小説葛野記:20070302(金)言葉と歯医者
早朝から、葛野近所、桂川の東側にある小さな歯科医院の診療椅子に横たわっていた。ギリギリ、ツーン、しゃかしゃか。終わった。毎週一回で、合計4回通っただけで、すべての歯の治療、その上に隙間を詰めるなど美容整形までしていただいた。自己負担金は4回合計で、1万1千円ほど。
まさに名医だった。H歯科医院については、後日記録しておきたい。
医者嫌いの余でも、まれに感動が深い。
余は元来技術者性向があって、どのような資格や経験を持った人でも、下手は下手。余が直したほうが、ずっとマシということが、良くあった。自動車、家電、自宅、自身病気、なんでもかんでも手かざしで直してしまう(笑)。
しかしなぁ、歯。
二年前に図書館の主任さんに教えてもらったのだが、半分邪魔くさくって、すておいた。今年に入ってからは、ときどき綿棒にキンカンを浸して、歯にあてて独自の麻酔療法をしていたが、乱暴というか、生兵法がたたって、唇がアンモニアでただれてきた~。それでも虫さされキンカン麻酔で歯の痛みは約一週間緩解するのだが、もう、ダメと思って二月に通い出した。
~ああ、この続きはまた、今度。
それでじゃ。
横たわっている間、例のミンスキー先生を考えていた。昨日、第23章「比較」を読み終えて、またまた感動し、実はこれからの午後は、24「フレーム」、25「フレームアレイ」、26「言語フレーム」の合計三章分を、約4時間半かけて、読み解こうと考えている。途中で邪魔が入ったり、邪念がはいったら、26「言語フレーム」は明日にしようかとも思っている。
フレームについては、いろいろ経緯があって、もっとも大切に読み解きたいところなのだ。翻訳すると、枠、枠構造、UML風にいうと、クラス関連表現。……。要するに、事前に定まった構造を持った枠を用意して、そこに要点を押し入れたり、引き出したりする入れ物、入れ物間の関連、その原形の考え方があるようだ。
もちろん、そういうフレームは、人の場合、おそらく経験によって構造が強くなり、複雑になるのだろう。最初は、箱がいくつかある程度か。いや、小箱すらないかもしれない。
で、考えていたのは、ギリギリ、ツーン、しかしか、という歯科治療の音のなかで、昨日、なぜ大人になると外国語の発音がネイティブに近づけないのか、その理由の仮説がおもしろかったわけだ。
ミンスキー先生が申されるには、大人と幼児との会話にあって、大人が幼児の言語を真似しすぎると、大人も幼児も、上等な大人言語世界を学ぶ必要性をなくし、いわゆる退化するから、進化の過程で、少年少女期にスイッチが入って、母国語の基本発音を把握したなら、後は不用意に他の言語を真似できないようにするためだ、とのことだった。
もちろん心理学者や、言語学者は、このモデルを否定するかもしれない。
だが、ここに人工知能における「心の社会」モデルをつくることの重要性や、難しさがある。
極端に余が解説するならば、(つまりミンスキー先生や人工知能世界のお墨付きはない)、人工知能は、生物としての人の脳内構造をそっくり真似しなくてもよいわけである。たまたま人間は言語を獲得した。その獲得の方法は実験や探求で、遠い将来には明確になるかもしれないが、まったく人間と同じ方法論で人工知能をつくる必要はないとも言える。
すなわち、ミンスキー先生の脳に、知識のモデルが表現できたなら、それはそれで新しい脳モデルと考えればよいわけなのだ。進化の道筋は、一つではない。もしかしたら、ミンスキー先生流の脳を持った生物の進化もありえる。
と、考えていたら、治療が終わった。
歯科名医については、また後日。
さて、鍵かけて、研究読書しましょう。電話も外して。息もとめて~。
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