「チャングムの誓い」と丸薬
風呂からあがって、さて眠ろうかと思ったら、この一週間近くMuBlog をおやすみしていたことに気づいた。
気づいては居たのだが、脳が見ないふりをしていたのは確実だ。
で、気に入ったドラマのことを書きたくなった。
この毎週木曜日は珍しく確実にNHKのBS2を見ている。タイトルにあるように、韓国の連続TVドラマである。
もう10回以上は見ていることになろうか。途中からである。チャングムというヒロインが宮廷陰謀に巻き込まれ、ヌヒとして韓国南部の海に面した田舎に流されていて、そこで怖いお姉さんと突っ張りあいながら、医術を学び宮廷にもどり、今は皇后や皇太后の病気を治す立場(医女見習い)にまで、戻っている。
もともとは宮廷の女官で、有力な尚宮(さんぐん?)に仕えていて、料理の才能をもっているヒロインだ。しかし、その最初の部分は見ていない。宮廷生活の総てが終わって流され、鬱屈した日々を送るところが初見だった。後日再放送もあるらしいので、楽しみだ。
韓国の人は怒るだろうが、毎回みていて、つくずく韓国と日本とは顔立ちが似ていると思った。そりゃむこうからすれば「にっくき日本人と一緒にされてたまるかぁ」と、なるだろうが、それにしても、雰囲気まで似ている。
まったく違和感がない。
Muは先頃日本の女性達がいれこんだ韓国男優のようには、ヒロイン・チャングムも、関係女優もみていない。ただ、おどろくほど美しい女性が多くて、そして、ヒロインはちょっと田舎っぽい優等生風で、まさに日本映画を見ている感に深々と沈む。
韓国料理は嫌いではないが、焼き肉以外は大抵お腹がいたくなる。おそらく、Muの蒲柳質(笑うな)にはきつすぎるのだろう。ところが、ドラマの中で、チャングムや敵役の女優が包丁を握り、鍋のふたをとり、様々な薬味をまぜていく様子をみていると、その手さばき、流れるような調理に、いつしかうっとりする。そう、うっとりする、これが正確な表現だ。
料理人、医女、いずれも天才クラスの能力を持つチャングムの、聡明さには感に堪えない。
また、この原作者はこれが処女作らしいが、どうしてこんなに毎回はらはらどきどき、かつ、謎を沢山おりこめるのだろうかと、ため息をつくばかり。
皇太后が長い病気に伏している。わがままだが、気性はすっきりしている。好き嫌いは激しい。韓国ドラマで「ニンニクが大嫌い」というセリフを聞いたときは、呆然としたが、ともかく嫌いである。しかも医者の診断では、ニンニクなどを食さぬと、体力が戻らず、他の療法をつくしようがない。そこで宮廷医女見習い・チャングムは工夫する。ニンニクを茶の葉っぱと一緒に蒸して、他の果実や米の粉とまぜて団子にする、……。「おいしい」と、貫禄ある皇太后が呟く。
と、そういうチャングムの機知、聡明さ、人なつこさが、毎回毎回あり、まったく飽きずに、新鮮である。
難題は次から次へとくりかえし押し寄せてくる。それを、次から次へと跳ね返していく。
爽快である。
どうも、ドラマはこれから終盤のようだ。佳境といってよい。また来週も木曜の夜になるとBS2にスイッチを入れる。最近のセリフでよかったのは、師匠の医務官が聡明なチャングムを諭す「医女は聡明であるよりも、物事に深い人間であれ」という意味の言葉だった。
うむうむ。「司書は聡明であるよりも、深い洞察をする者であれ」と、Mu言う(笑)
| 固定リンク
「小説木幡記」カテゴリの記事
- 小説木幡記:楠木正成のこと(2013.06.07)
- 小説木幡記:腰痛と信長(2013.05.28)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
大河ドラマ以外でもテレビを観られる事があるんですね?
我が家では、BSが観れないので残念ですが、NHKは宣伝してますよね。
韓国の女性は美人が多いですね。色が白くてスタイルが良くて、韓国語が喋ればお友達になれるかも知れない。残念なり、喋れない。
日本でいうと、大奥ものですか?意地悪なお局さんが、沢山でてくるんやろね。
何で観る気になったん?義経はんの周りの美人女性だけでは、ご不満ですか?
ま、何か理由があるんやろね。
投稿: jo | 2005年7月 8日 (金) 16時19分
joさん、2005年7月 8日 午後 04時19分
誤解なきように。
実は私は映画を見るとき、男優、女優でみたことはゼロに近いです。だれが出演したかは、後で知るわけでして、つまり物語志向がMaxですね。
で、チャングムですが、大奥ものとは違うと思います。女官や皇后、皇太后、医女が沢山でますが、むしろ(女子)専門家物語ですね。どのような料理の達人で、どのくらい医女としてすぐれていたのか。
その成長の過程です。
医食が同じだということをまざまざと見、理解してきました。
なぜ、見たかと問われると、ある夜、写っていた。ブラウン管の中で料理をしていた、鍼を打っていた、そのまま座り込んで見てしまった。そういうことですね。
病名を当てたり、脈を取ったり(ものすごく複雑なんですよ、脈の見方は)、病気にあわせてどういう食材を使って、何をどんな風に造っていくのか、そりゃ、東洋の知恵、韓国文化の深さが、30分ほどみていると、全身に流れ込んできます。
いずれも、手技のたしかさ、鮮やかさに圧倒されます。
そして。
同じモンゴロイド、そして朝鮮半島南部と北九州が、同じ倭種と松本清張が言ったことが、ありありとわかる、人物の雰囲気。
さらに違和感ではなくて、これほどの違いがあるというのが、宮廷風景ですね。着物も立ち居振る舞いも異国情調にあふれております。
李朝なんでしょうか?、男性は帽子をかぶっています。髭をはやしています。ヤンパンとかいう高級貴族スジだけかもしれないけれど。
女性の衣服、……。
親和感。異なりがあるのに、「違い」があるのに、それが気持ちよい。
追伸:韓国ドラマや描かれた文化を、べた褒めしてますが、だからといって、現代韓国や北朝鮮の政治的やりように、Muは完全無欠に同意していませんよ。お間違いなく。
ただ、ドラマは限りなく親和性が高く、そして、居心地がよい、そういうことです。怒号も号泣もなく、切れ味のよい知恵、努力、工夫がチャングムの人生を開いていきます。そして脇役のおじさんやおばさんが、とても懐かしい、そんなおもしろさですね。
投稿: Mu→Jo | 2005年7月 8日 (金) 17時51分
なるほど、朝鮮半島の文化の真髄に触れる番組であったとね。
衣食同源という世界ですね、これは多分、元は中国でしょうね。日本もそうだけど、中国の影響は大きいのですね。
不老長寿といえば、中国の丹は出てきませんでしたか?
しかし、NHKは韓国の番組に積極的ですね。政治はともあれ、音楽、テレビ番組、映画、という文化の面で交流が本格的に始まれば、あとで政治がついてくるでしょうね。
素晴らしい役割をNHKはやっているんですね。
投稿: jo | 2005年7月 9日 (土) 09時32分
joさん、2005年7月 9日 午前 09時32分
中国の影響が大きいですね。
かつても今も大覇権国家として、大帝國として、人類史のおおよそ半分に、影響を3千年近くおよぼしてきたのだから。ローマや今のアメリカもそうですね。
丹については、Muの見ている中では出てこなかったですね。歴史真実ドラマじゃないから、現代人の感覚からして、毒物摂取を描くのはむりでしょう。
政治。
そういう意味では鬼畜米英がいつのまにか、文化要素、とくに歴代若年層の基本になった歴史がありますね。だから、アジアと日本との関係も、若年層はお互いにエキゾチックというか、風変わりな文化を飲み込んで楽しむ気力や能力はあるでしょう。
だから、政治も時間をかけて、お隣さん政治、と消化できるようになるでしょうね。
もっとも、長く生きると、米英欧もアジアもイスラムも、しんどくなって、お茶漬けさらさら、たくわんぽりぽり、焼き魚を食べているのが一番あいますよ。
NHKの役割。
NHKもマスコミも芸能界も、朝鮮半島親和性は高いと思います。これは仕方ないでしょうね。中心は芸能界、そのプロヂューサーというか、関係者ですね。
MuがNHK関係者なら、北陸テーマものばかり作ることでしょう(笑)。極端な、内乱を誘発するような政治的宗教的偏向が現れない限り、作り手の精神的ルーツは、創造の源でしょう。
Muのルーツは、越前山奥経由の出雲かもしれませんで、ぇ。Muの授業を受けると知らぬ間に、越前が好きになり、最後は出雲大社の社頭で頭をさげることになる。(笑)
投稿: Mu→Jo | 2005年7月 9日 (土) 10時15分
越前といえば、越の国。
越の国と言えば、継体天皇、そして、日本海海人族連合の出雲、丹但、琵琶湖北岸の息長氏。
日本の国のかたちを作る上では重要な役割をしましたね。
最近は関 和彦さんの”古代出雲への旅”を読みました。幕末の頃に出雲の学者が出雲国風土記を片手に、神社を巡った記録があり、その記録を現代に実現した紀行文であります。
Muの旦那が出雲の末裔ならば、私は唐津の海人族である筒族の末裔です。
投稿: jo | 2005年7月 9日 (土) 10時48分
韓流ドラマにつき
(チャングムの誓い)というのを最初から見ているのが我が家にも約一名おります。
ヨンさまの(冬ソナ)よりもイ・ビョンホンの(美しき日々)がよろしいと言います。
ある日、繁寿しの繁さんが(チャングムの誓い)の豪華写真本を持ってきてくれました。
繁さんは江戸前の寿司職人ですが、料理人としてチャングムに共感するところがあるのでしょうか。
女房は近くで一番親しい友だちが(韓流)にはまっているせいで、見るようになりました。
なにしろレンタルビデオ屋には今、韓流が一番多く並んでいます。
その友人は、すぐにDVDにして何十枚も女房に届けてくれているようです。
私は、はまっていない、と女房は言いますが、客観的に見ると明らかにミイラとりがミイラになった、としか思えませぬ。
何故韓流がこれほどまでに日本で流行ったか、についてはそういう一ファンが縷々説明してくれるので当方はハッキリと認識しております。
日本の映画やテレビドラマの質が落ちたことも一つの要因だろうと思われます。
勿論、当方は一本も見ておりません。
韓流が学んだ、アメリカ映画、ヨーロッパの映画、小津、黒沢などの方に今のところは時間を使いたいと思いますので。
(冬ソナのカメラワークは小津安二郎のカメラに学んでいることが、チラッとみただけで分かりました。つまりカメラを動かさないのです)
そろそろ韓国も日本の(芸能)を受け入れてくれないものですかねえ。
隣国同士で、こんな一方通行はどうみても不自然です。
ところでJOさん、衣食同源ではなく医食同源ですよね。
投稿: ふうてん | 2005年7月 9日 (土) 17時08分
ふうてんどん
そうやね、医食同源の方が一見よろしそうですな。しかし、衣食同源でもいいんとちゃいます?
ここは、中国語の専門家の登場が必要ですね。
衣食足りて礼節を知る。儒教の諺が古くあります。衣食とは人間生活の基本という意味ですね。広く衣食という言葉は使われていたんと、ちゃうかな?
ところで、イショクドウゲンという意味は健康と食は同じ源から来るという思想ですね。
それでは、医という言葉は何なんでしょうか?健康という意味なんだろうか?病気という意味なんだろうか?
漢和辞典をひくと医とはもともと、矢をしまう壷の意味らしいよ。古い漢字はこのパソコンででないけど、下に酒の字があるね。
辞典では薬酒とか病を治す巫女さんの意味らしい。ふうてんさんの好きな薬酒でんな。
そこで、正解は判らんけどね、どっちでもえ~~んとちゃう?とは、無責任なり。
ここは、大学教授に判定よろしく。
投稿: jo | 2005年7月 9日 (土) 19時21分
joさん、2005年7月 9日 午前 10時48分
継体天皇さんですが、越前大野に関係が深いのですね。出雲話は、瓢箪から駒でして、Joさんの話をいつも聞いていると、日本海沿岸はみんな親戚みたいにおもえてきて、越前海岸から島根県の出雲まで、線をひいただけですよ。
で、JO話がMu話に火花を散らして、別の意味で「継体天皇」をわがルーツとする気力が、充実してきました。
我は福井県南条郡今庄町大桐を本貫とする、継体天皇百世の孫、Muなりぃ~!!!
おお。
投稿: Mu→Jo | 2005年7月 9日 (土) 19時44分
ふうてんさん、2005年7月 9日 午後 05時08分
韓流という流行の実態や意義はわかりません。
冬のソナタ、おそらく永遠に見ないでしょう。
ただ。
チャングムはみている。この不思議。
分析するに。
現代日本の文芸も映画も、もろもろも、質が落ちたというよりも、刺激の過飽和状態なんです。セックス、殺人、人間関係の異様さ、どぎつさ、なんとなく人間の感性を鈍磨し尽くすような世情に応じて、これでもか、じゃこんなんはどうじゃ、と才能が無駄に散っていく。純愛にしても、ありもしないことを無理矢理刺激的に極端に表現しようとする。
刺激を求めすぎたものが、今の日本かな。
イノダ本店で爺さん二人がのんびり「稼ぎがすくなくなったわいなぁ」といいつつ、珈琲をずるずるすする。なんにもない日常。こういうのんびりさに耐えられないほど現代日本人は、躁状態だね。
会社買収の詐術を弄して悦に入っている、オッチャン連を見ていたら、猿に見えたよ。死ねば、株券も札束も、無意味なのになぁ~。
チャングムは。
どぎつさの追求よりも、「工夫」だね。はたと手を打つ快感だね。なんとなく、五十年前の日本、のんびりしていた日本の田舎を思い出すようなドラマ、それが韓国のチャングムでした。
投稿: Mu→ふうてん | 2005年7月 9日 (土) 20時50分
joさん、2005年7月 9日 午後 07時21分
Muはさっき、常用漢字/白川静、さんの「医」を見ておりました。Joさんの言うとおり、悪霊退治の矢みたいやね。旧字が下に酒をつけたのは、消毒なんかの意味もあると書いてはりました。
「醫」この旧字は、たしかに正確には表していないので、古代の旧意を理解しにくいけど、まあ、そこそこですな。
でな。
衣食と、医食はべつやと思う。
衣食:
寒さをしのぐ着物を身につけて、飢えをしのぐ食を得られれば、人間、だれしも心に平安がおとずれて、世間や他人に丁寧になる。つまり、礼節やね。もちろん過飽和になると、女は裸同然で町を歩き、男は飲み屋で飽食(鯨飲馬食)
医食:
人間の五体、心身を形成するのはエネルギー、つまり食ですな。食によって心と身体が形成される。しかし毒があると五体も心も変調を来す。変調を来すと医が必要になる。医は無理矢理直すよりも、病因のよって来たるところを正すことで根治が可能。
ケガは別にして、病因の多くは食のバランスの悪さや毒。ここを直すのが医ならば、はじめからバランスのよい、毒のない食を取るのが至当。よって、医とは食を正すことなりや。
と、Mu爺はおもいますで。なあ、Joさんや。
投稿: Mu→Jo | 2005年7月 9日 (土) 21時05分
Muさん
ふうてんどの
どうも、私の間違いのようでしたね、医食同源にして下さい。
ところで、この言葉は本当は誰が創作した言葉なんでしょうかね?調べてみる必要がありそうですよ。
中国の古典に源を発する言葉なのか?自分が言い出して変ですけどね。中国では薬食同源という言葉はありそうですが、医食同源という言葉のルーツは何処なんですかね?
と、いう事で私の宿題とさせて頂きます。
結論としては、衣食同源は削除で、医食同源として下さい。
投稿: jo | 2005年7月 9日 (土) 23時39分
joさん、2005年7月 9日 午後 11時39分
削除などと申さずに、あれこれ考察したのですから、テーマの源は残しましょうぞ。
で、衣食は礼節にあって同源なんでしょうな。
人前で衣服を整えるのは、これは有名な話ですが、福田恒存さんが申しておりました。「見苦しい肢体を、お見せするのはもうしわけない」と。あの方は年中礼服を着ていたような方らしいです。しかし御本人の申されるには極端に痩せていた。
食が少ないとひもじくなって、頭の中は食べる事ばかりになるので、礼節どころじゃなくなりますね。いわゆる「ガツガツしている」状態でしょうか。
オチとしては。
Muなんか、ちかごろ「食」のことで頭が一杯ですね。
礼節が、遠くへ行っていることも多いとか(笑)
味覚のデータベースができあがってしまっているから、食がまずいと気分が悪くなり身体もおかしくなり、最後は機嫌が悪くなる。葛野あたりも、中心部あたりも、百万遍あたりも、安くて美味しいものを常にリストアップしとります。
蕎麦と珈琲につきますがね。
薬膳とか、はやりですから、医食と薬食も、似てきてますね。言葉で間違いとか言うのは本心では難しく思っております。用例の積み重ねが言葉の意味として定番定着するところが多いから。
古典から詞藻、いいとこを抜き出して使う分には、その原義や用法を間違うと、間違いだ、といえるけど、日常に新規に使う場合は、間違いだと言うのが言いにくくなるね。
投稿: Mu→Jo | 2005年7月10日 (日) 05時39分