6月20日・祝祭日のハッカと黒蜜寒天
今日は6月20(火)、空は曇っていたが、なにかしら遠く、個人的な祝祭の日だった。
それで、気持の佳いことが二つあった。
一つは、シャワーを使った後、ハッカ油の小さな瓶から注意深く少量を手のひらに落とし、これを背中や胸にぺたぺたとすり込んだ。しばらくして、バスタオルで全身をぬぐって、新しいシャツに着替えた。ハッカの匂いと、心地好い刺激に包まれた。
薬局方・ハッカ油は使い方を間違わずに、ごく少量だと、実によろしい。
もう一つは、「仙太郎」という和菓子屋が高島屋の地下にあって、そこの黒蜜寒天を食べることができた。口上の小さな紙には、「私共のつくる和菓子は、感性に訴えるよりも、まず機能を第一義に。」とあった。この機能とは、後ろを読むと、美しいよりも美味しい、体を養う正しい食べもの、と続く。
それは半ば謙遜で、華美ではないが美しいし、実に美味しい和菓子である。
ただ、私は下戸だが、いわゆる甘党そのものではない。
結構ウニとか唐墨とか、いくらとかホヤとか、酒の肴も好きだし、酒もなめる程度ならあらゆる酒を美味しくいただく。体が痙攣し麻痺するから飲まないだけだ。
で、その仙太郎というのは、四条から新京極に入ってすぐ右手の、河原町に出る路地北に、現在も店があるのかどうかはしらないが、大昔は父が通った店で、そのあたりにあった。真向かい南のさらに奥まったところに鶴鶴という蕎麦屋もあった。この二軒は父の常連の店だった。
と、そういう記憶をひもといていくと甘酸っぱくて、悲しくもなるので、とどめておく。
今にいたっても、父よ、父よとつぶやくことがある。
これは世紀末の母の喪失とは異なった感情を伴っている。父は私が26の頃に世を去った、69歳。
少し大振りのカップに、寒天と中に小豆が埋まっている。そこへ多量の黒蜜を流し込み、食した。
まず黒蜜。実によい。上品なコクのある甘みだった。私は父の遺伝もあって、黒砂糖とか黒蜜に目がない。
次に寒天。おそらく最上の寒天を使っていると、想像できる味わいである。というか、歯ごたえ。
小豆の味はどう表現してよいのかわからない、私は意識を黒蜜に飛ばしてしまっていたから。
お値段は、おそらく500円に近い。高額だが、はやりのケーキに比べると高くはない。
と言うわけで、6月20日、蒲柳の質故に最良ではないが、心には明るさがぽっと灯った。
よき祝祭日であった。
地図→新京極の路地
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コメント
ハッカとメントールのこと
シャワーを浴びたあと、ハッカの香りに包まれて、黒蜜寒天を食べる。
祝祭日にふさわしいセレモニーで、幸せな感じが伝わってきました。
ハッカと聴いて、そういえば貴兄は昔、メンソール(メントール)のタバコを吸っていたのではなかったかしら、と思い出しました。
グーグルに聴きますとハッカにはメントールの成分が沢山含まれている、とあります。
シソ科ハッカ属とあり西洋薄荷はペパーミントで日本薄荷とともにハーブの一種である、とも。
京都の八橋はどうだったっけ?と調べましたがアレはニッキ(肉桂という樹の皮)だそうですね。
ハッカとかニッキとかは日本的な香りとはちょっと違うものとして子供のころの記憶に残っています。
Muさんは香りのものと、ウニとか唐墨とか、いくらとかホヤとか、あん肝とかの、味のコユイものがお好きなようですね。
投稿: ふうてん | 2006年6月20日 (火) 19時45分
ふうてんさん
元気なようで、祝着至極。
私は、ちとなまっておりますなぁ。
MuBlogを書こうとする意欲はたくさんあるんですが、そのとたんに、自分の書いた書評とか古代史とかパソコンとか、なんかねぇ、すべてが鼻についてきて、書けなくなる病。不思議に、こういう世間ではエッセイとかいうしろものは、ぽつぽつ書けるんですが。
しかしね。実に自分の世界が狭いことに気がつきます。サッカーもまったく見ないし、芝居も映画も行かないし、ひたすら葛野と木幡を往復するだけだと、ねぇ、書きようがなくなります。
……
まあ、そう言う時節なんだと割り切って。
コメントいただいたお礼に新京極の狭苦しい、記憶の中の路地地図を付けておきました。思い出すと、ものすごく幻想的です。
あん肝は苦手なんです。めずらしく。たいていお腹をこわします。
ハッカ油は薬局で小さい小さい瓶が、1300円程度しますね。しかし、使用量は一回につき、耳かき2杯が限度ですね。まるでニトログリセリンなみの量と効果です。
昔神戸のどっかの山の上のハーブ園に行って、そこの展覧室で、ハーブからオイルを抽出する様子をみて、気に入りました。
なんか、匂いが好きみたいです。
ハッカ油、線香、ハーブ油一般、温泉の素、石けん、もろもろ。
さて。
元気になったらふうてんさんの記事、よみます。
再見
投稿: mu | 2006年6月20日 (火) 20時15分