「からくりサーカス」あるいは「王様の仕立て屋」
からくりサーカス(39)藤田和日郎、小学館
王様の仕立て屋(4)大河原遁、集英社
からくりサーカスという題名だけをみれば、サーカス物語と思ってしまうかも知れない。なにしろMuの頭の中にはいまだに芸人さんたちは酢を飲んで身体を柔らかくしているという奇妙な伝承で一杯なんだから。古代ローマや、ロシアやフランスには酢があったのだろうかと、昔おもったことさえある、ビネガー。寿司酢を考えるから、話がまがってしまう、オイオイ本当に酢をのむのかい(笑)
それにしても、もう39巻になってしまった。どれだけの冒険をすればサイガ・マサル少年(小学生)は平穏な生活、シロガネや鳴海といっしょに落ち着いた日々を暮らせるのだろう、学校にも行けるのだろうか、なかなか。
なお、この39巻は、マサル少年が悪にとりこまれたようなところで次巻に続く、~ああ待ち遠しい。
Mu注:ペアで読んでいる、ジョジョ、つまり「スチールボールラン」は、今年の11月刊行らしい。これも、お楽しみ。
王様の仕立て屋、これは先月に3冊読んで、いたく気に入った。そうですなぁ、以前の話題でもうしますと、「美味しんぼ」のノリでしょうか。美味しんぼでは、料理のことをあれこれ知ってまるで和製チャングム翁でしたが、こんどの別人作家による王様の仕立て屋は、主に男性ファッションの精髄を知ることになります。
そうだ、MuBlogでは初めての紹介なので、帯の惹句を4巻目から引用しておきましょうか。
イタリア・ナポリの泥棒市に住む日本人、織部悠。ナポリの”究めし職人(サルト・フィニート)”から”ミケランジェロ”と賞賛された伝説の名仕立て屋が、唯一認めた弟子である。超一流デザイナーであり、悠の弟弟子であもあるベッツオーリに呼ばれミラノに訪れた悠。だがこの地で悠は、思わぬ挑戦をうけることになり、……
この悠という青年は、王侯貴族から庶民、マフィアのドンまで、彼に助けられ恩義を感じている男が無数というほど、腕が立つ。かれの仕立てるスーツによって、ひん曲がった根性まで立ち直り、落剥した男であっても、それを身につけるだけで社交界に認められるという魔法の腕。しかも、魔法の種明かしがきっちりと描かれている。おもしろい。
ただ、Muはこれを読んでいて汗もでた。靴の磨き方にしても、つま先だけをぴかぴかにすべきであって、まるごと磨き立てるのは野暮とか。カフスボタンの選び方から、……。スーツが合わないと身体を壊すという理屈なぞは、まことに心から感心した。
いちいち各編が、納得。おしゃれも長い伝統、積み重ねの中から、自然に滲み出てきたものがあるようだ。となると、目立つべくして目立つのは、どうにも野暮らしい。
もっとも、Muは、例によってパジャマ党、うろうろ。外にでるときは、部屋で真っ先に目に入った物を身につける。それに比べると、なんとも、男性社会、女性社会は、大変な労苦があるようだ。漫画内容への皮肉ではない。場合によっては、王様の仕立て屋程度に、この世の仕組みは知っておいた方が良かろうと、思って。ああ、困った困ったの気持なり。
Mu注:前巻では、サッカー選手のスーツを仕立てる編があって。職業上極端な「がに股」を隠し、どうやって自然な動きができるように仕立てていくかという、想像したこともない手法にびっくりした。あるいは、コンダクターの肩の凝りを直すために、ゆとりを持たせながらも実に自然な線を仕立てていくのに、また驚き。服は皮膚、そんな感じでしたな。
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コメント
40代後半頃は多少は、衣装に凝りましたね。
コンテンツとかマルチメデイアにからんでいた頃ですね。しかし、殆どは既製服でした。
アメリカとの往復が多かったので、安いブランド品が買えましたね。背広、ネクタイ、ワイシャツ、あたりですね。
その後は、地味な仕事に戻りましたので、服に身体を合わせる生活となりました。(笑)
京都の人は着る物にウルサイですね。
投稿: jo | 2005年10月26日 (水) 13時59分
joさん、2005年10月26日 午後 01時59分
ちょっと返事、おくれまして。あれこれ。
仕立てスーツは、ドライクリーニングなんてもってのほか、と言う話を読むと、ガーンとショックです。
繊維の動物性脂肪の艶を根こそぎ捨てるのがクリーニング。
本来は、ひたすらブラッシング、太いハンガーにつけて、陰干し、これで何十年も持つらしい。
汗をかくような労働に着るものじゃない。
……。
さもありなん。
いやはや、世界は広く、深いです。
投稿: Mu→Jo | 2005年10月27日 (木) 07時28分