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2005年9月11日 (日)

NHK義経(36)壇ノ浦置きみやげ

承前

 故あって気がつけば夜半九時を過ぎていた。しかしすぐに、義経が選挙番組で19:15から始まって、すでに終了していたことにも気付いた。さっき、ようやくBS2で見終わった。BS2はチャングムだけと思いきや、義経も放映していた。便利な世の中だ。

 で、今夜の義経は。

 女優達、平家の上臈達がみな素晴らしかった。役者というのは、いつも入魂と思いはするが、それにしても白々しいドラマに比較して、この大河ドラマは夏を過ぎる頃になると、おそらく質ある人達は、その世界に没入しているのではなかろうか。八ヶ月も同じ役をこなしていると、肌から離れなくなった仮面が素面になって、顔や形になじんでしまう。それは観る方も演じる方も、そうなのだろう。

 建礼門院徳子と、そばのお二人。髪がみだれ面やつれした様は、眼前に一千年前の壇ノ浦にいるような気持にさせられた。徳子は、以前からだまっておったが(笑)、そりゃそうだ、帝の御母君、国母さまであらせらる、まことに魅力的なお方になっておられた。怨ずる目元、口元、さもあらん、と妙に得心した。

 戦にやぶれ入水し、助けられた後のお方とはこうであろう、とそのまま見入っていた。目の動き、演出のなせるわざと思いつつ、帝の行方に秘めるささやかな目のきらめきが、印象に残った。

 さてまた、能子(よしこ)。
 くだくだしくは書くまい。おそらくこの女優は、開眼したのだろう。この人は、セリフが哀調をおびる。明るい脳天気な若い女性達が、心を情景・対象に投入すれば、今夜の能子のようになるかもしれないと、ふとおもった。が、瞬時に、やはりこの女優だから、能子だったと思った。

 義経は。
 デルファイの神託、というのかアポロン巫女の神託ともうせばよいのか、ギリシャ悲劇になる。お徳の呟きが、まだ晴明な今は、義経は生きている。しかし、お徳の呟きが地の底からわきあがる呪詛になったとき、義経は生を終える。そうおもった。
 お徳が義経を呪詛するのではない。義経を死に至らしめた運命を呪詛するのだ。
 そうであれば、義経は燦然光彩陸離とした「悲劇」になる。
 壇ノ浦が悲劇の始まりだった。世のありようを変えてしまった義経には、それしかない。そのように断じたのは、お徳だった。Muにはお徳の呟きがそう聞こえた。

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コメント

今回は回想シーンが多かったですが、毎回見て、そしてMublogを合せて読んでいましたので、お蔭様でよくわかりました。出演されている役者さん、本当に役柄になりきってしまったいます。見るほうの私も、茶化し気分などすっ飛んでしまって、ドラマに引き込まれています。
どうも、男どもが頼りなく、女性の方が肝が据わっているように描かれています。戦場で戦うのは男で、男を裏から動かしているのは女性ということでしょうか。
次回からは、落ち行くのは義経になりますが、仕方ないです。

投稿: hisaki | 2005年9月12日 (月) 09時12分

hisakiさん、2005年9月12日 午前 09時12分

 一般論ですが。

 男性は、幼少時から育てにくいと通説があります。すぐ病気するし、大体恐がり、臆病、まわりがよってたかって、ほめて、そやして、機嫌をとって、やっと一人前になっていくと。

 かねがねもうしておりますが、生物学的にも「男」は余剰の性。なくてもこまらぬ。進化の道筋で、オプションみたいに出来たところがあるようです。だから、アダムが先だなんて壮大な嘘をつかないと、社会の半分が壊れてしまう(笑)。

 足が地に着いていない。生まれて死ぬまで幻想の世界に生きる生命体が「男」なんでしょう。昆虫には、交尾して役目を終えると、あっさり雌の餌になる話は、よく聞くところです。

 おそらく。修羅場になると、それがはっきり出るのでしょう。信念とか神話とか象徴がないと、男は生き抜けない。会社の為とか、国のためとか、家族のためとか、文化文明伝統の為とか、他律的思想がないと、男はへなへなと座り込んでしまう。

 その点。女には、そんなものは不要。ただ、「生」、そこに生きている。だから、死ぬ直前までは生きている。ひょいと修羅場をくぐりぬけるだけ。
 男は、死ぬ前に、もう死んでいる。生ける屍で修羅場に放り出される。

 と、そんな風に思いました。
 よいわるいのことじゃなくて、属性なのでしょうね。一般論ですよ(笑)

 だから、義経もまた、なにかを奉じて死に行くのでしょう。だから、悲劇がうまれる。だから死生観も生まれる。

投稿: Mu→Hisaki | 2005年9月12日 (月) 11時47分

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