NHK功名が辻(13)浅井長政の悲劇
承前[MuBlog:功名が辻(12)室町幕府崩壊]
小谷城跡(滋賀県東浅井郡湖北町)地図
唐国・山内一豊最初の所領400石(滋賀県東浅井郡虎姫町唐国)地図
信長のことでは、以前評論家秋山駿による『信長』で、その生の激しさに相当驚いた。旧世界を打破するために、神も仏もないものよと、実際に世間を打ち壊した姿は、信長以外には見ることができない。
しかし、私がいつも信長でつまずくのは、この浅井長政に対する仕打ちであった。髑髏(しゃれこうべ)を金泥造りの酒杯にし、部下に飲ませるというのは、まともではない。それほどに長政の裏切りは、信長をして姉川の戦い以来窮地に追い込み死線をさまよわせたのか、という事実認定はある。武田信玄が病死していなかったなら、信長は敗れていただろう。
長政敗死においうちかけて、妹お市の息子(側室の子)を磔(はりつけ)にし、朝倉、浅井親子、三人の髑髏を酒杯にした。憎しみの頂点かもしれない。
鯨氏[MuBlog:邪馬台国はどこですか?]の信長解釈は実にわかりやすかった。信長は発狂したまま日々を送り、最後本能寺に向かったと考えれば納得も行くのだが。
NHKドラマの信長解釈は、微妙だった。
ひそかに信長とお市の方との近親相姦をほのめかしていた。長政は信長にとっては恋敵なのだ。それを内にひめて市を嫁がせ義兄弟となった、その果ての裏切りは信長を鬼にした。
もうひとつは、当時長政は近辺にも知られた名将であり、その長政と義兄弟の縁をもつのは、信長にとって喜びだった。信長は激しい面もあり、たとえば家康との手組みなど、無理難題(家康の先妻と長男を死にいたらしめた)はあるのだが、手を結ぶことの広さはあった。だからひとしお、長政との交誼はよろこびだった、その果ての裏切り。
こういう含みを持った今夜のドラマだった。
館(たち)演じる信長は、最初数回はげんなりしたが、この何回かは非常に気に入っている。おそらく信長役として、狂気と激しさとを表現しえた役者として長く記憶に残る。常識はずれの狂気を、不気味に演じる館の演技には、息を止めて魅入ってしまう。
秀吉もまたよい。小汚いと長く感じてきたが、言語音声不明瞭なほどに賤しく猿猿しくふるまう下品さと、腹に一物もった目の動き。やはり、役者というものの本道だと感じ入った。羽柴の姓をたまわるのに、先輩諸将の前で悪びれもなく、丹羽と柴田とを合わせた「羽柴」姓を信長に言上するなど、まことによろしい。
さて、光秀。うむ。このもったいぶった風情がよい。気に入りだした。
今夜の長政、いい男ぶりだが、以前ずっと内田康夫氏原作のミステリで、浅野光彦役をやっていた若き頃にくらべて、貫禄がでたなぁと感心している。
肝心の千代。とても気に入っている。
一豊。ぼよよんとした風情が気に入っている。
今年のNHK大河ドラマは、四月に入って役者達のことで急に好ましくなってきた。世界ができてきたという感じがしている。
それにしても、ここ数年、役者というものを見直してきた。みなさん、ずいぶんに力をいれて工夫を重ねている。生来の持ち味に加味した、なにかしら演技の心髄を味わえて、気持よい。
ではまた来週。楽しみ
追伸
なにかの記事で来年の大河ドラマは武田信玄・風林火山とか知った。信玄さん役は忘れたが、上杉謙信役がなんとガクトだとぉ。あははは、これはおもしろい。まさか左手甲を右頬にあてて登場するわけはなかろう。楽しみだ。
無論、今年は山内一豊の成長がもっとたのしみだ(笑)。
ところで、今夜は出なかったクノイチ「小りん」のことだが。別記事でしるしたが(二十二万アクセス)、MuBlogも異様なアクセスを受けている。まことに私はしらないのだが、もしかしたらあの女優さんは、何か、とても有名な方なのかもしれない。しかし、千代のアクセスはみあたらない。これは不思議だ。
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