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2006年5月16日 (火)

日々雑感:老後のこと:裁判の行方

昨夜のこと
 昨夜遅くに帰ってきた。私には、深夜に近い夜の9時前後だった。
 月曜は朝から午後遅くまで授業があって、昨日はそのあと図書館によって、そのあと倶楽部の局長と副長から、倶楽部例会の報告を受けて、そのあと市内出張して、八時すぎまで少しややこしい内容の打ち合わせをすませた。
 昨日朝は例によって午前三時起床だったので、実働時間は数えるのも嫌になる。
 で、遅い夕食を、即席にだされた卵焼き食べながら(木幡では滅多に食べないが大好物)楽しんでいたが、ふと背中のNHK-TVの番組に聞き耳をたてた。

実母殺し
 数年前に京都の桂川(だいぶ南)のそばで、54歳の男性が、車椅子に乗った80代の実母を殺害し、自らも首にナイフをあて自傷するも助かり、その裁判の模様を解説していた。
 判決は知らない。
 NHKは最初から、めずらしく犯罪者の息子に同情する構成だった。
 普通ならば、そんなやり方はまずいよね、というところだが、番組に知らず知らずのめり込んでいった。

結論をいう
 要するに、これだけ豊かに見える日本でも、54歳の元気な男でも、年老いた母親ひとり介護し、収入を得ることが、条件によっては至難の業のように思えた。
 つまり、この事件は母親合意の心中事件だったわけである。
 昔なら、尊属殺人として、法的にも極刑に処せられる可能性もあるだろうが、その点は現代は少し救われる。だが、聞けば聞くほど、見れば見るほど、私は暗い穴にすべり落ちていった。

状況
 覚えている範囲で記す。
 一人息子は独身で、殺害にいたる数ヶ月前までは派遣社員をして母親を養っていたようだ。
 母親はそれ以前10年前から認知症、つまり高齢者にみられる徘徊、わけのわからない言動におそわれだしていた。
 母と息子は二人暮らしで、小さなアパートに住んでいた。
 それなりに、幸はあったと感得した。
 しかし認知症が深まると徘徊が強まり、デイケアとか施設に相談しても、対応できないくらに進んでしまった。あずかってもらっていても、仕事中に警察から保護されたと電話があったり、……。

(ここ書いていて苦しくなった。私の場合、ひっきりなしに授業中に、警察や施設から家族のことで電話があったら、講義も会議も、そして研究も読書もできなくなり、呆然とする。しかし捨て置くわけにはいかない。涙がでる)

 結局仕事を辞めざるを得なくなった。
 アパート代の未払いが貯まってきた。
 もうすぐ、家も出なければならなくなった。
 生活保護をうけようとして相談に行ったら、失業保険をうけているので駄目だと断られた。
 その息子は、それによって、方策を失った。

 事件を起こす前日、母親を車椅子に乗せて、小さい頃なつかしく出歩いた街にでかけた。母親は喜んでいた。そして、心中を二人で決めた。

なんとかならなかったのか
 一つは、息子も母親も自立心が強かったようだ。
 しかし列車の競合脱線のように、複雑な社会システムにひっかかり、打つ手、打つ手がうまくはまらなかった。男性は、それなりに打開策を図り、行動した。しかし、なにかちょっとしたことで、解決出来ないままに、母親の認知症や老化が進んでしまった。
 気がついたときは会社を辞めて、アパートも出ざるを得なくなった。

 この豊かな、飽食の日本。
 きらびやかな、爛熟した文化、文明。
 そのどこかで、漏れ墜ちた人が、京都桂川のそばの、木立の茂る道筋に車椅子をとめて、母親の首を絞めざるをえなくなっていた。男は、54歳とはいえ、健康な男性だった。
 万策尽きて、自らの首にも刃物をあてざるをえなかった。
 
 私は、深いため息をついた。

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