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2005年9月20日 (火)

高齢者(老人)差別

 最近、新聞で高齢者(老人)差別の記事があった。アメリカや欧州での話が題材だった。
 いろいろな差別がある。人種差別、性差別、貧富差別、学歴差別、容色外見見栄え差別、出自差別、……。
 なにかで差を見つけると、ことさらに優位性を誇り、劣等を作り上げる。人間の歴史始まって以来、戦争と差別とはつきもののようだ。

 アメリカではずっと、人種差別、性差別が深層にうごめいてきた。なんとか取り繕ってきたが、両方とも根が深い。おもうに、レディーファーストなんかは、徹底的な性差別の裏返しに見えてしまう。勿論我邦でも差別は数多あり、似たような問題はあるのだが。

 身近な例でもうすなら、私の祖母は、医師、歯科医、眼科医、薬剤師に対して激しい差別観を孫の私に吹き込んでいた。いまの医学部、薬学部を目指す人が知ったら、驚くだろう。その内容もしっかり覚えているが、差し障りも多いので、ひかえておく。(昔の同窓生には、この関係者息子が全種いた)

 やっと、本題。高齢者差別である。
 年齢的に、若年時のことを思い出すと汗が出る。確かに差別してきた。だから、今度は私が今から、いや数年前から差別を味わいだした。アメリカでは、仕事がまだできるとアピールするために、私の年代の人はビタミン剤を飲んで、シミを整えて、皺を整形して、ジョギングに励むのが、よく見られとのことである。これは表層の問題だが、深層からにじみ出す防衛態勢なのだろう。

 日本社会ではどうだろうか。そして私は。

 確かに、体力は落ちた、根気もつきてきた、判断力もときどき機会を一瞬見逃す、対応がおっとりしてきた。もちろん、良い面も多いが、そうでないことを多く自覚してきた。
 それだけなら良いのだが、社会的に差別と感じるのは、再就職などで一番味わうのだろう。あるいは、リストラ問題。

 高齢者、65歳以上の人口が20%、5人にひとりがそういう時代になってきた。差別を受けたとしても、私はおそらく言わないし、blogにも書かない。真の差別は、人に声高に言えないところに潜む。なにが、というよりも、諦念が強くなりすぎて、引きこもりになっていく可能性が気になる。

 周知のように、アメリカが風邪をひくと、しばらくして日本は、大病になる。
 アメリカや欧州で、高齢者の差別が目立ってくると、日本もそうなる。
 さて、どう対応すべきなのか。なかなか考え込むところである。

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コメント

謎は深まるばかりである

 Muさんもこういうセリフをいつだか書いていましたね。
当方が初めて知ったのは、江藤淳の小林秀雄論の中でしたかねえ。
小林秀雄が40歳になったころのエッセイに、子供のころから早く40歳になりたいと思っていた。
40歳になれば人生のいろんなことが分かって、よほど楽に生きられるに違いないと思っていた。
しかし、いざそういう年齢になって、謎は深まるばかりである。
というのですね。

 江藤淳は、これは小林秀雄の(老い)の始まりだと語っていたように思います。

 Muさんの(老人差別)の真意がこの記事では読み取りにくいですね。
当方などはこの頃多少ずるくなったのでしょうか。
久しぶりに会った人の名前がどうしても思い出せない。
向こうは(~さん)と言ってくれるのにコチラは思い出せない。
非常に気まずい思いをしますよね。

 そういう時、お名前はどなたさんでしたっけ、何しろこの頃昨日のことも覚えてないという耄碌ぶりでしてね、と(老い)を積極活用するということがたまにあります。
当方にはアメリカ流の、ジョギングしてみたり、シワを伸ばしてみたりする精神は理解出来ません。
生き物は死ぬるからいいのではないでしょうか。

 年相応、という言葉があります。
実年齢にリニアに比例して老いていけばいいと思うのですが、いかがでしょうね。

投稿: ふうてん | 2005年9月21日 (水) 01時33分

ふうてんさん、2005年9月21日 午前 01時33分

1.Muは2005年晩夏に、こう考えたと言う自己参照記録です。

2.ふうてんさんが、こう考えたという記録も得ました。

3.恥ずかしながら、新聞を読むまでは、欧米の人の3割が、性差別なんかと等しい割合で、高齢者差別を感じてきた事実に、気がつかなかったのです。

4.我らの年代は数が多いでしょう。だから安心していたのです、いろんなことで。ところが、今や少数の若い人達から、差別を受ける立場になってしまっていた。この、驚きですね。

5.最近はやりの若い経営者、芸術家、政治家、そういう社会的な人の前にMuが立ったら、どうなるかなと想像しました。ぞーっとしました。冷や汗ですね。Muは、自らの経験も、識見も、人格も、総て根こそぎ否定されるかもしれないと、そういう新聞の記事内容で、おもったのです。

(まあ、猫に小判と、Muが若年層を差別している可能性もあります。味を知らない者には、めなみの旬のハモおろしを食べさせても、なんもわからんでしょう。池波さんの小作品を読ませても、わからん奴もおおいだろうしね(笑))

6.Muは自分のことに熱中しているので、いつもは、年齢だけじゃなくて、いろんな差別を感じないのですが、ふと立ち止まり、振り返ると、あれこれ、いまいましきことも、ありますなぁ(笑)

投稿: Mu→ふうてん | 2005年9月21日 (水) 06時50分

この問題は重いので、なかなか書けないです。

働けなくなった者は、世間に迷惑がかかるので、消えて行く。姨捨山の話とか、遊牧民の老人を置き去りにする話とか、胸が詰まります。

しかし、稲作民とか南方の島々では長老が一番偉いんですね。知恵の蓄積が価値があったんでしょうね。

私は、儒教はあまり好きではないですが、韓国とか漢民族の世界では年長者を大事にしますよね?これは、素晴らしい民族の知恵ではないかと、最近特に思いますね。

結局、年寄りは弱くなるし、頑固になるし、頭は冴えなくなるんでしょうが、だから、弱者を守る為に儒教の教えが出来たと考えれば、納得できますね。

私は未だ、青年ですけどね!(笑)

投稿: jo | 2005年9月21日 (水) 22時18分

joさん、2005年9月21日 午後 10時18分

 高齢者差別を、考えようと思ったんですよ。
 ……
 いっぱいJoさんへ、コメント返しを書いたのですが、ちょっと消しました。

 ……
 なんとも、かきにくい記事を投稿してしまったです。うむむ。

投稿: Mu→Jo | 2005年9月21日 (水) 23時25分

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