NHK風林火山(15)悪鬼
今日は終日、自邸で花をみて、オ・グルニエ・ドールのイチゴ・ショートケーキをうまうま、スポンジの味わいがよいな、と風呂に入ってゆったりと芳香剤のなかでまどろみ、さて夕食は久しぶりの手巻き寿司、……。
そんなおだやかな時間に、悪鬼が舞い降りた。
たしかに、ここには「義経」の様式美はない。
「新選組!!」の春日の暖かさはない。
「功名が辻」の「旦那さま~」「千代~」のおっとり感もない。
あるのは黒き鋼鉄の謀略、血の騙りだった。
血も涙もないとは、こういう世界を言うのだろうか。
今更、なにをと自問自答しながら、山本勘助の隻眼の光にすいこまれ、板垣の重厚で真摯な言上に胸を突かれた。そこに点描される美少女・由布姫のまなじり決した怒気のオーラ。
ああ、諏訪頼重のうつろな自嘲。晴信の妹・妻ネネに、最期を語りかけても娘・由布姫には目も向けない空々しさ。由布姫の、父を追う視線。なかなか、芸が細かい。
謀略は緻密さを極めていた。どんなことでも100%確実なことはないのだから、常に半々の確率で事が進む。それを後から振り返りまとめてみると、こうなる。
1.武田家、晴信は、諏訪頼重が勝手に関東管領と和議を結び、頭ごなしの外交をし、信州での武田の拠点を奪ったのは、許し難い裏切り。
2.諏訪は、若い晴信を侮った。
3.諏訪には晴信の妹も嫁ぎ、同盟国の形式を保ってきたので、諏訪を根こそぎ襲うのは義に反するし、妹も殺される。
4.ここで勘助の謀略が始まる。諏訪の縁戚・高遠に諏訪を襲わせ、武田は高遠の要請により諏訪に出陣することにしたい。高遠は、諏訪の全権、伝統の「大祝:おおほうり」にもなりたいようだ。
5.ここで今夜の綱渡りが始まった。高遠は、武田と諏訪の密約を恐れ城をでない。
もし武田が諏訪を単独でおとせば、妹ネネも、妹の生んだ息子も殺され、諏訪領民から長い恨みをうける。
……。
6.ややこしすぎて、うまく記せないが、ともかく板垣と勘助が、頼重に和議を申し込み、ねねとの間の息子を、将来の諏訪城主として安堵する条件を出す。
7.ところが、予告編では、来週あたり頼重は腹を切ることになり、勘助はまた鬼のような諏訪皆殺し策を献策する雰囲気(正確には分からない)
というわけで、45分間があっというまにすぎて、咀嚼するのが難しいほど謀略につぐ謀略。胸がすくようなというよりは、これほど軍師好きのMuも、山本勘助の考えを後追いできなくなった。
どうして、「醜い男」と、由布姫に面罵され通しなのに、山本勘助、なんとなく由布姫におかしくなっていくのか。これも分かりにくい。由布姫の、勘助を面罵する心情は、うそいつわりなく、フェイントなしの憎悪なのに。うむ。男女のことは分からない。その上、後世の武田勝頼の母は、この由布姫というではないか!
ではまた来週。
ちょっと、ぼんやり見ていると渦に巻き込まれるな。ちかごろになく、風林火山、熱気がでてきた。
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コメント
諏訪攻略に思う
武田には諏訪を攻略する大義が無かったし、攻略後の領国経営を考えるとイラクのようになってはいけない。土豪が仰山いた時代だし、由緒正しい武神の諏訪氏でしたからね。
今のアメリカに勘助のような軍師がおればな~~~。攻略後の経営が一番難しい。
将来、高遠が反旗を翻す訳ですが、その時も武田軍の大将は幼い諏訪氏の子供でしたね。晴信、勘助はどれほど諏訪氏を恐れ、尊崇していたかが判ります。
で、信玄の棺は湖底にあるんでせうか?
投稿: jo | 2007年4月16日 (月) 14時57分
ハノJoさん、
風林火山の将来はわからない、ということでいきましょう(笑)
そうですね、信玄が諏訪湖に沈んでいるなんて、黒澤明監督の想像なのか伝説なのか、ようわかりません。
しかし。映画って怖いですね。Muは黒澤映画を見て、決定的に、信玄が大瓶に入って諏訪湖に今もおられるという風に思うておりますよ。諏訪ほっしょうの兜。
その後、諏訪湖海中考古学、信玄墓、調査はすすんだのでしょうか?
そういえば、諏訪湖、恐竜さんもおったとか、あるいはハノJoさんの18番(これって、18番の意味を忘れました。オハコとか、十八番なんて、古語なんですね)、諏訪湖のヴィーナス。いろいろ伝説の多い湖ですね。
投稿: Mu→Jo | 2007年4月16日 (月) 20時28分