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2006年5月22日 (月)

ヒストリアン/エリザベス・コストヴァ(その1)

その1:複雑な小説構成
 ヒストリアンを完読したが、感想というよりも、批評というよりも、読書メモとして記録しておく。

主テーマ
 500年間にわたるヨーロッパの歴史の中で、ワラキア公ヴラド・ツェペシュ(ヴァンパイア)の足跡を、歴史学者(ヒストリアン)達が探索する。

主要な視点が4つある
 1.ロッシ教授:歴史学者(ヒストリアン) 1930年代の世界
 2.ポール大学院生:ロッシの愛弟子 1950年代の世界
 3.ヘレン:大学院生:ポールとともに失踪したロッシを探索する 1950年代の世界
 4.「私」:ポールの娘:21世紀の視点 1970年代の世界

 ロッシとポールとは師弟関係。
 ポールとヘレンは、友人、共同研究者、愛情で結ばれた関係。
 ポールと「私」は、親娘関係。

 ポールは失踪したロッシをヘレンと共に追う。
 ポールは失踪したヘレンを追う。
 「私」は失踪した父親ポールを追う。
 
 ロッシ教授←ポール院生+ヘレン←ポール教授←「私」
 「私」は、こういう関係を2008年の今、オックスフォード大学で、文書、手紙、インタビュー、記憶によって図書にまとめている。

緻密な描写
 図書館や文書館、修道院や城跡。ヨーロッパ(南)全体が舞台になっていて、その描写が60%程度あるように味わった。旅行記と思って佳い。
 一千年続いたビザンチン帝国の崩壊と、メフメト二世によるオスマントルコの隆盛、大都市コンスタンチノーポリス=イスタンブール、そしてドラキュラが埋葬されたと歴史的にいわれているルーマニアのスナゴフ湖の島にある修道院。これらの描写が緻密で美しく、印象にのこる。

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» ヒストリアン/エリザベス・コストヴァ(その2) [MuBlog]
その2:いろいろなメモ  作品のテーマ自体は、東欧の吸血鬼伝承と、15世紀に実在したワラキア公、つまり自国民衆やオスマントルコ兵を数万人のオーダーで杭に串刺しにしたヴラド・ツェペシュ、通称串刺し公。おそらくブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ:Dracula』のモデルになった実在人物との、歴史的な交差だった。  映画な... [続きを読む]

受信: 2006年5月23日 (火) 08時58分

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受信: 2006年6月 2日 (金) 05時03分

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