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2006年8月31日 (木)

首が痛くなるよな終日

 今日は、終日葛野でやっかいな仕事をしていた。午前中から極めつけの秀才が一人来てくれて、随分助かった、というよりもその先生が居なければ、ひとりでは出来ない大仕事だった。
 終わる頃、愚痴に愚痴ってしまった。
 「私は、なぜ、ときどきまれに、できそうにもない仕事を引き受けるのか、自分が馬鹿に見える」
 「ほう」
 「引き受けるときは、どんなことでも、すぐにできる、容易にできる、かんたんかんたん、と思ってしまう」
 「うん、あるね」
 「付き合いがまったくないから、まれに頼まれるとうれしくなってひきうけるけど、その日時が近付いてくると、地獄に嵌りこんでいく気分だね」
 「そうそう。そういうことあるね」
 「私は、自分が馬鹿に見えてきたよ。う~ん。もう、一切人とは話もしない、交渉ももたない、~とおもって十数年。ついふらふらと、その掟を破ると、悲惨な目にあう」
 「同じです」
 「え? 君が? 君ほどの秀才がそんなことで、悩むのかい」
 「なにをおっしゃる、大先生。いっつも、そういう事態におちこんで、胃を痛めておりますよ」
 ~
 というわけで、老若、愚痴合戦になりそうな時刻に、仕事が終わった。

 そういえば、昨日は学生二人に似たような話をしていたなぁ、とふと思い出して、けたけたと笑い出した。
 昨日はこうだった。
 『私は辛いことばかりするハメになる』
 「はぁ~。いつも楽しそうじゃないですかぁ」
 『馬鹿め、おろかものめ、君らは若い。なんぞ、ひよこに火の鳥の気持がわかってたまるか』と、これは口には出さず、目で言った。しかし、まったくこたえていない。
 『来年こそは、なんにもしないで、楽々気分だ。なあ、君』と、まだ未成年の学生に安心感を持たせた。
 すると。
 「お主、そのような、センセの甘言に騙されるでない。いつなんどき、不意打ちをくらうか分からぬぞ」と、ややすこし年長のものが、若い者にさとしていた。

 ~
 で、今日だ。夕方になって、とりあえず終了して、わが友、秀才先生は帰っていった。お礼に、分厚い図書を三冊も貸し出した。
 で、そのあと例によて、横臥して天井をみていると、首スジがいたくなっていた。
 それほどに、ハードな仕事だった。
 私は、こうして毎日仕事をしているのだ。

 かえろうとすると、別の部屋に一ヶ月ぶりの学生が顔をだした。もろもろややこしい話をして、しかしその続きを聞くのも首が痛くて、わるいけどさっさと帰還してしまった。そのかわり、その学生には菓子と飲み物を進呈した。

 というわけで、一日がくれていく。なるほど、人生とは、まれに人々と対話しながらすごすこともあるようだ。何十日も一人で葛野で定常仕事をしていると、ほぼ独り言が頻繁にでるころに秋風がふき、なんとなく学生達も顔をだすようになって、私も、野暮な仕事をする季節になってしまった。
 今日は8月最終日。

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