

なったん3211 さん

「一つの問題を解決できぬまま、毎日のようにメディアは問題を報道しつづけるわけで、そのうち元々の問題を、ともすると忘れてしまうような気がします。」
 はあ、なんとなく。
 つまり現象の異常さを毎回見ていると、麻痺してきますね。
 それと。
 対岸の火事がじわじわと、各人の間近にせまってきている雰囲気。

「持って生まれた要素で少しハンデがつくにしろ、自分で解決していくしかありません。
それに耐え切れなくなっている人がたくさんいるように思います。」

 このこと切実に感じます。みんなハンデはあります。うまくするとハンデがバネになって、素晴らしい充実した人生送れるかもしれない。

 けれど、ハンデに耐える能力の欠如なのか、あるいはそういう訓練、教育がなかったのか、多くの良さの中の、たった一つのハンデに負けて、犯罪に走ったり、不本意な泥沼に沈みこんだりしてしまう事例が多いですね。

 ところで、なったんさんのコメントが、痛切にマジコメなので、いささか汗です。

投稿: MU→なったん3211 | 2007年6月13日 (水) 16時42分

 すみませんです…実はこのコメント、ぜんぜん深く考えていません。ただ思いつくまま書いてみたのがちょっと分かりにくかったみたいですね。
 「もともとの問題とは何か」
 答えは…色々な人が色々なことを言うのですが、自分なりに時々考えたりしてます。

 でもそれはあくまで「私の答え」。
 色々な答えがあってよいかなという感想です。 
 

投稿: なったん | 2007年6月14日 (木) 18時00分

なったんさん
 どうも。
 お気になさらず。Muも心のまにまに、心象風景を描いているだけですから。

 さて、今夕も責務全う。葛野記でも書いて、家路へとぼとぼ、ああ人生!

投稿: Mu→なったん | 2007年6月14日 (木) 18時09分

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