NHK風林火山(21)御神渡:おみわたり
今夜はあまり記すこともない。心身いささか、ここ数回の風林火山で消耗したようだ。今夜の勘助、由布姫の熱演にも、いささかあてられた。当てられたというのは、人の恋路にいわゆるアテラレタのではなくて、どうしても人の心というものはしんどいことだのう、という、そういう熱気ともうすか、しんどさに、疲れたと言うことだ。ニュアンスがむつかしい(笑)。
なにも考えない少年のころならば、今夜の由布姫のセリフのいちいちは、それなりに理解できた。晴信の首をとると言ったのは、彼を三条夫人からも奪いたい、彼が戦で死ぬことも見たくない、自分一人の晴信にしたいため、浅ましい心ばかりの由布だった、という告白はそれらしく、リアルに味わったかも知れないが。
由布姫も、女優柴本も、またしても嘘嘘しいセリフよと、内心おもっていることでしょう。いや嘘じゃないから余計に嘘嘘しいと言ったのだ。だれも嘘はついていない。そこが人の世の難しいところだ。
人は自分の心をようわかるものではない。
ここで京極堂がさっとあらわれて、パチンと手を叩くか、鈴を鳴らさないと、勘助と由布姫はまだまだ霧の中から抜け出ることはできない。
実はさっき、京極夏彦『前巷説百物語』を読み終えて、主人公の「小股すくいの又市」の話を充分味わい尽くした所なので、嘘と真の境界がぼんやり滲んでしまったあとなので、今夜のドラマも、そんな風に思えてしまった。「御行(おんぎょう)したてまつる」、というセリフが、勘助の最期にでてこないと、ドラマの複雑さは、いろいろな解釈に枝分かれして、そのままで戦の謀略に隠れてしまうのかもしれない。
諏訪湖の御神渡(おみわたり)があった。由布姫はそれをみて吉凶占う立場の少女(16歳かな)だった。専念できる仕事だったろう。立場が変わり、状況が変化し、自らの心身も複雑になり、引き裂かれた運命に投げ込まれると、もう、もとには戻れない。もどれないまま諏訪の御寮人として生きていくしかない。
と、曖昧模糊になってしまったが、侍女が自ら命を絶ったのはなかなか息苦しいことであった。
予告編では、雪斉坊主がでていた。来週がまた楽しみ。本当に、上手な脚本だね(爆笑)。
そろそろ戦国末期の騒乱がまた始まることになる。
というわけで、今夜は余も心身完全ではなかった、脳も冴えず、筆も走らぬ。
ただ、それでは今夜の決着はつかない。
だから、一つ。
勘助は、小刀、そして大刀もすてて、由布姫を捜し求めた。
由布姫は、心のすべて(らしきもの)を勘助にぶちまけ、そして勘助を受け入れた。
これが今夜の結論だ。
補足
由布姫は心のおりを、勘助にみせた。
私には姫の目元がこう語っていたように、思えた。
「こんな浅ましい由布を、勘助、そなたはひきうけてくれますか」と。
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コメント
Muさん、こんにちは!私もレビューを書いていて今回はすごく疲れてしまい、なんかまとまりのない記事になってしまいました。いっそ完全にギャグにした方が面白かったかな…。
由布姫の柴本さんは一生懸命やるあまり、ちょっと役にはまりすぎてしまっているかな、という気がしています。由布姫、視聴者に愛されるには怖すぎるキャラになっている気がするし。
でも、Muさんのブログを読んでいて一つ解決できたこと。どうしても勘助が由布姫を慕いつづけているように見えるのですが、実は由布姫が勘助を必要としているのかもしれない、と。鋭い!と思いました。
そう考えると勘助のいささか度を越した動揺ぶりにも少しだけ、納得がいく気がします。
見る人によってまったく解釈が変わる。その通りですね。
投稿: なったん3211 | 2007年5月28日 (月) 14時39分
なったん3211さん、どうも。
もう少し心身冴えている時にコメント返をした方がよいのですが、ともかく一筆。
「人間の絆」というのは、愛とか恋とかを凌駕するものだと考えています。
由布姫は、勘助と晴信への気持が違うことを、昨夜少し気がつき、勘助は先回あたりで、由布姫を殆ど知ってしまった。
晴信負け説はMuBlogの売りですね(爆笑)
投稿: Mu→なったん3211 | 2007年5月28日 (月) 16時13分