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2006年2月26日 (日)

注文の多い料理店 (アニメ)/宮澤賢治 原作、岡本忠成 脚本・演出

注文の多い料理店/宮沢賢治原作 ; 川本喜八郎監修 ; 岡本忠成脚本・演出
  <チュウモン ノ オオイ リョウリテン>
  [ビデオ]
  (BA53404996)

注文の多い料理店(表紙)

注文の多い料理店 (アニメ・表紙)/宮澤賢治 原作、岡本忠成 脚本・演出
  [東京] : 朝日新聞社,日本ヘラルド映画
  [東京] : ポニー・キャニオン (販売)、 [1993]
  ビデオカセット1巻 (19分)
  注記: 音楽: 広瀬量平 ; 制作: エコー社、桜映画社
  著者標目: 宮沢、賢治(1896-1933)<ミヤザワ、ケンジ> ; 川本、喜八郎(1925-)<カワモト、キハチロウ> ; 岡本、忠成<オカモト,タダナリ> ; 広瀬、量平(1930-)<ヒロセ、リョウヘイ> ; エコー社<エコーシャ> ; 桜映画社<サクラ エイガシャ>

裏表紙

注文の多い料理店 (アニメ・裏紙)/宮澤賢治 原作、岡本忠成 脚本・演出

帯情報

宮澤賢治作品で特に不思議な物語、それが「注文の多い料理店」です。

猟に出て山奥で道に迷った二人のハンターは、霧の中「山猫軒」という館にたどり着きます。ホッとするのも束の間、二人は怪しげな注文に導かれ扉を開けるごとに奇妙な世界に迷い込んでいきます。

「おこんじょうるり」などで知られるアニメーション作家、岡本忠成は、この作品に魅せられ5年の歳月をかけて製作を試みたのですが急逝。故人の意志を継いで、川本喜八郎が監修にあたり残された絵コンテをもとに完成させました。
全編を通して、絵画を思わせる陰影のある緻密なアニメーションは原作の持つ幻想的な世界を最大限に表現しています。

  文化庁優秀映画作品賞
  毎日映画コンクール大藤信郎賞
  キネマ旬報ベストテン第3位
  日本映画ペンクラブ賞
  教育映画祭最優秀作品賞
    文部大臣賞
  国際アニメーションフェスティバル広島大会入賞

Mu注:
 未経験の映像だった。次々と滑らかに、印象深い絵を差し出されているような感じで、あっというまに19分が経ってしまった。いま記していて気がついた、映画「千年火」と同じように言葉がなかった。音楽はあった、獣のうなり声はあった、銃声もあった、しかし人の声が全く絶無だった。登場人間は正確にはたった二人の中年の男性だった。カバー写真でわかるように、一人は太り気味、一人はやせ形だった。全編に登場するが、まったく言葉はなかった。一瞬一瞬の画像だけがあった。その絵が、滲んだ古色で、現代の鮮やかさは全くなかった。

 それなのに、物語だけが絵の中からくっきりと浮かびあがってきた。

 アニメーションがこういう効果をだせるという事実に、途中から唖然としてきた。私は、もっぱら文章メディアに入れ込んできたので、絵画が明確な物語を表現する事実に驚いてしまった。アニメーションの一つの極北にある作品だった、と断言したい。その芸術性とか、意義を論じる気持はない。ただ、絵画の連続が私に、文章作品がもたらすのと同じ明瞭さを示し、賢治の象徴の意味はおくとして、言葉の流れが持つ意味を受け取ることができた。
 1993年の作品だが、10年前にこれがあって、知らなかったことに自らの見識の低さを味わい、そして知ったことで「ああ、うれしや」と、土曜日の昼一人噛みしめた。

 さて、好きな場面をいくつかメモしておく。
1.山猫軒に入って、無人の部屋で、痩せた方の男がゲーム機にコインを次々といれて、射撃をするのが不気味だった。自分達の猟犬を何者かに惨殺され、道に迷い、殺気立っている様子が怖かった。

2.裏カバー上の写真にあるが、色彩に富んだステンドグラスの部屋に迷い込み、回りが鏡部屋のような中で、痩せた男が突然銃を撃ち出し、ステンドグラスを次々と破壊していく様子が狂気じみていて、固唾をのんだ。さらにそのあと、蝶とも蛾ともいえない大量の昆虫が部屋を埋め尽くす場面には、気持ち悪さの点で感動した。

3.太った方の男が一人地下の階段をおりていくと、水があってボートが浮かんでいた。それに乗ろうとすると、突然水が盛り上がり、ボートが流れ去ったのが、不思議な印象をもたらした。

4.ホテルのような一室で上半身裸になった痩せた男が、鏡台のいろいろな化粧品を使っているのがおもしろく、また太った男がサウナかシャワールームから出てきた姿にも、妙なリアリティを味わった。

5.思わずため息をついたのは、あるドアをあけると、そこは巨大な地下空洞(表カバー)だった。真ん中にコックが座っていて、男二人がテーブルに導かれワイングラスをもつ場面だった。

6.次に、三人の女が現れ、次第に形相が変わっていく恐怖。

7.そして。コックがついに正体を現し、巨大な肉切包丁を眼前で交差させた場面。

 こうして文字にしてみるとかったるくなってしまうが、絵画であると同時に、当然だがアニメーションなのである。なめらかに場面が展開していき、最後の土壇場の恐怖に落とし込まれる。それは全編わずかに19分間、言葉がゼロの世界で。

 宮澤賢治作品については言及をさけたい。この「注文の多い料理人」はいまから40~50年ほど前に読んだ記憶があるが、痕跡もなかった。決して私の好みの作家、詩人ではない。象徴するところのものを、無理矢理私にせまってくるのが、辛かった。
 しかし、アニメーションでこの作品を観たとき、「絵画」という味わいが深かった。しかも、象徴まではしらないが、物語を理解させてくれた。19分間を味わっただけで、物語の意味などどうでもよいと思った。旨く味わえた。だから、このビデオは私にとって最高の作品に思えた。
 それでよかろう。

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