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2007年2月 6日 (火)

室町和久傳(むろまち・わくでん)

室町和久傳(京都市中京区堺町姉小路上丸木材木679 電話075-223-3200)地図

室町和久傳

室町和久傳の外観
 先週の吉日に、京都室町の和久傳へ行った。京料理の和久傳は三店あるようだ。高台寺和久傳(高台寺北門前)、京都和久傳(京都駅伊勢丹)、そして京都の御池・堺町通りからやや下がった(南下)ここ室町和久傳。なんでも昔は京都府の北、峰山町で料理旅館を営んでいたようだが、そこは廃業。現在の和久傳との関連は謎(笑)。

 前振りはこれくらいにして、お昼のお食事。写真をとりました。遠慮してすべて手持ちのフラッシュ無しです。そうそう、コースはお昼の6000円クラスでしたなぁ。お隣に若い男性が二人おりました。それぞれ一人客で、カニとか耳にはいりましたから、お二人とも1万円コースだったような。なんとなくおしゃれな男性達で、どっかの文系准教授という風情でした。若い身空で、真っ昼間から昼食を和久傳でいただくなんて、うらやましい。在京の暇な作家だったりしてね(笑)

 ゆったりと一時間半ありました。電話予約が必須でしょうね。飛び込みだと、他の客と同期が取りにくくなりそうな、静かな時間が乱れるような~。

(1)土筆(つくし)の塩湯

(1)土筆(つくし)
 ちょっと驚きました。つくしと塩湯という言葉が耳に入ったのですが、てっきり食前酒と思いました。しかし、あるかなきかの塩味でした。つくしが持つ塩味なのか、塩を入れたのか、分かりませんでしたが、おそらく土筆を頂いて、心の準備をして下さい、という意味だったのでしょう。精進料理ではなかったが、野の味、野菜系が主のコースでした。

町屋風の高い吹き抜け(西側)

町屋風の高い吹き抜け(西側)
 こういう町屋改装のお店はこの数年都振りのようだ。外国の人もそうして住んでいるのをTVで観たことがある。ウナギの寝床のような空間制限を上手に生かした手際は京都町衆の歴史なんだろう。カウンターで頂いたのだが、眼前には常時三人ほどの白割烹着の青年達が、魚を切ったり、炭火で焼いたり、盛りつけしたり、お酒をついでくれていた。正式な調理場はその奥にあったが、目の前の備長炭焙りをじっと観ていた。そして時々天井をながめた。京都だねぇ~と、思いました。いや、もちろんそういう演出に乗るのが良いのでしょう、プラス志向のMuなんだから。

(2)茶碗むしのような(すっぽん付き)

(2)茶碗むしのような(すっぽん付き)
 京料理には無知なのだが、随所にとろみがついていた。穏やかな、舌先がつるんとする程度のとろみだった。味わいを上質な吉野葛でつつんでいるんだなぁと、思った。すっぽんが、動物性タンパク質として、画竜点睛の役割をもっていた。とろんとした卵スープに、一切れはっとするような強烈な味をもたらした。木のスプーンが付いていたが、途中から器に口をつけて、ぐびぐびと飲みこなした。よいお味でした。温度、とろみ、おだし、そして一切れのスッポン。うふふ、でした。

(3)よこわの備長炭焙り

(3)よこわの備長炭焙り
 この「よこわ」のあしらい方に目が開かれました。炭火で焙るというのは、実に手間暇がかかるわけで、加減を失敗せずにこなす手練。焼き網を炭火の上に直に載せたりもしていました。うむむ、ですね。炭火の匂いがよこわについてきて、香ばしい味でした。焙りですから焼き魚定食とは全く異なるわけです(笑)。お造りと焼き魚の中間に、焙り魚料理の真髄があるようです。で、大根おろしじゃなくて、カブラおろしがたっぷりそえてあって、さらに吉野葛でとろみをつけた醤油味風のソースがかかっているわけです、ワサビ付き。なんともねぇ、京料理の面目躍如。味も絶品でした。もしもトロだったらキツイでしょうし、脂ぬきの白身魚だったらかぶらに負ける。よこわ(黒鮪の幼魚名)だからこそ、活きた。でしょうか、評論家風に言うとね。

(4)菜の花の胡麻和え

(4)菜の花の胡麻和え
 コース形式ですから、そのシークェンス、順番が大切なのでしょう。さっきの(3)の次に突然ラム焼きや、トロ刺身がでたら、ぎゃふんですよ。精進料理の極致がこういう胡麻和えに感じられますが、あわやかなナマグサが前後にあるから、菜の花の味わいも引き立つ。もしもこれだけが単品ですとぉ~。もちろん、こういう単純に見える料理は、味が難しいとも思いました。若い人、若い奥さん方ですと、まず無理でしょう。料理は、文化の真髄、でしょうね。

(5)ブリ・ステーキ、大根

(5)ブリ・ステーキ、大根
 ブリ大根と言えば、ブリのアラと大根とを煮詰めたものが庶民の味ですが、こちらでは、趣がすこし異なるようです。推理ですが、ブリと大根とは別々に調理し、それを合わせて出したのではないでしょうか。青年の言葉に一瞬「ステーキ」とあったのです。切り身の形良いブリでしたから、一緒だと煮くずれしていたかもしれません。

竹酒:和久傳

竹酒:和久傳
 ここで、お酒のことをひとこと。冷酒「和久傳」は、(2)の茶碗蒸し風スッポン・スープが出されたときに、すでに添えられました。青年が竹のおちょこについでくれるわけです。日本料理には冷酒(れいしゅ)が似合いますね。氷で小綺麗に竹筒が冷やしてあるのですから、間違っても「ひやざ~け、の~めぇ~ば~」と歌うわけにはまいりません(三波春夫の絶唱、大利根無情)。オリジナルが「加賀のかぐや姫」の可能性もありますが、不明です。和久傳と記してあるのだから、特製品と考えてもよろしいわけです。相手先ブランド品なのか、どうか?

(6)炊き合わせ(温野菜)

(6)炊き合わせ(温野菜)
(7)ご飯:寿司
(7)ご飯:寿司
(8)デザート:三宝柑
(8)デザート:三宝柑

中庭の灯籠:室町和久傳

中庭の灯籠:室町和久傳
 最後のデザートはとても口当たりがよかったです。こうして一時間半、堪能したのです。味が残らないという不思議な印象もありました。それは穏やかな味わいだった証でしょう。料理も洗練されてくると、瞬間瞬間箸をつけ舌に喉に触れたときだけ味わいがでて、それが過ぎると、何も口にしなかったような気持になる。デザートの冷やっこい舌触りだけが、ほんの少し残っていた。これはなかなか真似のできない技なのでしょう。

由緒
 和久傳の歴史を詳細には知らないが、記事1によれば、「丹後峰山の有名な料理旅館」だったようだ。京都東山に出店し、その後独自の位置を築いたという。記事2によれば、今は廃業した峰山の料理旅館はなかなか居心地がよかったとのこと。Muも昔、京都府のそこに鄙にはまれな食事処があると耳にして、行こうとおもってうん十年たってしまった。
 歴史がおもしろそうなので、お店の人にも聞かず、blogだけで調べようとしたが、混乱してきた(笑)。紫野和久傳という名称があって、紫野といえば京都に地名があるので、そこにあるお店かとも思ったが、そうでもない。料理の和久傳と関係はあるようだが、紫野和久傳とは、お持ち帰り商品・食材の総称(おもたせ)のようだ。と、結論したが、事実は如何に。ガイドブックを探るほどのことでもなし。和久傳さんのHP宣伝はデザイン偏重なので、少しわかりくかっただけのこと。

参考
 記事0:室町和久傳(これが、料理店の公式ガイドに相当するようだ)
      紫野和久傳(Mu笑:和久傳京都三店、これが難しい)
 記事1:鯛ちらし9月27日号(京都を歩くコラム)
 記事2:和久傳・京都峰山町(ていたらくBlog)
   峰山付近地図(峰山和久傳がどこにあったかわかりませんので、大体の位置を示します)

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コメント

風林火山のコメントのお返事、ありがとうございました!…と、こんなところでレスしているのも何ですが(汗)。実は京都市在住なもので、ふと目に付いた記事がこれだったのです。
15年も住んでいると色々なお店に行ったことは覚えていて、素晴らしいお店があったことも覚えているのだけど、もっぱら自炊だし、いいお店には当然のことながら、そうそう行けるわけではないので、お店の名前をすぐ忘れてしまうんですね…(だってたくさんありすぎだし)。今度親が来たらたかって一緒に和久傳に行ってみようかな、などと思いました。

投稿: なったん3211 | 2007年5月22日 (火) 16時15分

コメント有り難うです。
 京都は、さがせば地元の人に愛好されている佳い店がたくさんありますね。
 和久傳は、昔は京都府の北部にあったようです。
 こういう店に行って、よかったですよ。室町だと新幹線も不要ですから(笑)

 たしかにお安くはないけど、昼だとべらぼうでもないです。ひと味ちがいますね。食べた後に残らないのです。これが素晴らしいことです。

 風林火山だけじゃなくて、食事どころ、お店巡りも、Muのささやかな楽しみとしておきます。

では

投稿: Mu→なったん3211 | 2007年5月22日 (火) 18時13分

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