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2007年3月18日 (日)

NHK風林火山(11)晴信謀反、信虎追放

承前:NHK風林火山(10)晴信謀反準備

甲府の「躑躅ヶ碕館」・地図(人は城という考えからか、大きな築城はなかったようだ)
駿河の今川館(多分、家康築城の駿府城跡)地図
万沢口(JR十島付近)地図 (晴信が信虎を阻止した所。国道52号線、身延線十島近く)

甲府(甲斐)と静岡(駿河)

甲府(甲斐)と静岡(駿河)
 甲府市の躑躅ヶ碕館から静岡市の今川館まで、どんな道をどれくらいかけて信虎は出掛けたのか、それを現代の地図で見てみた。国道52号線、JR身延線沿いに南下したのだろう。たしかに静岡県境付近に、万沢口があった。現代だと山梨県になる。

 甲斐・甲府と駿河・静岡とは直線距離で80キロ程度ある。里数で20里。三日間ほどの旅程になるだろう。ここを、はるばる娘婿の招きに応じてわずかな伴連れで甲府から静岡に出掛けたのだから、信虎も戦国武将にしては優雅なところもあったのだろうか。駿府(今川館)では、京都の歌人飛鳥井氏や、信虎が滅ぼした大井氏(僧籍)、そして今川義元らと、曰くありそうな歌を詠んでいる。塵も積もらぬ老の身とか、戻る甲斐なし、とか意味が二重にとれて、当時の教養人の殺気だった言葉のやりとりが偲ばれた。

 三島由紀夫さんの小説で、歌にならないことは意味がない、ということが記されていたが(奔馬だったか、京風の老婆のセリフ)、殺気だったことや、血なまぐさいことも、歌にしてしまう術が当時はあったのかもしれない。

 さて、晴信が信虎への謀反を明かしたとき、部下達も、弟もそれに従った。なぜ従ったのかは史実としては知らない。ドラマでは、弟が兄晴信の器量を以前から熟知しており、父信虎の前で良い子ぶるのに疲れ果てたと述懐した。そのことで、晴信の心が解け、部下達も聡明な兄弟愛をもって甲斐一国がまとまると安堵した、と描かれていた。

 無理はなかったし、見ていても感動した(笑)。本当に聡明ならば、こんな時代に国主になることの負担や不安は、人を鬱にするだけの圧力がある。それをやすやすと引き受けたり、物欲しげに横取りするのは、才なきものの強欲といえる。だから、弟の真実のこもった兄への服従は自然に見えた。あれだけの暴君信虎、その子飼いの部下を引き受けると、考えただけで汗がでる。多分、当時は人の心もいまよりずっと荒っぽいところもあったろう。晴信にしても、本当に頼りにできるのは板垣一人だから、身内の、よくできた弟が付いてくれるのは、心強かったろう、とドラマの自然にしたがった。

 さて、もう一つの感動は、北条氏康の父「氏綱(うじつな)」の死にざまだった。もともと、氏康が以前、勘助の前でぼやいたように、氏康の祖父、創始者北条早雲は歴史に名をとどめる名士だし、その子氏綱も、氏康に情理こめた置き文を残すほどの名君だった。要するに、この「後(のち)の北条氏」は名君ぞろいだったようだ。

 置き文の内容をドラマでは、画面に重ね合わせて朗読していたが、しっかりした名文だと思う。多分漢籍などの名場面をいろいろコラージュして、そこに子に託すことばとして、氏綱の思想をまとめ上げたのだろう。病に伏す氏綱が語る言葉を聞いているだけで、気持がしゃきんとしてきた。ドラマでは「義を尊ぶ」ことの意味を充分に語っていた。下克上まだ治まらぬ時代だからこそ、信義を重んじたのだろう。今風に申せば、生きる、闘う、その実質的な美学を息子に残したといえる。

 美学だけでは生きていけない。確かにそうだ。しかし思うに、世間はままならぬ事が多い。狡く立ち回っても、マジに行動しても、うまく行くとき行かぬ時、いろいろある。どうせ五分五分なら、後味のよい「義」を打ち立てて行けばよい。私は実践的戦国武将、つまりリアリストのそういう仁義に関しては、うなずくところが多い。勝っても負けてもやがて死ぬ。ならば、気持よいやり方が理にかなっている。もちろん、この世には小狡く立ち回ることに快感を持つ人も多いことを知っての上の話(笑)。ただし、華々しく討ち死にするような、そういう置き文ではない。

 このMuBlog恒例大河ドラマ感想では、これまで主役の山本勘助にあまり言及していないが、結構、ものすごく気に入っている。別の番組、BS2で時々顔を見かけるが、風林火山での役造りは役者として相当に気合いが入っていると感じた。三ヶ月で、勘助の鬱屈、汗臭さ、泥臭さ、変わり身、歩行困難による苛立ち、それら人物像がひしひしと私の心に詰め寄ってきている。これからさらに軍師として、どう立っていくのか、楽しみが尽きない。

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NHK風林火山」カテゴリの記事

コメント

 (山本勘助)
 本当に言及が少なかったので、お嫌いなのかと思っておりました(笑)。

 信虎と初めての対決シーンでしたが、仲代さんに劣らない迫力・所作でした。
夕日を背に浴び、刀を振り上げるシーンは、とても美しかったです。
原作では、容姿の異形さに子どもが逃げていくほどだったと描かれている勘助ですが、そんなことを忘れさせるほど、その人間性に引き込まれています。勘助の持つ哀しさ・憎しみ・愛しさなどが、よく伝わってきます。
 軍師としての活躍はこれからですね。私も楽しみにしています。

投稿: wd | 2007年3月18日 (日) 22時45分

面白くなってゆく

 今日も、ハノイで夕方6時から鰻丼と肝吸いを食べながら観てました。

最後に信虎が自分が厳しく育てた晴信がいる限り甲斐は安泰だと言うてましたね。何か、救われましたね。

 この鰻丼ですが、先日山本先輩の土産で貰った真空パックの鰻で暖めるだけで、いいやつ。絶品でしたね、美味しかった。

投稿: jo | 2007年3月18日 (日) 23時26分

Wdさん
 ウチノ・セイヨウさんは、私には最初よくわからない役者でした。一見、二枚目の男性というものは、「男が美麗で、なんとする」という思いが先立つわけです。世の中での、観賞用男性をみてさわぐ若い「お女中」達の心理がまったくわからなかった。
 同性には、意気地があるか、仕事ができるか、教養見識あるか、このくらいしかもとめないものです。

 しかし、この数回、勘助には風圧を味わってきました。あれこれいう必要がないくらいに、山本勘助を造形しています。感心です。
 仲代さんと渡り合えたという点でも、すごいことでした。

 なお、仲代さんも言及少なくなりましたが、大満足しています。夢にあの不気味な声調が聞こえてきます。ついでに、くるみ割りも。

投稿: Mu→Wd | 2007年3月19日 (月) 06時11分

JOさん
 ハノイでNHK風林火山って、おもしろね。
「晴信がいる限り甲斐は安泰」
 仲代信虎のこのせりふは、ツボにはまっておりました。父子相克というのは、そこまでねじくれたはての、なにかの和解だとも味わいました。
 殲滅せざるをえない強敵同士となった父子の落ち着き先として、この武田信虎追放劇は、ひとつの範になるでしょうね。

 昨日昼食は、99円の親子丼ぶりでした。量がすくなかっただけで、鰹出しの、なかなか美味しい物でした。100円ショップという存在は、不思議ですね。戦国時代に存在したら、人気でたでしょう。

投稿: Mu→Jo | 2007年3月19日 (月) 06時17分

 あの~・・。
内野聖陽さんのお名前は、(ウチノ・マサアキ)と読みます。本名も同じです。

 お言葉を返すようですが、内野さんは(タッキー)ほどの二枚目だとは思いませんし、内野さんファンの心理は(世の中での、観賞用男性をみてさわぐ若い「お女中」達の心理)とは、ちょっと違うなと思います。

 男優であれ、女優であれ、最近は(写実とリアリズム)が混同され、ナチュラルな演技がもてはやされているようなところがありますが、今年の『風林火山』は、リアリズムを追求する本格的なお芝居で、俳優のみなさんに(役者としての覚悟)を感じます。
だから面白いんでしょうね。

投稿: wd | 2007年3月19日 (月) 08時29分

内野聖陽は二枚目?

 彼に関するコメント・バトルおもしろいですね。
もっとやって、といいたいところです。

 彼のファンであるふうてんはこう思います。
彼は二枚目ではなく一枚目の要素と三枚目の要素を持っています。
足して2で割れば二枚目ですが・・・。
決して美男子ではありませんよね、顔の作りが。

 当方は風林火山は見ていなくて(蝉しぐれ)だけの印象ですが、内野聖陽はセリフにないものを表現できる役者だと思います。
思いのようなものを表情やしぐさで表現できるタイプですね。
NHKの(大地の子)で世に出た、上川 隆也(かみかわ たかや)くんと同質なものを感じます。

 きっと子供から大人になるまでスンナリとはいかない環境だったのだろうと愚察します。
グーグルに聴くと世田谷生まれで早稲田大学の政経を出たといいます。
そこがタッキーとはちゃうのではないでしょうか。
あとは、をなごはんたち、好きにしなさい、といっておきましょう。

 一路真輝と結婚して女の子もできたようです。
なぜかふうてんは一路真輝のファンでもあるのです。
小椋桂のセリフじゃないけど人生って不思議なものですねえ。

投稿: ふうてん | 2007年3月19日 (月) 09時20分

WDさん
 うちのさんは、好いということで。
 なお、Muは、たっき、の義経、実に感動しております。
 
 疲労がきつく(笑)、文章がうまくでてきません。
 風林火山、よろし。

投稿: Mu→Wd | 2007年3月19日 (月) 16時31分

ふうてんさん
 二回も卒業式に午前、午後でて、エコノミー症候群ですなぁ。

 ということで気息奄々、バトルはむりです。
 MUはBS2で、馬の骨がどうした、というのをかいま見て、今の勘助と、ちがうような気がしたのです。今の勘助、あれは二枚目ですよ。
 風林火山、よろし。

投稿: Mu→ふうてん | 2007年3月19日 (月) 16時33分

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