NHK義経(19)血族と和議
鑑賞前の朝
新聞では、今夜は、義経、兄の範頼と対面するらしい。
また、頼朝は後白河法皇を通して、平家と和議を結ぼうとするらしい。
と、すると。
まだまだ義経の出番ではなさそうだ。というよりも、義経というタイトルに重きを置くのではなく、ここのところは、頼朝の肉親に対する猜疑心(か、どうかは今夜を見ないとわからぬが)と、和議に象徴される政治力の発動、そしてそれをうける大天狗後白河法皇の振る舞いに注目するのがよかろうか。(と、ついでに夏木さんや、草刈さんの演技も)
和議とは。
もちろん、仲良くしましょうなんていう子供の付き合い方ではなくて、あれこれ考えた末に時間稼ぎ、あるいは戦争をせずして利を得るひとつの外交交渉である。戦争すらも外交交渉の一つであろう。そういうことは、古き大国の大昔、合従連衡の故事にも詳しい。あるいは、孫子の兵法の極みは、消耗なくして勝利することにつきよう。
後知恵にすぎぬが、源平が並び立つわけがない。
鎌倉に幕府を開いた限り、源家は全国統一に邁進するしかない。可能性としては、当時の日本を三国に分割することは考えられる。東国の雄、藤原秀衡。関東・東海の鎌倉殿。そして西国、九州の平家。
結果として、西国に逃げた平家を義経が討ち、東国に逃げた義経ごと平泉の藤原を討った。おそるべし、頼朝の政略なりや。
その間。
朝廷はどうだったのか。このあたりのきりもりが、後白河法皇の真骨頂であり、また神器なき戴冠の、後世・後鳥羽院への物語(承久の変、1221年)と話は続く。が、これは義経とは関係がない。
歴史とは、鑑であるなぁ。
鑑賞後の夜
さて見どころらしい盛り上がりもなかったのだが、あっというまに45分がすぎてしまい、その間ずっとTVに見入っていた。つまり「義経」は、Muの心の流れに沿ったということであろうか。義経の陰り、上品さ、二枚目俳優の様式は、すっきり上手に型にはまった。あとはおのずからなる光、豊かさ、充実した物語が進行するだけだろう。
この5月まで、離陸前の長い滑走だった。
今夜は源家の親族がそれぞれ顔を出した。義経の兄の範頼、おじの行家、いとこの義仲。前二者は、歴史的に昔からよくいわれなかった。頼朝と義経という、歴史上に燦然と輝く兄弟にはさまって、兄も叔父も影が薄かったのだろうか。ただし、行家は今後とも、最後まで義経の足を引っ張ることになるのだが。
義仲は、Muが第一等におもう武将だが、やんぬるかな今期NHK義経では狂言回しのような、ひたすらイノシシ武者に描かれていくようだ。ところが、巴さんだが、予告編にでてきた、例の額に付けた黄金色した防具兼飾り(この名称は、なんというのだろうか)姿は、たとえようもなく似合っていた。今日のすっぴんの巴は普通の女性なのだが、予告に現れた戦仕立ての装束は、はあ、これぞ「巴ここにあり」、であった。楽しみだ。
義経と頼朝と、そして政子の関係はますます深みにはまっていく。いつも、政子が頼朝のそばにすわり、義経をうかがっていた。政子は優れた女だった。歴史的にも。だからこそ、義弟の能力、才能、そして人を惹きつける異能に愕き、恐怖をあじわったのだろう。
さてこそ平家と後白河法皇。
口をすぼめて、肩をすくめる法皇に、Muは知らず膝を打っていた、上手やねぇ。平さん、夏木さん、草刈さんの京御所言葉って、「~あらしゃいます」ほほほ。これがないと、「義経」がすっきりしない。これあってこそ、武家の鎌倉、義経の清風、そして滅び行く平家の公達達の焦りが、浮かびあがってくる。
まことに、当時の院におかせられましては、その御懊悩察するに、しのびない。
兵なし、武力なし、金もあんまりなかったろうに。ただ、700年間は続いた皇家の大旦那として、打つ手打つ手は、賽の目なれど、十重二十重の伏線と、気力とだけで、乗り切った。
まあ、こういうお方も、歴代のなかには、いく柱もあらしゃいましたよし。稀代の大天狗、と申すもはばかり多いが、Muなどはこの法皇の知略には、ほとほと感心し、その僧衣の裾に手をからませて、おすがりしたくもなることよ。
ではまた来週。
そうそう、平知盛はなかなかに、渋くなってきましたなぁ。義経最後の好敵手だっただけある。
よい俳優だ。
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コメント
お久しぶりです、Muさん
長らく、記事が掲載されないので、心配して
おりました。やはり、義経では記事が出現し
ましたね。
未だ、戦闘場面は来ないのですか?面白くないです。政治の話をされても、あまり興味がないんやけど?
それより、義経の戦歴分析とそのドラマを描いてくれんかな~~~。だって、番組は頼朝ではなくて、義経なんでしょう?
清盛亡き後、平家に戦略立案できる巨人は存在せず、秀吉亡き後の大奥の政治世界みたいなもん、興味ないです。
と、いいつつ、気になるので観ますけどね。それより、そのあとのシルクロードの番組とアーカイブの昔のシルクロードの番組を楽しみにしています。
投稿: jo | 2005年5月15日 (日) 09時09分
joさん、2005年5月15日 午前 09時09分
ここのところは、行き場のない、身の置き所もない、立つ瀬もない義経を、たっぷり眺めるしかないようですよ。
義経の戦歴分析なんかしだしたら、様式美が壊れ、一挙に団塊世代お好みの「司馬世界」になっちゃうしね。
ともあれ、本邦初の幕府ができる前後ですから、頼朝に光があたるのも、しかたないっす。義経は、その礎(いしずえ)となった悲劇の軍神やったわけです。
それにしても、中国北夷の騎馬民族、突厥の若き王子キョルテギンなんかは、たしか兄によって丁重きわまりない碑文石を立ててもらったのに。えらい違いですなぁ。
追伸
シルクロードは「くまらじゅう」の事が放映されるそうですね。興味はありますが、ここらは後日まとめてDVDで買って見るつもりです。
投稿: Mu→JO | 2005年5月15日 (日) 10時26分
今日のシルクロードはキジ国
ラピスラズリ宝石の輝きだそうですな。
くらまじゅうは、私もあまり良く知らないので参考になると思います。
空即是空のお経の話やね。
しかし、このラピズラズリの宝石の話はエジプトの遺跡からも出てくるし、日本の源氏物語絵巻にも色の材料として使われてるし、昔は随分と珍重されたんやね。
そうか、シルクロードの番組は夜も遅いし、Muの旦那は白河夜船の頃合ですね。
投稿: jo | 2005年5月15日 (日) 11時55分
間違い、でした。
色即是空の間違いですね、般若心経の世界ですね。
もう少し、歳がとれば、判るかもしれませんね。
投稿: jo | 2005年5月15日 (日) 11時59分
joさんや| 2005年5月15日 午前 11時59分
くらまじゅう→くまらじゅう、ちがいまっか。
「ラピズラズリ」
これはね、メソポタミアの、ウル第三王朝、ウルナンムル王のあたりの遺跡からでてきた豪華な宝飾品があったはずですよ。
シルクロードといえば、ホータンの玉(ぎょく)と、唐の絹との交換とかなんとか、Joさんも以前もうされていたような。
色即是空。これは、私の好きな光瀬龍さんの「百億の昼と千億の夜」では、色すなわち存在、空すなわちディラックの海(虚数世界のことかなぁ)、とかなんとかの一節が残っておりまする。
断片的不正確な知識のまま、それを血肉として世界を歴史を味わってきた、そんな思いがしました。ええ、よろし、この世ですなぁ、Joさん。
投稿: Mu→JO | 2005年5月15日 (日) 13時19分
いかんね、義経に引かれて、くらまに
なってしもうた。(笑)
くまらじゅうやね。鳩摩羅什(くまらじゅう)と
中国名ですね。
今晩は楽しみな番組がNHKであるので、午睡をして体力を温存しておきます。
投稿: jo | 2005年5月15日 (日) 13時45分
私も頑張って観ました。
おっしゃるとおり動きが少ないです。現在は、序の終わりから破の始まりくらいでしょうか。ジレッタイ感じです。
法皇の、「頼朝は鎌倉にいて天下を支配しようとしているから、良い。」とのセリフが印象に残りました。「京都人は、京都を守るために都合の良い人物を支持する伝統がある。」という話しを聞いたことがあります。セコイという意味があるんでしょうけど。そんなことを思い出しました。
投稿: hisaki | 2005年5月16日 (月) 08時54分
hisakiさん、2005年5月16日 午前 08時54分
じれったさは、よくわかります。
義経のおもしろみは、4つほどの奇跡的勝利の経緯をじっくり描くことにあるとおもいますが。そういう美味しいところは、司馬さんが取ってしまった感がのこります。
坂本竜馬を司馬以降、後世の人が描きにくいことと似ていますね。
ただ。じれったさのなかに、事実じれったい日々を鎌倉で送っただろう義経を思うゆとりは今期「義経」にあるとおもいました。
ここのところは、幕間の時間帯として、じっくり四段重ねのおひるを開け、冷酒ちびちびやりながら、舞台の移り変わりを眺めるのも一興かと、〜。
また来週に期待いたします。そろそろ旭将軍木曽冠者義仲公と、巴さまのおでましです。
投稿: Mu→hisaki | 2005年5月16日 (月) 18時13分