佐野藤右衛門邸の桜:20070403
佐野邸枝垂れ桜20070403-12
だが、桜季節から徐々に遠ざかる四月半ばに、あらためて心静かに写真をながめていて、それが細身で背が高く、手入れされていると、言葉になってでてきた。
ただ、幹が細身なのはまだ青年期だからかもしれない。霞のようなうっすらとした空は、満開ではなかったのかもしれない。
そんな反問も出はしたが、詰まるところ、佐野藤右衛門邸の桜はこの数年間、今の私の印象だったと言える。これは平成十九年四月三日の、午後の桜だった。
20070403-11, 06
近寄って写してみたが、どうにも「清楚」としか言いようがない。爛熟とは遠い位置にある清らかさなのだ。何かの要素が加われば、たとえば夜の篝火のもとならば、幽婉となるのだろうか。開けっぴろげな明るさはない。以前に用いた言葉なら、これは新古今和歌集の世界なのだろう。というと、それは洗練された桜世界と言ってもよかろう。
佐野邸は、広い。いつも目につく背高い桜木だけでなく、庭の奥を覗くと小さな桜木が可愛らしく咲いている。遠くに人影があった。突然、異邦の風景に出くわした思いがした。いつもは気が引けて、あんな奥まではいったこともない。カメラのレンズが、奥を確認してくれていた。
20070403-04, 00
この二葉の写真は、毎年撮っている角度だ。昨年は見ていなかったが、以前からカメラを構えると自然にこういう位置で撮ってしまっている。お気に入りなんだと、自覚した。
それにしても、枝垂れ桜のその名のように、一体どの枝がどの枝につながって、どこから宙に浮いているのか分からなくなる。こういう雰囲気も佐野邸の桜の特徴なのだろう。来年も、私はきっと同じ桜を同じ角度で写しているはず、と鮮烈に思った。
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コメント
浅茅原 竹毘古 様:
こんばんは、田中一郎と申します。
私は個人の趣味で、全国の桜の写真を私のブログに掲載させていただき、その写真をクリックしますと写真元のブログへリンクするということをやっております。
奈良の写真を集めている折、そちら様のブログを拝見させていただきました。
是非とも、掲載させていただけないでしょうか。
こちらにおいでいただき、判断していただき、コメントないしはトラックバックを送っていただくとありがたいです。
よろしくお願い致します。
投稿: 一郎 | 2007年4月26日 (木) 17時06分
田中さん、はじめまして、コメント有り難う。
確認しました。おもしろい企画ですね。
トラックバックしておきましたので、よろしく。
投稿: Mu→田中一郎 | 2007年4月26日 (木) 17時45分
MU様:
こんにちは、田中一郎です。
TB送っていただきましてありがとうございます。
こちらからコメントを送った、その日のうちにTBを送って下されたのにも関わらず、こちらへのコメントが遅くなりましたこと本当にすみませんでした。
写真を掲載させていただきました。
ありがとうございます。
私の住む東北地方の、この辺りの桜も葉桜となりつつあります。
五月の「こどもの日」の頃には青森の弘前辺りが見頃といわれております。
日本はまだ桜の季節のようです。
投稿: 一郎 | 2007年4月28日 (土) 14時10分
一郎さん
東北だったのですか。確認もせずに、奈良か関西のサイトと思っておりました。
そうですか。
5月ころに咲く桜。
地域によって、違いがあると、こういうコメントを頂くと、切実に感じました。京都は、もう花の一片もなく、桜木の下の私の自動車は、桜の実のない葉と小枝(なんと言うか)で天井が一杯です。花が散ったあとの後始末は、なかなか大変ですね。
それでは、これからも桜のデータベース、充実させてください。
投稿: Mu→一郎 | 2007年4月28日 (土) 19時59分
こんばんは、田中一郎です。
私の知識不足で、佐野藤右衛門邸は、奈良だと思っていましたが、京都にあるとご指摘を受けました。すみません。
こちらの写真を、京都のページに貼りかえさせて頂きました。
よろしくお願い致します。
投稿: 一郎 | 2007年4月30日 (月) 18時08分
田中さん
ただいま、京都を探して、トラックバックを投げましたので、奈良の分は削除して下さい。
いや、当方の錯誤と、田中さんの思い違いが交錯したようです。
最初、てっきり奈良の方だと思っていたのです。
~
そのまま、そうじゃないと伺っても、そのまま、錯誤から抜け出さなかったようです。いやはや。
だから、奈良の分としてじゃなくて、……。ようするに、錯誤からぬけだせなかったという次第(笑)
投稿: Mu→田中一郎 | 2007年4月30日 (月) 18時42分
MU様:
ありがとうございます。
これをきっかけに佐野藤右衛門邸について、ネットで少し調べました。
佐野家は、藤右衛門の名を襲名する現在16代目の名家なんですね。
16代目は造園業を営み、「京都の桜は、代々の藤右衛門の手にかからなかった桜はない」
と言われているのをはじめて知りました。
16代目が何かの取材のおりに、
「桜の名所にしたい? 名所というのは他人が言うてくれるもんや。つくるもんと違う」
と言っておりました。
京都の桜を支えてきたのが、職人だと知って京都の桜がますます好きになりました。
ありがとうございます。
投稿: 一郎 | 2007年4月30日 (月) 19時26分
一郎さん
京都はMuなど知らない、いろいろなところで深い世界があるようです。毎春おとずれる、京都市右京区・広沢池ちかくの佐野さんのお家も、どこにも看板も目印もなくて、ちょっといなかびた民家で、庭がひろくて、桜木がたっているのです。
桜が咲いていなかったら、気づかずに通り過ぎますね。
日本中、大抵の人は、、虚業(笑)の人以外は、熱心に毎日の仕事をしていたら、名所にするとか、宣伝するとかという気持は、浮かばないと思います。
もちろん、虚業には虚業の理(ことわり)があって、それはそれが仕事なんでしょうね。
MuBlogも日々、熱心に記事作っていると、気になりません(笑)。一息つくと、やれアクセス数がどうの、記事数がどうのと、気になります。
桜撮って、記事書いているときは、なんも気になりません。
そういうことでしょうね。
来年、また、一杯京都の桜を掲載しますので、よろしく。
投稿: Mu→一郎 | 2007年4月30日 (月) 20時22分