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2005年9月25日 (日)

NHK義経(38)帰還将軍

承前

 うむ。今夜も魅入った。
 ずっとである。
 この義経は、内心危ぶむところも多々あった。一度目は一ノ谷の数回前。二度目は今夏壇ノ浦が終わった即時。
 先回は、建礼門院吉田山の場面を無事見終わってほっとした。
 今回は、次回以降、もう見ぬかも知れぬとおもってTVの前に枕をおいて、眼鏡をかけて見た。

 そういう観客の気持ちは原作者も演出も心得ているのかも知れない。次週番組予告は、これからの義経、とあった。そう。義経が壇ノ浦を終えて、京鎌倉の政争の中に巻き込まれ没落していく姿をただ延々と、師走まで見続けるのは、拷問である。マゾと化さねば見続けられるものではない。

 それを数分の予告が、ストッパーをかっちり掛けてくれた。
 なんとか滝沢義経、安宅の関までいま一杯の踏ん張りをみせて、意思を露わにするようだ。
 一安心。
 そういう気持に、夜半9時前見終わって落ち着いて、得心して、ようやく今夜も筆がすべる、心もおどる。


 久しぶりに数分見た。ずっと能子(よしこ)、能子と書いたものだから、いい加減ツノがでておるかな、と思っていたが、ようやった。つまりは男が求める女のイメージを演じきった。嘘とか真の問題ではない。あのような義経には、靜のような女があのようになぐさめてこそ、すとんと落ち着く。
 もう一度言う。嘘とか真の問題ではない。
 鬱した男に、どうせいこうせいと、そばの女が取り乱すのは、病人に劇薬を飲ますようなもんだ、なあチャングム。
 女優の人選は、よいと思っている。女が回をへるごとに変身していくのが、とてもよい。
 女優とは、すべからく、魔性なのかもしれない。

頼朝
 政治家である限り、義経をそのように扱わざるを得なかったのは、よう分かった。分かったが、しかし、後年石田三成が大江広元さんの役回りでふるまったばっかりに、関ヶ原で負けたのを思い出した。頼朝もそうだ、あっけなく身内筆頭北条家に源家をのっとられてしまったではないか。

 大江は言うた、いま九郎義経を鎌倉にいれることは、他の御家人に示しがつかぬと。これは小才の官僚の言葉である。凱旋将軍を遇することなく、なにが武人の、武家の統領ぞ。
 古来もっとも老獪陰険な政治家なら、凱旋将軍を迎え、しかる後に毒殺謀殺し、しかるのちに盛大な国葬をあげることだろう。
 砂漠の狐、ロンメル将軍は、そうだったような。
 武人とは、悲しいものである。

 凱旋将軍九郎判官義経を、犬猫あつかいした鎌倉政権は、間違っていた、と今夜はっきりMuは悟った。
 Muがタイムマシンを持っていたなら、さっそく頼朝の寝所へまいり、「徳川さんは、こうしはりましたで」と、いうところである。義経は、九州鎮台にすればよかろう。さすがに、東北に備えるのは、頼朝の立場ならできない相談であろう。
 ところで、北条は、平姓のはず。とすると、源氏は身内の義仲、義経を滅ぼすことで、すぐに平家に逆転されたことになる。

生き残った平家
 それぞれが、それぞれであった。敗北とは辛いものである。
 しかあれど、人は皆死す運命にある。
 気持を全うした上での敗北が余生を豊かにする。たとえ数日後斬首の憂き目にあおうとも、気持がねじ曲がったまま、半生を呪いながらの最期は、つまらぬ。
 そのあたりを、今夜も上手に描いていた。
 宗盛は、しかし、非才を噛みしめ辛いことだったのかも知れない。彼、名優だと思った。

あれこれ
 頼朝、迫真。徐々に目を開く様は入魂であるなぁ。中井さんは素晴らしい。
 今期義経で、始めて中井さんの良さが分かった。

 政子、なかなかにお美しくみうけられる。うむ。
 大姫、九郎のおじさんに逢いたいとは、まこと脚本が泣かせる、感心。
 残った平家一門、みんなよかった。(平家の一門の固有名がわからなくってな、すまない)
 行家のオジキ、まあ憎々しげなセリフまわし、これも迫真。
 弁慶の愛人さん、うふふ。
 お徳おばあさま。
 ……
 ああ、きりがない。大河ドラマの登場人物は、ほんとうに多彩。
 忘れるところでした。
 後白河法皇と鼓さん。このお方達がいてこそ、朝廷の威厳が、伝統が、闇がくっきりと浮かび上がってくる。まりさんは予告でしか見かけなかったが、それにしても、お三人の迫力で、当時の朝廷のすごさを表現するとは、これはこれで、ものすごい話である。

では次週。また見ます。

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コメント

>なんとか滝沢義経、安宅の関までいま一杯の踏ん張りをみせて、意思を露わにするようだ。

私の数少ない知識では、義経を主題にした物語は、壇ノ浦まで詳しく、その後は端折ってあるように思うんですが、今回のNHKでは、まだ四分の一が残っています。どういう展開になるのか楽しみです。

>大江は言うた、いま九郎義経を鎌倉にいれることは、他の御家人に示しがつかぬと。これは小才の官僚の言葉である。

誠に同感です。高僧の言葉を受け入れるんなら分かるんですが。残念です。もっと、天下を見据えた判断ができる取り巻きがいたら、頼朝にも義経にも違った道があったように思えてきました。

また、今度の日曜日が楽しみになってきました。

投稿: hisaki | 2005年9月26日 (月) 08時57分

hisakiさん、2005年9月26日 午前 08時57分

 そうなんですね。
 あと、10、11、12月の前半とあるでしょう。どういう風に、壇ノ浦以降を描くのか、楽しみです。イジメばかりなら、さじをなげそうになりますしね。

 ちょっと歯がゆいのは、頼朝は義経に、なぞなぞばかりかけて、きっちり本人に下地しないでしょう。
 もしかしたら、よほど頼朝自身、鎌倉内部で不安定だったのかも知れないと、ふと思いました。御家人中、北条を筆頭に、頼朝と軍事鬼才義経が合体するのを邪魔したのかも知れません。

 どう考えても、宇治川、一ノ谷、屋島、壇ノ浦、これは義経が鬼才であると、軍人ならば、分かるはずですからね。

 そういう塩梅を、今期NHK義経がどう描くのか、いやはや、楽しみでもあります。

投稿: Mu→hisaki | 2005年9月26日 (月) 16時46分

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