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2007年4月29日 (日)

NHK風林火山(17)由布姫の慟哭

承前:NHK風林火山(16)由布姫と自害

 由布姫の泣く様をいろいろ考え込んで見ていた。両親と家のない16歳の少女が置かれた立場とはどういうものであろうか。そこにあるのは飢餓の恐怖よりも、生死の分かれ道に立った決断の恐怖であろう。現実の由布姫役・柴本幸は23歳の、長身らしい。今の青年は往時の7掛けとみてよいから、丁度16歳の役を演じてよい年頃だ。

 実父の敵(かたき)の側室になるというのは、相談相手もいない16歳の少女にとっては、どのような決断だったのか。晴信に頭を下げても、乱世だから、栄誉栄華は保障されない。晴信がいつ、姫の父・諏訪頼重と同じ運命になるかもしれない。武田晴信の気持ひとつで謀殺される可能性もある。たしか、晴信の母も、その父は信虎に討たれたはず。敵将の娘や妻を自らの側室にするのは、他の事例でもあったのか、常磐御前がそうだった。晴信の側近の多くは反対した。16歳の少女に晴信が寝首をかかれる危険性がある。由布姫はすでに、勝ち気、気の強さで知られていた。

 ドラマとして。多くのエピソードがあったが、それらはそれらを見ているときは飽きもせず、食い入るように魅入っていたのだが。しかし、こうしてドラマが終わり記事を書いていると、奇妙に記憶が薄れていく。晴信の妹、晴信の正妻。この駆け引きと言うよりも、二人の気持の動きは鮮やかだった。けれど、それらが急速にフェードアウトして、由布姫の涙と怒気とがくっきりと甦る。ここしばらくは、由布姫がヒロインなのだろう。

 勘助が二重、三重に自らを韜晦(とうかい)し、本心を別の方向に向けていき、その度に由布姫から面罵され、それでもあるかなしかの、唇をゆがめるだけの微笑みを自らにだけ見せたのが迫真だった。一旦は、姫から信頼を受け「山本殿」と呼ばれた勘助が、場面変わって障子を開けた途端、「下がれ。そなたの顔など見とうない」と冷気を浴びせられ、マリシテンの守り神をたたきつけられたのは、ドラマとはいえ勘助にとっては惨い立場だった。

 「それを捨てよ」「はっ」「そなたの信じる神など、私には無用じゃ」

 こういう葛藤を抱え込んだまま、軍師山本勘助は晴信につかえ、由布姫を守る。16歳の由布姫に46歳(推定)の勘助の真意、雅量、愛、忠誠が理解できるとは思えない。醜く、汚く、策略に生き、晴信の「影」となって生きる勘助の気持は、本当は現代人の多くにも理解できないことだろう。勘助が「そのように生きた」ことは、ある種の感動をもたらすが、「なぜ、そうしたのか」これは理解を超える。
 おそらく今年の風林火山は、なぜ勘助がそのような生き方をしたのかを、ドラマとして定着出来たとき、大成功だったと、大晦日に私は言うのだろう。
 「勘助の純愛?」駄目だね、それじゃ。視聴率は上がっても、つまらん。
 「忠義?」うむ、感心しないな。
 「……?」
 
 ともかく、ここ数年間、NHK大河ドラマの役者達には、大抵感心してきた。今年も、何人も感心する役者がいて、余は実に満足である。来週も、見よう。

今夜の名台詞
  由布姫 「下がれ。そなたの信じる神など、私には無用じゃ」 

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» 風林火山〜第17話・悪役! [一言居士!スペードのAの放埓手記]
風林火山ですが、山本勘助(内野聖陽)は由布姫(柴本幸)を逃がそうとします。勘助は、由布姫に諏訪の姫であることを忘れひっそりと生きるように勧めます。諏訪御料人の由布姫は自害したことにして、実際には生かすという策略です。勘助としては、お舘様も裏切らず、由布姫も助けようという苦肉の策だったようです。(大河ドラマ・風林火山、第17話・姫の涙、感想、以下に続きます)... [続きを読む]

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承前:NHK風林火山(17)由布姫の慟哭  タイトルに「由布姫」を付けるのは止めようと思っていたが、今夜見終わってやはり、そのままにした。他の男優も女優も、実に気に入っている。ネネも板垣も、当然だが山本勘助も。しかし、どう考えてもここしばらくは16歳の由布姫の心の動きにファンも演出もNHKも、そしてMuも振り回されてし... [続きを読む]

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