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2005年11月27日 (日)

NHK義経(47)安宅ノ関・勧進帳

承前

安宅ノ関址(石川県小松市安宅町)地図

 今夜もほっとした。義経記(ぎけいき)から、能の安宅が生まれて、勧進帳になったり、浄瑠璃にもなって、安宅物。判官贔屓はこういう様式が積み重なって広まったと得心した。
 
 弁慶さん。金剛杖で打擲(ちょうちゃく)するのは、なかなかに迫力がありました。
 義経主従はみんな男泣きした。
 男泣きとは、こういう場面で泣くものなのだろう。

 関守の富樫(とがし)さんが良かった。石橋レンジという役者だったはず。この役は特殊だと思った。おそらくたった一回の出演なんだろうが、物語の極みを支える役どころ。
 義経追捕のために安宅ノ関が急遽つくられたらしい。その関守が、無聊にあきて酒を持って現れる。この倦怠感がリアルに見えた。

 それにしてもこの逃避行。というか、当時の山伏をはじめ、諸国行脚の者達の苦労が偲ばれる。吉野山でも靜が草履だけで雪道を歩いた。そして今夜の山伏もそうだった。温かい靴下もない、編み上げブーツもない。いまからみると想像を絶する旅が、当時の一般的なものだったんだろう。まして季節は晩秋初冬。

 富樫は知っていた。山伏問答を始める前から義経一行と知っていたように見えた。だからこそ、富樫が弁慶の打擲を止めるところが、よく効いていた。知っていなければ、ただの山伏達の内紛にすぎない。「うるさい、はやくいけ」で済んでしまう背景がくっきりとある。ある上で、打ち据える弁慶の金剛杖がビシバシと音をたてる。

 さて、伝説の巴御前流離話は、今夜に決着をみた。加賀国の木こりの妻となり、子をもうけた。それでよかったと思う。

 今夜はあまり記さなかったが、内奥で「よかった」と、思っている。能や歌舞伎では、いま一つわかりにくい言葉が、今風に語られたとき、胸におさまった。Muも現代に生きる者だった。

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コメント

 (男の涙)

 弁慶さん、泣きすぎ~ぃ。
 男は、いつの間にこんなに人前でワンワン泣けるようになったのでしょうか・・。(男泣き)というのは、こういうものなんですか。

 あそこでぐっとこらえて、涙ぐむ程度に抑えて欲しかったです。平家の女性ですら、これほど泣かなかったのに。

 時代は変わったんですねえ。

投稿: wd | 2005年11月27日 (日) 21時48分

男泣きにもいろいろあることでしょう。Muがなんらかの事情で、緊急避難的に、たとえば尊敬する恩師を人前で打擲したとすると、泣きます。ただ、演出が多少過剰だったとは、思いました。

投稿: Mu→Wd | 2005年11月28日 (月) 08時33分

本当に良かったです。これで、五条大橋、静の舞、今回の安宅の関が加わって印象に残るシーンが増えました。ヤッパリ「締めるところでは、締める」NHKでした。義経の生涯の一こま→能→歌舞伎になって、やがて大河ドラマで私が観たというわけですねえ。弁慶の男泣きは、虐められたり、叩かれたりして泣くんで無くて、主人を叩いた非礼を悔やんで泣いているんで、今もそう変らんと思うんですけど。

投稿: hisaki | 2005年11月28日 (月) 08時56分

京の五条、静の舞、安宅の関。
Muですと、鵯越、屋島、壇ノ浦を付けたいですね。宇治川は記憶が薄かったです。
後は衣川の舘でしょうか、弁慶の立ち往生。
また、泣けそう(笑)

とすると、判官贔屓をおさらいしているようで、過去の日本人の心性を現代人に解き明かしているところもありますね。

投稿: Mu→hisaki | 2005年11月28日 (月) 12時30分

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受信: 2006年3月 9日 (木) 00時17分

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