« スマート珈琲店(京都・寺町)のホットケーキ | トップページ | 金魚水槽の掃除 »

2005年11月11日 (金)

アレキサンダー(Alexander)/オリバー・ストーン(Oliver Stone)監督

アレキサンダー(Alexander)

アレキサンダー(Alexander)/オリバー・ストーン(Oliver Stone)監督
 感動した。そして映画の、世評と実際の落差、その難しい立場を充分に味わったDVDだった。前振り話がいつものように長くなるが、このDVDを買ったのは今年の夏だった。かといって自ら進んで買ったわけではない。なにか映画を見て蕎麦を食べての散歩がてらに、烏丸の大丸によって、ともあれDVDでも買わないかと、ご存じ評論家のエドルンに誘われてのことだった。多分、その日午前中に観た映画が、あまり芳しくなかったからなのだろう。大丸へ着くまでひたすらMuは評論家エドルンに愚痴をこぼしていた。

ある映画を見ての帰り
「なあ、エドルン。あの急に出てきた若い女と、あの少年みたいな男は、なんで海の中にはまってまでキスなんかしちょるんやぁ~」
「あれはなぁ、父ちゃん、兄妹として育てられた男女の再会恋愛なんやで」
「ふーん、そうかい。けど、あの女、突然でてきよったで。なーんも説明あらへん」
「まあな、時間合わせにフィルムをぶちぶちに切らはったんで、編集する人もわけがわからんくらいに急がされたんや、きっと」
「フィルム切ったりはったりするのは、監督さんやろ?」
「さあ、そうかなぁ」
「もう、父ちゃんは、ごっついショックやった。ものすご期待して行ったのにな」

「しゃあないな、父ちゃん。ここんとこは、アレキサンダーちゅう大作DVDでも買おて、夏休みの終わりにでも、口直しにみたらぁ?」
「そうかぁ~。で、なんや、エドルン、これ高いな。それに、3時間近い長尺やで」
「父ちゃん、好きやろ? ああいうの、大作(笑)」
「おお、大作ちゅうと、今日の予告編だけはよかったなぁ」
「ほんまや、わたしも、涙ぐんだわ」
「ああ、やっぱりDNAやなぁ。君ほどの鋭い評論家でも、あれには、まいったかぁ」
「そうや、戦艦大和が海を行くの見るだけで、泣けたなぁ」
「うん。年末に、また行こか。こうなったら、俳優も筋立ても関係ないなぁ。たとえもし凡策でも駄作でもB級でも、どうでもええ。大和みるだけで、大満足や」
「同感ですよ、父ちゃん」
「ハルキの親爺、がんばっちょるなぁ」
「父ちゃんも、まだ若い。がんばれ~」

 長い前振りになってしまいました。
 そういう経緯でアレキサンダー大王映画を入手したわけです、今夏。しかるに今まで観なかったのは、長尺であることと、どう考えても評判が悪い。駄作、同性愛奨励映画、ほとんど寝てしまった。かったるい。
 とまあ、人々の感想は、どれもこれも最悪。そうまで言われた映画なれば、やはり、Muも引いてしまっていた。

 ところが。
 観た、感動した、泣いた。素晴らしい映画じゃないか。
 同性愛が原因でアメリカでは叩かれた? そんなん、どうでもよろし。同性愛プロパガンダ映画でもなんでもなくて、史上アレキサンダーはギリシャ文化の色濃い影響、あの有名人アリストテレスの弟子として、男性間の恋愛友情を大事にしていた、そういう史実を表現しているだけのこと。

 さて、Muが感動したところを少し記録しておく。

1.ペルシャとの戦いに勝った後のバビロン入城。この場面によって、ペルシャ文明がかくあったのかという、映画ならではの再現に嬉しかった。こういうのは、なかなかお目にかからない。

2.ペルシャ王ダリウス三世の無言の指揮振り、そしてペルシャ人(イランの人をさすのかな)の相貌の端麗。これがよかった。王は、戦車にのって軍の先頭に立ち、振り返り大軍に無言で両腕指を動かしただけだ。それだけで、大軍が動く、この機能美。うむ、たまらない快感だった。

3.アレキサンダーの母親オリンピアスが、幼い彼に蛇を見せる妖艶さ。蛇は、人類共通に気色悪いと思ってきたが、こういう表現をされると、また別の感興がわいた。もちろん父親のフィリッポス二世はそういう異世界の妻を憎む。

4.映画は、エジプトのアレクサンドリア王宮にいる、プトレマイオス(アレキサンダーの部下だった)のナラタージュによって進む。これが映画全体を明快にしていた。わかりやすくいうと、プトレマイオスによる解説付き回想によって進行するわけである。プトレマイオス役は、なんと、渋いアンソニー・ホプキンス。この側にいるエジプト人の書記が、何枚ものパピルスにヒエログリフで話の内容を速記している姿もよかった。

5.インドで象に打ちのめされたアレキサンダーが矢を受けて倒れ、赤い空をぐるぐるみまわしていく場面がよかった。そして、巨大な盾?に載せられて、頭上高く持ち上げられて退却するところも良い。昔観た映画で、ランボーがアフリカの海岸沿いを奴隷達の担ぐ輿(こし)に載せられて病院へ行く姿を思い出していた。

6.アレキサンダー大王の遠征と、その一種の狂喜、付き従う部下達の混迷、裏切り、毒殺。大王にまつわる負の部分も余すところ無く描かれていた。これは痛みをかんじながらも「しかたない」と思ったところだ。

 というわけで、一度はアレキサンダーに興味を持ったことのある人ならば、観ておくべきだろう。
 やはり、映画でないと表現出来ないところが、多々あった。
 通説と俗説とが混じったようなところもあるようだが、しかし、全く退屈せずに当時の世界にひたり込んでしまった。3時間弱で、大王の生涯がわかる、これだけでも素晴らしい。
 主役のコリン・ファレルという男優も、磨き上げた凱旋姿と、血反吐にまみれた汚れ姿との対比が、じつに新鮮に映った。声も張りのある場面、へこたれた場面、うまく聞こえた。

追伸
 そうそう、いつもの女優褒め。ダリウス3世の長女が、ハーレムでアレキサンダー大王を迎えるのだが、それが史上バビロンにあったかどうかは別にして、その長女の風姿がよかった。西欧でもない東洋でもない、実に、これをもってエキゾチックというのかもしれない。

再伸
 くどくなるが。この映画を退屈と思われた人は、少し寂しく思う。人類史、東洋も西洋も日本も、かく万年を経ていまにいたったのである。急に先日、現代文明が生まれたわけじゃない。その重層の一つのポイントが大王のヘレニズム文化にあった、とそう思ってみると、実に感無量の映画といえようぞ。退屈だなんて、それはないでしょう、退屈な衆生たちめ(笑)。

参考
 アレキサンダー(2004)allcinema
 アレキサンダー(HERALD ONLINE)

|

« スマート珈琲店(京都・寺町)のホットケーキ | トップページ | 金魚水槽の掃除 »

映画の余香」カテゴリの記事

コメント

 パピルスショップ フルーカという店からトラックバックをいただいた。
 日本にとてもめずらしいお店があることに驚いた。
 経営者はエジプトの人らしい。

投稿: Mu | 2005年11月21日 (月) 17時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/22035/7041508

この記事へのトラックバック一覧です: アレキサンダー(Alexander)/オリバー・ストーン(Oliver Stone)監督:

» パピルス 古代エジプトの紙 [パピルス 古代エジプトの紙]
古代エジプトのパピルスにはツタンカーメンやクレオパトラが描かれています。 [続きを読む]

受信: 2005年11月21日 (月) 10時12分

» 【映画】 アレキサンダー [REAL LIFE]
出演:コリン・ファレル、アンジェリーナ・ジョリー、    バル・キルマー、ロザリオ・ドーソン、    ジャレッド・レト、アンソニー・ホプキンス 監督:オリバー・ストーン 2004年のアメリカ映画です。 最近はこのような古代歴史物の大作映画のリリースが多い気がしますので、私自身「またか」といった印象がありました。映画そのものも噂で聞こえてくるものでは、大作の割にはイマイチと�... [続きを読む]

受信: 2005年12月13日 (火) 23時11分

« スマート珈琲店(京都・寺町)のホットケーキ | トップページ | 金魚水槽の掃除 »