邪馬台国はどこですか?/鯨統一郎
邪馬台国はどこですか?/鯨統一郎 著
(BA4223697X)
東京 : 東京創元社, 1998.5
316p ; 15cm. -- (創元推理文庫)
注記: 記述は第9版(刷)(1998.12)による ; 参考書籍: p300-303
ISBN: 4488422012
別タイトル: 邪馬台国はどこですか ; Where is Yamatai?
著者標目: 鯨、統一郎<クジラ、トウイチロウ>
分類: NDC9 : 913.6 ; NDLC : KH297
所蔵図書館 12[by Webcat 20060125]
帯情報
カウンター席だけの地下一階の店に客が三人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。初顔合わせとなったその日、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった……。回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで予備知識を蓄えつつ、彼らの論戦を心待ちにする。ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活--を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的転回を迫る、大胆不敵かつ奇想天外なデビュー作品集。[表題紙の前頁より]
このところバーテンダーの松永は忙しい。常連の三人がいきなり歴史検証バトルを始めてしまうので油断は禁物。話についていくため予習に励む一報、機を捉えて煽ることも、そつなく酒肴を供して商売も忘れず、苦しまぎれのフォローを試み……。またもや宮田六郎の独擅場か、幕引きのカシスシャーベット
目次情報
悟りを開いたのはいつですか?
邪馬台国はどこですか?
聖徳太子はだれですか?
謀反の動機はなんですか?
維新が起きたのはなぜですか?
奇蹟はどのようになされたのですか?
解説 橋本直樹
Mu感想
内容は多彩で、歴史上の人物の事績をこれまでと違った視点でながめた、ミステリーです。書名の「邪馬台国はどこですか?」に惹かれて数年前に購入したのですが、その時にすでに18刷でしたから、息の長い隠れたベストセラーではないでしょうか。
仏陀はなぜ悟りを得ようとしたのか、邪馬台国は九州でも近畿でもないのかもしれない、聖徳太子とはどういう人だったのでしょうか、織田信長はなぜ明智光秀に謀反されたのか、明治維新の本当の黒幕はだれだったのか。そしてキリスト様の奇蹟は本当のことだったのでしょうか、……。各小編をこの間、なんども読み直しては「うふうふ」とほくそ笑んでまいりました。
一々を、そのさわりを書けば、内容の充実度がすぐにわかるわけですが、これはミステリーですから、安易にそういうことを記して、いわゆる「ネタばれ」するのは悪行となりましょう。だから、感想を書くMuも、難しいところです。
以前識者から「読んだ人相手に書かれるなら、読んだ人でなければ分からないパスワードを設定してはどうでしょう」と教授されたが、その方法は優れものなので、いつかどこかで使うつもりだが、今回の場合、読んでいない人に見知らぬ鯨さんをどう紹介すればよいのかという、いわば書評芸の基本で悩んでいるわけです。
昔から書評を読んだり書いたり切り抜いて整理するのが好きでした、……。おっと、そういう脇道ににげようとしているMuですね。
で、鯨さん。変わったお名前なのですね。例によって、テキスト志向のMuですから、本人が男か女か、爺さんか若者か、プロなのかセミプロなのか、そんなことは一切抜きにして、読んだわけです。変わったお名前ですが、内容はすっきりして、濁りがなくて、清涼感がありますね。こういう方法論でミステリーを書かれた鯨さんを、遠望し、すごいことだと感心しております。と、またしても、逃げていますね、Muの旦那!
では、一箇所だけ掟破り。
「今まで邪馬台国研究家たちを悩まし続けてきた問題点は、整理すると十三の項目に要約される。荒巻義雄という作家が厖大な資料を検討した結果、そういう結論を出したんだ。『新説邪馬台国の謎殺人事件』[講談社文庫]の巻末に載っている。そのコピーをたまたま持ってるよ」
この雰囲気がたまりませんね。
さらにもう一つ。標題は邪馬台国ですが、他の小編もものすごくおもしろいです。Muのお奨めは、織田信長◎○■▲説ですね。これはぜひ、ご一読下さい。
| 固定リンク
「読書の素」カテゴリの記事
- オーパーツ大全 : 失われた文明の遺産/クラウス・ドナ、ラインハルト・ハベック共著(2007.02.04)
- お正月の読書の素(2006.12.29)
- 謎の大王継体天皇/水谷千秋(2006.03.30)
- 啓示空間 (Revelation Space)/アレステア・レナルズ(2006.02.07)
- 邪馬台国はどこですか?/鯨統一郎(2006.01.25)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
鯨さん
面白い名前の作家ですね? 全てに興味は有りますが、こんな話題で酒が飲めれば最高ですね?
場面設定が飲み屋というのが、いいですね。意外に酒が入るとヒラメクものですよね?推理の場としては面白い設定です。
病院のベッドで一人、推理する場面よりは明るくて、面白そうです。
ところで、邪馬台国は何処ですか?
投稿: jo | 2006年1月26日 (木) 10時22分
joさん、2006年1月26日 午前 10時22分
一日遅れのコメント返し、すんません。
結論もうしますと、昨日は早引き(午後5時(笑))して、木幡では午後7時から今朝の5時まで、夕食無しの完全熟睡でした。
事情は、ようわかりません、要するに睡眠を極端に必要としたんでしょうなぁ。
で、邪馬台国はどこなんでしょう。
ヒント1:コンゴじゃないです、アルゼンチンでもない。
ヒント2:沖縄じゃないです、八丈島でもない、函館五稜郭でもない。
ヒント3:北九州じゃないし、國のまほろば地帯でもない、琵琶湖湖岸でもないし、まして、あなた名古屋じゃけんなんてありえない。
以上三つのヒントで充分でしょう。
おもしろいですよ、この文庫本。
投稿: Mu→Jo | 2006年1月27日 (金) 06時19分
邪馬台国の謎
私もMuの旦那もこの話には魅惑されましたね?魏志倭人伝の解釈についてどれだけの人々が本を書き、議論されてきたでしょうね?
後漢書の頃は未だ、倭国で奴国が登場してるので、北九州あたりが中国人には理解されていたんでしょうね。
魏の時代になり、突然に邪馬台国という女王の国が登場する。歴史のロマンですね。
場所は何処でも、推理をどう構築するか?そこに、謎解きの楽しみがあるんですね。
ホンマ、永遠に続きますね。
投稿: jo | 2006年1月27日 (金) 12時37分
joさん、2006年1月27日 午後 12時37分
なんか、ぞわぞわした魅力的なコメントですなぁ。Joさんは、なにがなんでも、Muに鯨さんの書いた内容を、ネタバレさせたいような、そんな魂胆があるのかどうか、気持ちが揺れますね。
ええい、ネタバレしちゃおうか!
邪馬台国はね、じつはね、Joさん、京都府宇治市の木幡やったんですって(笑)、うけけけ。
「場所は何処でも、推理をどう構築するか?」
なあ、Joさんや、学術図書ならいざしらず、ミステリあいてに、不用意に「推理構築」内容を記すなんて、営業妨害ですよ。
ところが、それの一句で、読者も手をのばすか、ひっこめるか、違ってくるのも事実。書評子Muとしては、困るなぁ。
最重要ヒント。
平野の「平」はタイラとかヒラとかヘイとか読めますね。これが、なんと「タイ」と呼ぶ地方もあるようですね。
(Joさん、もしわかっても、MuBlogコメントに書いてはいけません)
投稿: Mu→Jo | 2006年1月27日 (金) 13時21分