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2005年10月 9日 (日)

NHK義経(40)義経の血涙

承前

 今夜は義経が記した腰越状を鎌倉がどのように扱ったかの一夜だった。
 つまり、頼朝、政子、北条時政(政子の父)、北条義時(政子の弟)、大江広元、坊主(だれだったかぁ?)の合議のもと、結論として頼朝は義経に会わず、平宗盛、清宗親子を再び、義経をして京まで送り返させる。

 この宗盛父子は近江野洲にて帰路悲劇があるわけだが、それにしても義経は後白河法皇の命によって宗盛親子を鎌倉まで護送したのだから、それを鎌倉に入れず返したのは、法皇に対する鎌倉幕府の明白な示威行為であった。

 今夜の見どころは政子の役割だった。
 政子は父の時政に言う。

 政子→「義経を頼朝に会わすのは、これまで情を押さえて理で生きてきた頼朝のタガを解き放つことになる。断じてそうしてはならない」
 時政→「そうじゃな、情にほだされて迎え入れれば、鎌倉には義経の武勲を目の当たりにした多数の御家人がおるから、奴らが義経を持ち上げれば、鎌倉が二分される。そうじゃ、会わせてはならぬのう」
 政子→「それよりも、もっと恐ろしいことになります」
 時政→「政子、それはなんじゃ」
 政子→「マツリゴトに並々ならぬ力をお持ちの頼朝殿と、軍神とみまごう義経が、兄弟手を握れば、北条など吹っ飛んでしまう。まさに源氏の幕府になってしまいます」
 時政→「うぉ~、そうであった!」

 史実として、頼朝亡き後、北条時政は頼朝の外戚である比企を滅ぼしてしまう。そして、時政、義時親子で初期の執権職を確立し、その後、源実朝が殺害されたあと、北条家の幕府となる。

 中井貴一の役どころはセリフが少なく、目や、口元、顔の表情だけで表現することが多く、難しい。これを実に上手に、万感迫る雰囲気を醸し出すのは、なかなかの貫禄だと思った。
 大江広元の立ち居振る舞い、押さえたセリフ、目の動き、これも上手だと思った。

 役者というのは天性のものがあろうが、それにしても、一般世間人よりも精進しなければならない職業かと、今頃になって気がついた。若い頃なら顔がよくて雰囲気だけとか、あるいは、若い女性ならグラマーだとか小悪魔的とか、修練なしでなんとか様にもなろうが、今夜の政子とか、頼朝レベルの役どころ・年齢を演じるのは、キャッキャとするだけでは、どうにもならない。
 どうなんだろう、人知れずの練習があるのだろうな。うむ。

 義経だが、若くて上品な顔立ちだから、渋みとは言えないが、笑顔とか、はにかみとか、そして沈鬱な表情とかはよく味わえるところがある。腰越状を読み上げる、ナラタージュというのだろうか、声調がいたく気に入った。
 史上の義経は少なくとも人間関係や政治関係上の策士であった形跡はないから、このような雰囲気が一番よかったのだと思う。

 ともあれ、今夜も終わった。また観てみよう。
 それにしても、義経ほどの武勲をあげた総大将が、これほどの待遇をうけたとは、史上まれなことではないだろうか。歴史は時に不可思議な航跡を残すものである。

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コメント

じっくり観ました。今回は、仰る
>政子→「マツリゴトに並々ならぬ力をお持ちの頼朝殿と、軍神とみまごう義経が、兄弟手を握れば、北条など吹っ飛んでしまう。まさに源氏の幕府になってしまいます」
が、すべてでした。
政子は恐ろしい。義経ばかりねなく頼朝も哀れのように思えてきました。
天下を取るには、冷徹な精神の持ち主しかできないことなんでしょうけど。それにしても、戦場では冷徹な義経が、戦場外では何故これまでも情にこだわったのか。残念です。

投稿: hisaki | 2005年10月10日 (月) 08時39分

こんにちは
私も中井さんと財前さんの演技がすごくいいと思います。政子のセリフがいかにもその思想をよく表していましたね。TB貼らせていただきました。

投稿: みどりかわ | 2005年10月10日 (月) 10時30分

hisakiさん、2005年10月10日 午前 08時39分

 政治も、人生も、人は人に惨い(むごい)ことをしますね。できればそういう修羅場は経験したくないものですが、ふりかかる火の粉は、払わないと焼死しますし、火元を絶つには敵を殲滅しなければならないし、なかなかキツイものですね。
 Muなど、おっとりと木幡・葛野の田舎にこもっておるので、まだまだ気楽なものですが、世のなかの人はどうなんでしょう。

 古くは、中臣鎌足と後の天智天皇は、なんとなく分からない理由で蘇我入鹿を惨殺しました。これは他人同士の争いですが、暗さは同じです。

 持統天皇が甥の大津皇子を謀反の濡れ衣で殺しました。

 足利尊氏は自分の息子と、自分の弟を殺しました。

 徳川家康は、信長の命で、もっとも頼りにした優れものの長男と、そして奥さんを殺しました。
 影武者によれば、家康が関ヶ原前夜「あいつがおったならば」と嘆きます。そばの者が「秀忠殿ですね」というと、そっぽを向いて、殺した長男を思い出す名場面がありました。
http://asajihara.air-nifty.com/mu/2005/08/post_80ba.html

 伊達政宗が、弟を殺し、弟に荷担した実母を押し込める場面は、昔のNHK大河ドラマで圧巻でした。

 なかなかに、骨肉は、他人同士よりもさらに難しいですね。 

投稿: Mu→hisaki | 2005年10月10日 (月) 10時55分

みどりかわさん、2005年10月10日 午前 10時30分

 blogさっき読みました。わかりやすいですね。ついでに土方さんの記事も読みました。正月が楽しみです。

 なんとなく、日本男児は司馬遼太郎世界を媒介にして、見知らぬ者同士が話せるものですね(笑)
 いまから、さっそくTBをいれます。

投稿: Mu→みどりかわ | 2005年10月10日 (月) 10時58分

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