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2007年2月28日 (水)

図書館司書採用試験問題概説:県立図書館・関西・200702

 図書館司書試験の情報があったので、少し考えてみる。相当にMu流に勝手に考えるので、あえて試験機関名は伏せておく。だから、一つの仮想的な模擬試験解説と考えていただきたい。

状況
 2007年2月に、関西の、ある県立図書館で司書採用試験があった。この場合、県立図書館だけではなくて、県立大学図書館司書も含まれる可能性がある。
 採用予定数は、多分1名(補欠もいれて2名前後か)
 受験者数は、300名ほど。
 第一次試験合格者は、7名。
 第二次試験は、面接と小論文。まだ行われてはいない。(と、仮想的に書いておく)

状況の考察
 機関毎に大抵、試験の時期は毎年同じ月、同じ季節が多い。
 それにしても、この比較的押し迫った時期。採用が一名ということから、退職者数がなかなか分からなかったのか、あるいは年度末試験が好みの機関なのか、と推量できる。他府県では先年初秋に試験を開催しているところもある。
 もちろん空き定員がないと、試験は行われない。
 補欠の可能性は、たとえば試験が年度前半に行われる機関では、国立国会図書館などが競合相手になることがある。国立(法人)大学と、国会図書館を両方受けて、後者が通ると、前者を捨てる不届きな人もよくある。こういう場合、補欠対象者を選んでおかないと、ひどいことになる。

 で、300名も受ける。にぎにぎしくてよかろうが、受験者にとっては辛い。ただ。まともに勉強して受ける人は、30%と見ればよかろう。だから、90人が真の競争相手となる。
 たとえば100人の授業で首席になる人を想像すると、基本ができて華がある。首席クラスは必ず数名いるので、一名が選ばれるのは偶然も多いだろう。

 面接の、笑顔一つで左右される。それはそれで良いことだ。確実な人事判定など、あると思うのが間違いだ。だから、逆に落ちても、心がさわがない。「たまたま、私は落ちた」。「別の面接官なら、通ったかも知れない」と。その心が、人生でどれほど大切かを、いつか思い知るがよかろう。受かってからの40年、こっちの方が余程、大変なことなのだ。常に、是非は、人によって異なる。これが正しい社会観である。

 ところで。
 300名の中の、たった一名。Muが面接官ならば、あえて、7番目あたりを採用する。司書試験は科挙とは違う。異様な天才であっては困る。せめてまともな秀才くらいが、一番将来性が高い。

試験概要
 教養試験(マーク形式)、図書館学専門試験(記述)、小論、面接。

 この県立図書館はフルコースを採っている。
 しかし大抵は、教養試験で足きりが行われる。記述の専門試験を採点するのは、技術的に難しいことも多いから、教養試験で狭める方法はあり得る。実態は分からない。小論文になると、参考程度と、書いてある試験もある。

 この図書館の場合は不明だが、教養試験と面接とで決定することが多い。各組織とも押し寄せる改革、定員削減に常に追われているから、わが国では真のスペシャリストとしての司書を求めていない風潮がある。つまり、司書として採用しても、将来別の部門でも役立つ人を内心求めている。これは本当に大きな問題なのだが、話がそれるので止める。要するに、公務員として、まともな常識、教養、一般解を持つ人が優先される。だから、教養試験と面接とに重点が置かれる。

 面接についても、今回は止める。
 別途、功成り名を遂げた社会人達にインタビューして、まとめてみる。ちなみに、Muは面接すると落ちるタイプだから、ちゃんとした論を今は記せない。

1.教養試験(マークシート、2時間、40問)
1.1 概要
 問題数も適当で、時間も十分にあり、出題も基礎的な問題ばかりらしいが、科目の選択はない。だから、高校卒業時の全科目が対象になると考えて良い。特に社会と理科とは、履修していないと、なかなか難しいはずだ。
 ただ、Muならあらかじめ、社会、理科、それぞれ決めておく。たとえば、日本史と世界史、生物と化学、とかのように。

*社会科学系
 地方選挙や内閣・国会の仕組み等の問題が多い。公務員であるかぎり、憲法をはじめ、三権分立の中身は大切だろう。今回の場合、人文系に属する文学史の中でも社会的な設問があったようだ。つまり、あらゆる局面で、政治、社会的・行政的な視点が必要とされる。

*理科系
 物理(力学)や地学なども出題され、なかなか大変なようだ。
 数学は、計算問題はなく、グラフや図形の問題が多かったらしい。

*人文科学系
 国語・英語は、要旨把握の文章理解のみ。現代文3問、古典1問。英文3問。
 英語問題も、国や府県立レベルだと出題される。国の場合は必須と考えるべき。
 ともかく読解力を求められる。特に、国語をおろそかにしないこと。
 古典も、細かな文法知識よりも、擬古文なら現代文と同じように読解できるだけの、日頃の読書が必要だろう。現代人にとっては、漱石や鴎外はすでに古典に属するようだが、漫画を読むように漱石や鴎外も読めるだけの日頃の読書が、実力を発揮するだろう。

*知能・数・推理
 よく試験対策問題集に出てくるような、組み合わせ、推理の問題。こればっかりは、練習するしかない。

1.2 教養試験対策
 同じことを何度も記す。
 過去問が八割と考えること。
 勉強の友には、国試の3種、地方初級、これらの解説書を何回も読む。同種の問題集は完璧に解けるようになるまで、何度も練習する。
 ほぼそれが圏内に入った頃には、国試の2種、地方上級の問題集を、じっくり時間をかける。
 つまり、高校卒業までの内容を理解し、把握することが先決。それが国試3種、地方初級の解説書および問題集である。大学生で、高校の授業内容をまともに把握出来ている若者は、実に少ない。これを思い知ることから、公務員試験対策が始まる。

 国試2種とか地方上級の試験内容については、年次ごとの試験内容を、図書館を利用して多くの問題集から補足し、エクセルなどをつかって、科目毎に大きな表を造るとよい。その問題が高校科目のどこの何に相当するかを考えることにより、実力が付く。年次・試験項目のマトリックスだな。
 こういうことをするためにも、いやしくも司書を目指す人は、司書受験を高級な趣味と捉え、ゆとりを持って時間を掛けて、遊ぶように学ぶ必要がある。焦ってばかりでは、国や地方の将来を考え奉職することなど、無理である。

 出来上がった年次・試験項目ごとのでっかい表を眺めていると、自ずから、次年の試験内容が浮かび上がってくる。なぜなら、試験問題を造る人達は、大抵、当該機関がそれまでどのような問題を出してきたかを、確認した上で、新たに問題を造るという常識がある。

 人の心理から考えると、先年度に出した傾向の問題は、あまり続けてだすことはない。先年度に、源氏物語を出したなら、今年度は、平家物語になる確率が高い。先年度にギリシャ哲学を出したなら、今年度は孔子様を出す確率が高い。先年度に中世能楽をだしたなら、今年度は、そうだな、歌舞伎なんかになるでしょう。

 この考えは、総ての科目に通用する。もちろん、司書専門試験でも。
 だから問題を、ご自分で作ってごらんなさい、とこれまで言ってきたが、誰も信じない(笑)。
 そして、そういう山かけは、一週間前とか、試験会場で直前に、参考書を見るときに、確かめること。

 普段の努力による実力にプラスして、この山かけがどれほど大切かは、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読まれれば、愕然とするくらいに、よく分かる。たしか秋山さんの弟が、山かけの天才だったようだ。ああ、それを読むだけで幕末から日露戦争までの日本史は、完璧になる。
 公務員試験対策学校の目玉は、山かけにある。
 だがしかし、大抵の人は授業料を払えば気が抜けて、勉強をしなくなる人もおる。
 自分で、分析し、問題を自分で作ったとき、実力がじゅわりと血肉になる。
(と、だんだん筆致がMu流になってきたので、ここで止める)
 
2.司書専門試験(記述、1時間半)
2.1 概要
 記述式だが、選択肢のある問題がほとんどらしい。ちょっと分かりにくい。情報提供者に再確認しようと思ったが、仮想試験なので、Muが考えることにした。
 そうだなぁ。5つの虫食い問題文がある。この一番妥当な文を選び、かつ虫食い部分を自分で穴埋めする。かな? 手が込んでいるな。手法からして、想像するに、ちょっといじわるな問題も多くなりそうだ。

*図書館法関係
 図書館に関する法律や例規などの穴埋め問題、制定された順の並び替え。
→図書館法、著作権法、複写の事など、大切。今後はひょっとしたら、「図書館と個人情報保護法」なども出てくるかも知れない。

*資料組織関係
 タイトル・著者・請求記号が正しいものを選択する問題。
 4タイトル・4著者名から、それぞれ請求記号を特定し、順に並び替える問題。

→目録であれ、請求記号、分類であれ。実務に直結する問題は、生物学を学ばず医学部入学のような秀才が一番不得手とするところだ。意外に、図書館学を学ばずに、上等な司書試験に受かる秀才がいるのだが、こういう人は、こういう問題が解きにくいことが多い。
 逆に、資料組織の実務面を問題として出す図書館は、司書好きにとっては有利かもしれない。

*図書館史関係
 図書館史の穴埋め問題。ただし選択肢から、文章に当てはまる名称を選ぶ。

→図書館史は、問題が定まってくる傾向が強い。つまり、あまり細かなことも出せないし、図書館史自体が司書科目の中では、たしか選択になっている(笑)。教科書の太字になっている名称と、時代程度は身につけておかねばならない。
 知人に図書館試験問題を分析している先生がおられて、それをみせていただいたところ、驚くほど傾向は毎年、どの試験でも決まっている。たとえば、芸亭(うんてい)、紅葉山文庫、……。

*英語問題
 図書館の例規と思われる英文一題。単語穴埋め(記述)、要旨把握(選択)。

→英語は、教養試験と同じく、読解・要旨把握が多い。ほとんどそうだと言ってもよい。英作文とかヒアリングは、あまり聞かない、見ない。一般に、長文をどれだけ早く理解するかどうかにかかってくる。それと、解答文を選ぶ場合などは、大抵、解答文がおかしい物がある。それを消去する、……。まあ、そこまで細かく記すこともなかろう。こういうテクニックは受験生の方が優れている。

*統計、図表解釈
 県内図書館の貸出データ等の表を比較して質問に答える。

→この手の問題は、教養試験でもよくある。統計データ、表、グラフを見て、なにが現れているかを把握する問題。なにかしら、特異点の、その理由を聞かれる場合がある。解説と表とグラフを、相互に変換する練習をすると、目が肥えてくる。

2.2 専門試験対策
 「図書館ハンドブック」を三回は読み通す。
 図書館学概論の教科書を常にひもとく。
 薄い用語集を、丸暗記する。
 インターネット上での、国立情報学研究所(NII)、国立国会図書館(NDL)、米国議会図書館(LC)、当該受験機関のHPは、ネサフ定番とすべし。HPには、教科書に無く、しかしときどき試験に顔をだす宝石が転がっている。
 
 これを言うと、図書館学教員や出題者から非難されるのだが、教養試験にくらべて専門試験は楽かもしれない。やはり、傾向に変化が少ないからだろう。実技テストがないから、点取り虫君は図書館学を学ばずして通ることが多い。
 司書の資格は大切だと思う。2~3年かけて、みっちり学び実技したことが生かせるような専門試験になればよいのだが。ねぇ。

 で、逆に、「図書館ハンドブック」の厚さ程度なら、真っ黒になるくらいアンダーラインを入れて、書き込みすれば、通りやすい問題が多いとも言える。

追伸
 日頃新聞を読むこと、TVのニュースをみること(NHKがよい(笑))。
 知恵蔵とか、イミダスとか、現代用語の基礎知識とか、あのての本を座右におくこと。
 特に教養の時事問題などは、一年から数年前の事象が、まざまざと問題にでる。本当だ。

 司書職を求める人は一般に、暗くて、引き籠もりで、オタクで、社会全般に興味を持たない人が多くなる傾向がある(一体、誰のことや!)。だからこそ、節を曲げてでも、世の中のことに好奇心を持ち、社会常識を徐々に身につけた方がよい。それが、面接につながるのだ。

再伸
 数年掛けて、受かるくらいの気持を持つが良かろう。司書試験は高級な趣味。
 ただし、特に私立大学出身者は、入学時の受験科目数が少ないから、高校履修科目の把握が弱い傾向がある。だから教養試験対策は頑張る必要がある。気が向いたときだけの受験勉強では、道が遠いどころか、消える。毎日数時間勉強するつもりで。
 (普通は、それができないから、100人受験しても、真の競争相手は30人なんだ)

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コメント

科挙試験みたですね

 300人受験して合格者は一人ですか?合格する人は
秀才中の秀才という訳ですね。

今日は午前中、今度の工場の現場のワーカーの人々の面接試験をしてきました。今日は午前中に27名の面接をしました。

 ベトナムの若者は奥ゆかしいですね、日本のように自己PRをする人は皆無でした。こちらから、促しても言わないのですね。

殆どが20代の半ばの人々でした。住所は工場の近くの人々達で田圃の真中です。

 昔の私も考えてみれば、自己PRなんて出来なかったな~~~と、思い出にふけってました。

投稿: jo | 2007年3月 1日 (木) 17時54分

こんばんわ、joさん

 昨日今日とね、マシン関係できばって、そのうえ、昨日今日とね、会議もかさなって、なかなか心のゆとりができず、「心の社会」も、また今日は読めませんでした。
 おかしなもんで、毎日一章よめないと、ものすご気分が沈みますね。今回は数章続けて、フレーム、ということと脳の記憶構造部分だから、飛ばしよみするわけにもいかないし。

 それで。
 科挙。そうですね。郷士、進士でしたかね、まさにそういう雰囲気はあります。ただ、司書は宰相にはなれませんが。正確にいうと、現代は一種試験が宰相コースです。
 宮崎市定さんの「科挙」とか、最近では小説「蒼穹の昴/浅田」にくわしいですけど。
(ただ、宦官と、纏足と、科挙は、中国から輸入しなかったそうだから、公務員試験<>科挙、ですけど、にてますね)

 司書は、地方官僚、てな案配です。が、やはり普通のひと(現在のムも、そうです)には、うからない(笑)。変な人に限って受かる。そこが、試験制度の最大の問題でしょうね。

 で、なんかごちゃごちゃしてblogもまともに書けない読めない状態ですな。

 そうそう、JOさんには無縁でしょうが、CPUの発熱はおさまって、部屋はあったか、それでも39〜40度cでマシンは動いておりますが。

 ベトナム青年は寡黙なんですな。自己PRはアグレッシヴすぎる米国の真似かもしれないが、まったく面接で話さなかったら、どうにもならんね。で、ベトナム語はわかるのかな(笑)

 うむ。
 結局、上司は部下を三年かけて理解するとか。部下は上司を三日で見抜くとか。
 ムだと、非常時に腰抜かす人は、一度は見逃すけど、二回重ねたら、記憶からけしますな。人間、逃げる奴は、駄目ですな。
 むろん、ムなんかだれの記憶にものこりませんで。それに逃げ足も速い。あははは。

 ではまたね。

投稿: Mu→JO | 2007年3月 1日 (木) 18時48分

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